クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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野鳥撮影における
デジタル一眼レフの使い方(№3)

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野村芳宏

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2.デジタル一眼レフの特性

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(2)野鳥撮影におけるデジタル一眼レフの優位性

フィルムカメラに比べてデジタル一眼レフが野鳥撮影に適しているところを挙げたい。

大きく分けて3点ある。

  • APS-Cサイズのカメラでは、撮影倍率が約1.5倍になる。
  • 液晶モニターが付いている。
  • コストを気にせずに、いくらでも撮影できる。

項目ごとに詳しく説明したい。

  • ①「APS-Cサイズのカメラでは、撮影倍率が約1.5倍になる」について

    • 35ミリフィルムの大きさは、24ミリ×36ミリである。デジタル一眼レフのイメージセンサーの大きさは、24ミリ×36ミリ(フルサイズ)、15.8ミリ×23.6ミリ(APS-Cサイズ)、13ミリ×17.3ミリ(フォーサイズ)がある。分かりやすくするために、デジタル一眼レフについてはAPS-Cサイズとする。イメージセンサーがフィルムの大きさより小さくなったために、画角が狭くなり撮影倍率が大きくなった。その理由については、次号(1月号)で詳しく書くことにする。

      野鳥撮影では、超望遠レンズを使うことが多く、500ミリ前後を使用している人がほとんどである。フィルムカメラに500ミリF4のレンズを付けたとする。もし、このレンズでもっと野鳥を大きく撮りたいとしたら、1.4倍のテレコンバーターレンズ(中間レンズ)を今までは付けていた。そうすると500ミリが720ミリになり、明るさはF5.6になる。ところがデジタル一眼レフに500ミリF4のレンズを付けると、1.5倍の750ミリレンズに相当し明るさはF4のままである。

      これは、野鳥撮影にとってとても大きな効用があり、機材が軽量コンパクトになる。500ミリF4のレンズの重さは約3800グラム、600ミリF4のレンズは約5000グラムである。500ミリF4のレンズにデジタル一眼レフを付けると600ミリF4のレンズ以上の倍率を得られ、しかも1200グラム軽くなり、大きさも小さくなる。また、フィルムカメラと500ミリレンズを付けたものと、同等の望遠効果を得ようとすると、300ミリのレンズで良いことになる。300ミリレンズにデジタル一眼レフを付けると、450ミリレンズ相当になる。

      これは、野鳥撮影において非常に軽量コンパクト化を実現することになる。レンズが大きく重くなると、それに合わせて三脚も大きく重くなる。さらに、レンズを入れるケースも大きくなる。手で持ち運びできないために、車のトランクに機材を詰め込んで撮影に出かけるというのが、今までの野鳥撮影のスタイルだった。300ミリレンズに手振れ補正が付けば、どんな撮影スタイルになるだろうか。重い三脚はいらなくなり、カメラバックに300ミリレンズとデジタル一眼レフを入れ、肩からバックを下げて野鳥撮影に出かけられるようになった。野鳥撮影が気楽にできるようになったのである。もはや野鳥撮影は特殊な撮影分野ではなくなり、女性の野鳥カメラマンが増えたのもうなずけるのである。

  • ②「液晶モニターが付いている」について

    • デジタル一眼レフに液晶モニターが付いていることによって、その効果は非常に大きい。野鳥を撮影し、再生ボタンを押せば液晶モニターに画像が写し出される。撮影した結果が、その場ですぐに確認できるようになった。フィルム時代は、撮影しカメラ屋にフィルムを出すと現像が4,5日で出来上がる。現像されたフィルムを初めて見るときは、ドキドキ、わくわくしたものである。現像されたフィルムを見て、ブレたりピントを外していたりすると、再度撮影をやり直すことになる。撮影をやり直すことができれば良いが、日にちが経っているので鳥は移動し、いなくなる場合もある。まして、撮影地が遠距離の場合、再度撮影をやり直すこともできない。

      デジタル一眼レフでは、撮影した結果を液晶モニターに再生し、その場でピントを確認することができる。もし、ピントが外れていれば撮り直しをすれば良いことである。液晶モニターが付いたことによって、失敗が激減した。液晶モニターの活用方法については、他にもあるので2012年2月号(№5)にもっと詳しく書くことにする。

  • ③「コストを気にせず、いくらでも撮影できる」について

    • フィルム時代、リバーサルフィルムは36枚撮り約1000円、現像料が約600円ぐらいだった。1回シャッターを切るといくらになるのだろう。(1000+600)÷36=44.44 約44円になる。これを考えるとたくさんシャッターを切ることを躊躇してしまうことは当然である。ところが、デジタル一眼レフでは初期投資さえしておけば、1枚撮っても、100枚撮っても、1000枚撮ってもコストは0である。コストを気にせずにいくらでも撮影できるようになった。

      このことは、野鳥撮影自体に変化をもたらしている。フィルム時代は、失敗しないように野鳥の動きが止まってからシャッターを切っていた。被写体ブレやピントを外すことを恐れたからである。ところが、いくらでも撮れることが可能になったデジタル一眼レフでは、鳥が動き出してシャッターを切るようになった。その方が、動きのある生き生きとした野鳥の姿を捉えることができるからである。たくさんシャッターを切り、タイミングよく撮れたカットを選べるようになった。

デジタル一眼レフが、いかに野鳥撮影に向いているカメラであるかが、分かっていただけたと思う。それだけではなく、野鳥撮影のスタイルに変化をもたらし、さらに、野鳥写真の作品にも変化をもたらしてきているのである。

次回は、「2.デジタル一眼レフの特性」\「(3)APS-Cサイズのカメラと超望遠レンズ」について書く。

(「野鳥だより・筑豊」2011年12月号通巻406号より転載)


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