野村芳宏
2.デジタル一眼レフの特性
(3)APS-Cサイズのカメラと超望遠レンズ
イメージセンサーの大きさ
APS-Cサイズのデジタル一眼レフに望遠レンズを付けると、焦点距離が約1.5倍のレンズと同等の望遠効果を得ることができる。300ミリレンズは450ミリに、500ミリレンズは750ミリに、600ミリレンズは900ミリになる。その理由について述べる。
望遠レンズによる望遠効果は画角が狭くなることによって起こる。
50ミリレンズの画角aよりも、焦点距離が長くなった200ミリレンズの画角bの方が狭くなっている。望遠レンズは焦点距離が長くなることにより、画角が狭くなる。これは容易に理解できる。画角が狭くなり、遠くの物を狭い範囲で手前に引き寄せる。その結果、遠くの物が大きくなったように見える。これが望遠効果である。これを拡大と言うと違っていて、実際の物は大きくなっていない。やはり遠くの物を手前に引き寄せると言った方が正確である。画角が狭くなればなるほど望遠効果は大きくなる。50ミリレンズよりも200ミリレンズ、200ミリレンズよりも500ミリレンズの方が、画角が狭くなり、遠くの物を手前に引き寄せる効果が大きくなる。焦点距離が長いレンズほど望遠効果は大きくなる。
さて、デジタル一眼レフのAPS-Cサイズに300ミリレンズを付けたとする。そうすると、上と同じことがカメラの中で起こる。つまり、画角が狭くなり望遠効果をもたらし、いかにも拡大したかのように見える。
斜線で囲んだ部分が、APS-Cサイズのデジタル一眼レフのイメージセンサー。焦点を通った点線の画角が、実線で引いた線の画角より狭くなっている。実線は、35ミリフィルムのカメラ。像を映すイメージセンサが小さくなると、画角が狭くなることが上の図で分かる。画角が狭くなることによって、遠くに見える範囲がせまくなる。狭くなった像を手前に引き寄せて見るので、いかにも拡大したかのように見える。つまり、画角が狭くなることにより、望遠効果が得られる。これが、イメージセンサーが小さくなることによって望遠効果が大きくなる理由である。この場合、300ミリレンズを付け、450ミリレンズと同等の望遠効果を得ることができる。
上の図で分かるように、イメージセンサーの大きさによって、望遠効果が違ってくる。それを下の表にまとめてみた。
サイズ名 | サイズ (mm) | 換算画角係数 |
2/3型 (コンパクト) | 6.6×8.8 | 4倍 |
フォーサーズ (オリンパス) | 13.0×17.3 | 2倍 |
キヤノン APS-C | 14.8×22.2 | 1.6倍 |
ニコン APS-C | 15.8×23.6 | 1.5倍 |
キヤノン EOS-1D系 | 18.6×27.9 | 1.3倍 |
フルサイズ | 24.0×36.0 | 1倍 |
超望遠レンズにAPS-Cサイズのデジタル一眼レフを付ければ、レンズの明るさを保ったまま望遠効果が得られるので、野鳥撮影にはとても有利である。フルサイズのカメラよりもAPS-Cサイズのカメラの方が野鳥撮影には適していると思う。
ただ気をつけなければいけないのは、APS-Cサイズのカメラは広角が弱いということである。広角28ミリレンズにAPS-Cサイズのデジタル一眼レフを付けると、42ミリになってしまい、広角レンズの効果は薄くなってしまう。
自分のカメラのイメージセンサーの大きさがいくらなのか、把握しておく必要がある。カメラの仕様には必ず書いている。
次回は、「2.デジタル一眼レフの特性」\「(4)液晶モニターの活用」について書く。
(「野鳥だより・筑豊」2012年1月号通巻407号より転載)
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