野村芳宏
3.カメラの初期基本設定
(3)ISO感度の設定
ISO感度の設定をいくらにしたら良いだろうか。結論を先に言うと、“初めは最低感度に設定し、状況に応じてISO感度を上げていく”である。
ISO感度は、100 200 400 800 1600 3200 等と変更していくことができ、そのカメラの最低感度に設定する。最低感度は、ニコンのデジタル一眼レフはISO200が多い、キヤノンはISO100が多い。状況に応じてと言うのは、明るさの度合いに応じてという意味で、暗くなるとISO感度を上げて設定する。例えばニコンのカメラの場合、初めはISO感度200にし、明るさ(露出)を測る。その値がシャッタースピード1/60秒絞りF4になったとする。このシャッタースピードでは手ブレの可能性もあるし、野鳥撮影では鳥が動いてぶれてしまう。そこでISO感度を上げていき、400にするとシャッタースピード1/125秒、800にするとシャッタースピード1/250秒が切れ、手振れを解消することができる。
デジタル一眼レフを購入し、カメラの扱いに慣れていない方は、ISO感度オートがお奨めである。この設定は、カメラが自動的に感度を設定するので、ISO感度の設定は考えずにすむ。カメラによってオートにした場合、上限と下限を設定するようになっている。上限は1600、下限は100にすれば良い。このオートというのをもう少し詳しく説明する。明るさ(露出)を測定すると、ISO感度100でシャッタースピード1/15秒絞りF5.6になったとする。このシャッタースピードでは遅いので、明らかに手ブレを起こしてしまう。そこで、自動的にカメラがISO感度を800に設定する。そうすると、シャッタースピードが1/125秒が切れ、手ブレを解消するというものである。
フィルムを使用していたころは、フィルムによってISO感度が決まっていた。フジフィルム プロビア100では、ISO感度100に設定していた。野鳥撮影の途中で天候が悪くなり暗くなり、シャッタースピードが1/30秒しか切れない。フィルムは、カメラの中に残っているのでISO感度が変更できない。それで36枚撮りきってしまい、高感度フィルムと入れ替えて撮影をするというものだった。このようにフィルム使用の時は、ISO感度変更の自由度はきわめて低いものだった。
ところがデジタル一眼レフになって、ISO感度の自由度は飛躍的に上がった。極端なことを言うと、一枚一枚ISO感度の変更ができるようになった。これは、野鳥撮影において大きなメリットがある。上のフィルム使用時のように、天候が途中で悪くなり、シャッタースピードが遅くなってしまい、手ブレが心配される時、直ぐにISO感度を上げて設定すれば良い。これによって条件が悪い中でも野鳥撮影が可能になった。
明るさの度合いによってISO感度を設定していくことだけではなく、野鳥撮影では適正なシャッタースピードの割り出しのために、ISO感度の設定を行うこともある。「野鳥だより・筑豊」2月号(№5)の液晶モニターの活用方法Bでも述べたように、テスト撮影をし、シャッタースピード1/1500秒が切れるようにISO感度を設定する。テスト撮影で露出に関するデータが、ISO感度200でシャッタースピード1/500秒絞りF4を示したとする。そこでISO感度800に上げればシャッタースピード1/1500秒が切れる。晴れの日であっても高速シャッターを切ることで、激しく動いている野鳥をぴたりと止めて撮れる。したがって、デジタル一眼レフによる野鳥撮影では、積極的にISO感度の変更をしていった方が良い。
では、いくらでもISO感度を上げられるかと言うと、そうではない。ISO感度を上げれば上げるほどノイズが発生する。ノイズが発生した画像は、ザラザラした感じになったり、赤や緑の偽色が出たりし、目障りになってしまう。ISO感度をどこまで上げられるのか。それはカメラの機種によって変わる。古いカメラより新しいカメラの方がISO感度を上げてもノイズの発生が抑えられている。
また、イメージセンサーの大きさによっても違ってきている。イメージセンサーが大きいほどノイズが発生しにくい。APS-Cサイズのカメラよりもフルサイズのカメラの方が、高感度には有利である。APS-Cサイズでも最新のカメラは、ISO感度800までは、常用と使えるようになってきた。
自分のカメラは、ISO感度をどのくらいまで上げられるのかテスト撮影をし、把握をする。テスト撮影は、同一の被写体を感度だけ変更し、撮影をすれば良い。そして、パソコンの画面でISO感度の違いによるノイズの発生を確認すれば良い。
最後に、ISO感度設定におけるステップ幅について述べる。ステップ幅というのは、ISO100〜200までを何段階に分けるかということである。1/3段では100 125 160 200、1/2段では100 140 200、1段では100 200である。初期設定では1/3段になっていることが多い。これでは、細かすぎるので露出の変化が分かりにくい。それで、ステップ幅を1段にすることを是非お奨めする。ステップ幅を1段にすると100 200 400 800 1600 と変化していき、シャッタースピードや絞り値が大きくなり、明るさ(露出)の変化が分かりやすくなる。そして、細かいステップ幅よりも設定するとき、ダイヤルを回す回数が少なくなり、素早く変更ができるようになる。
次回は、「3.カメラの初期基本設定」\「(4)露出モード設定」について書く。
(「野鳥だより・筑豊」2012年6月号通巻412号より転載)
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