クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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野鳥撮影における
デジタル一眼レフの使い方(№5)

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野村芳宏

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2.デジタル一眼レフの特性

(4)液晶モニターの活用方法

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キクイタダキ

2011年12月号(№3)で<液晶モニターがデジタル一眼レフに付いていることによって写真の失敗が激減した>ことを書いた。今回は、実際に私が行っている液晶モニターの具体的な 活用方法を書きたいと思う。

  • ①ピントの確認
  • ②露出の確認
  • ③適正なシャッタースピードの割り出し
  • ④鳥の識別

項目ごとの詳細は次の通りである。

  • ①ピントの確認
    • 撮影した野鳥にピントがあっているかどうかは、写真のできあがりに大きく影響するので、ピントの確認はとても大切なことである。だから、ほとんどの人が液晶モニターでピントの確認をしている。画像を再生し拡大してピントを確認する。その時、ピントを合わせたポイントを拡大して見るのだが、ボタンをワンプッシュで拡大できると、素早く確認でき次の撮影にスムーズに入れる。もし、ピントが外れていると思っても、撮影現場で削除はしない方が良い。誤操作で他の画像を削除してしまう可能性があるからである。本当にピントが合っているかは、自宅に帰ってパソコンで確認した方が良い。液晶モニターは小さいので、細部の確認には限度がある。ピントがきていない時はすぐにその対応をとるようにする。例えば、野鳥の前に枝があり、その枝にピントが合って野鳥にはピントが合っていないとする。この場合AFが苦手とするシーンなので、手動でピントを合わせる方法をとる。もしくは、野鳥が枝先に出てきて、枝がかぶっていない状況を待ってAFで撮影する。このようにピントが合わない原因を考えて、その対応をとることが大切である。
  • ②露出の確認
    • 野鳥を撮影し、その画像が適正な露出であるか、液晶モニターに画像を再生し確認をする。これは、実際には非常に難しいことである。難しくしているのは、再生された画像を見ても適正かどうか判断がつきにくいからである。それと、野外では明るく、液晶モニターが見づらいこともある。それに、液晶モニターの設定で明るくしたりすることもできるので、見た感じだけでは判断してはいけない。さらに、液晶モニターの性能もある。
    • そこで、役に立つのがヒストグラムである。その画像の明るさの度合いをグラフに表したものである。明るい所でもグラフは見ることができる。それと画像の明るさを数値でとらえグラフ化しているので信頼性は高く、客観的に見ることができる。だから、ヒストグラムを見て露出を判断するのが一番良い。最重要視するところは、ハイライト部分(その画像の最も明るいところ)が白飛び(真っ白になり諧調を無くしている)していないかである。白飛びしている画像のヒストグラムは、右下の部分が枠からはみ出している。このように露出オーバーになったならば、絞りを絞るとかシャッタースピードを上げるとかISO感度を下げるとか、光の入る量を調整する対応をとらなければならない。
  • ③適正なシャッタースピードの割り出し
    • 撮影した後からカメラの設定を調整しても、その画像はもう元には戻らない。そこで、失敗しないためにテスト撮影をし、絞り・シャッタースピード・ISO感度・露出補正量を割り出す方法がある。例えば、青空に飛んでいる野鳥を撮影する場合、あらかじめ野鳥が飛んできたと想定し、そのシーンを撮影する。そして、その画像を液晶モニターに再生し、絞り・シャッタースピード・ISO感度を確認する。飛んでいる野鳥を止めて撮るには、シャッタースピードが1/1500秒は欲しいところである。シャッタースピードが1/1500秒になるように絞りとISO感度を設定し直す。そして、先ほどと同じシーンを再度撮影し、今度はヒストグラムを見て露出は良いかを見る。良いということであれば、野鳥の飛翔撮影に臨む。悪ければ、露出補正量を調整し、再度絞り・ISO感度を微調整する。その時、シャッタースピード1/1500秒は、できるだけ維持をする。そして、先ほどと同じシーンを撮影し、液晶モニターに画像を再生し、各設定値を確認し、本番の撮影に臨むようにする。そうすれば、失敗は大幅に減る。
    • フィルム時代は、テスト撮影をすることはほとんどできなかった。ポートレイト撮影などで、プロのカメラマンはポラロイドカメラを使いテスト撮影をしていた。野鳥撮影においてデジタル一眼レフを使えば、簡単にテスト撮影ができ、撮影の精度を上げることができるようになった。これを使わない手はなく、大いに活用すべきだと思う。文で書くとなんだか難しそうだが、慣れると簡単にできるようになる。
  • ④野鳥の識別
    • 野鳥を撮影し、鳥の名前が分からない時がある。例えば、タカ渡りの撮影に行き、撮影したタカがハイタカなのかツミなのか分からない時がある。その時は、液晶モニターに画像を再生し、拡大する。識別ポイントを見て野鳥の名前を確定する。このような操作は我々の識別能力を向上させるのに大変役に立っている。野鳥は、動いていることが多く、細かいところまでチェックするのが難しい場合がある。とりあえず写真を撮り、拡大してみると細かいところまでチェックをすることができ、野鳥を識別できる。撮影現場ですぐにその作業ができることが大きい。
    • 私は持っていないが、野鳥識別に役に立つ道具がある。それは、液晶モニターを拡大して見る専用のルーペである。液晶モニターは屋外では見づらい時があるが、このルーペを使えば、ルーペの周りを黒い布でおおっているので、拡大してもはっきり見ることができる。
    • もし、拡大しても野鳥の名前が分からない時は、周りの人にその画像を見てもらうのが一番良い。識別ポイントや見分けるコツを教えてもらえるからである。「写真を見てもらえませんか。」と言って、拒否されたことは今までに一度もない。みんな親切に教えてくれる。

液晶モニターの活用方法を以上の4点を挙げたが、その他にもある。構図・背景・ピントの位置などを確認しながら、作品づくりに活用することもある。野鳥撮影とは関係ないことだが、ストロボの光量やライティングに役立てることもある。その他にあるかもしれない。

デジタル一眼レフに液晶モニターが付いたことにより、その効果は非常に大きいと私は思っている。今までの野鳥撮影を変えてしまう可能性もある。

最後に、世界を代表する自然写真家ジム・ブランデンバーグの言葉を添えたい。

「私は若返り、私の作品は新鮮さを取り戻した。デジタルカメラによって世界観が一変した。」

「好きなようにシャッターを切れるようになったので、好きなだけ試し撮りができる。撮影した画像をその場で確認できるので、さらに新しい視点が生まれる。デジタルは写真を変える。その可能性は測りしれない。」

次回は、「野鳥撮影におけるデジタル一眼レフの使い方(6)」\「2.デジタル一眼レフの特性」\「(5)撮影から仕上げまで」について書く。

(「野鳥だより・筑豊」2012年2月号通巻408号より転載)


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