クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2017-11-21

野鳥撮影における
デジタル一眼レフの使い方(№23)

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野村芳宏

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5.カメラ・アラカルト(最終章)

(3)デジタル一眼レフの功罪

Highslide JSツメナガセキレイ (クリックで拡大/縮小)

デジタル一眼レフの出現によって、野鳥撮影は一変した。まずは大量にシャッターが切れるようになり、今まで撮れなかった写真が撮れるようになった。また、APS-Cサイズのカメラでは、35ミリカメラ(フルサイズ)に換算してレンズの焦点距離が、1.5倍もしくは1.6倍と同等の望遠効果を得ることができ、遠くの野鳥を手前に引き寄せることができるようになった。その結果、野鳥を大きく撮れるようになった。さらに、手振れ補正付きレンズやカメラの出現により、手持ちで超望遠レンズが使えるようになり、フットワークをきかせた野鳥写真が撮れるようになった。それと同時に手軽に野鳥撮影ができるようになり、野鳥撮影カメラマンの増加にもなった。今や野鳥撮影にとって、デジタル一眼レフはなくてはならない存在になった。

ところが、マイナス面もあるような気がする。ここからは、自戒を含めながら書いて行きたい。

その一つが、撮影が雑になってきているのではということである。

気軽にシャッターを切れるということから、「とりあえず撮っておこう。」という安易な気持ちでシャッターを切り、それで終わってしまってないだろうか。野鳥はよく動くので、まずはシャッターを切り記録をしておく。これは、とても大切なことである。でも、野鳥写真を作品として仕上げ、鑑賞してもらうには、これでは不十分である。

雑にならないために、以下のことを留意したら良いと思う。まずは、ピントが合っていることが重要なので、撮影した画像をカメラの液晶モニターに再生しチェックする。もしピントが合ってなければ、また、シャッターを切る。次にブレていないかチェックをする。もし、ブレていればシャッタースピードは良いか検討し、シャッタースピードを上げるように設定を変え、また、シャッターを切る。次に、露出は良いかチェックをする。このように、画像を再生し、ピント・ブレ・露出をチェックし、作品を追い込み、完成度を高めていく。

そうは言っても、野鳥は目の前をあっという間に通り過ぎ、シャッターを何度も切れるものではない。まして、画像を再生しチェックするする時間などないという反論が返ってきそうである。ならば再度同じ場所を訪れ、撮影に挑戦してみる。そのように、粘り強く撮影していくことが大切ではないだろうか。まだまだチェック項目はある。構図は良いだろうか、背景の処理は良いだろうか、光の当たり方は良いだろうか、鳥の姿は良いだろうかなどがある。

幸いデジタル一眼レフになって画像の検証はしやすくなった。撮影現場では、カメラの液晶モニターで再生しチェックできる。また、自宅でも撮影したその日にパソコンの画面でチェックできる。フィルムを使っていた時代は、フィルムを現像所に出し、上がってくるまで待たなくてはいけなかった。早くて3、4日、普通で一週間ほど待たなくてはいけなかった。まして、フィルムがカメラの中に残ったままになっていれば、フィルムを使い切るまで待たなくてはいけない。そういう意味では、画像の検証がスピード感を持ってできるようになり、次の対策が取りやすくなった。そのことによって作品の完成度を高めやすくなった。

マイナス面のもう一つが、味わいが薄らいできているのではないだろうかということである。我々野鳥好きは、野鳥のことを他の人に知ってもらいたいという気持ちが強く、どうしても野鳥を大きく撮ってしまう傾向にある。四角いプリント面の真ん中に野鳥がドーンとあふれんばかりに入っている。野鳥の細かい部分を見せるには良いが、プリント面全体から受ける味わいというものが薄らいでいるのではないだろうか。

デジタル一眼レフになって、野鳥は大きく撮れやすくなってきた。まして、パソコンを使ってトリミングをすると簡単に大きくなる。その結果、味わいが薄らいできているのではないだろうか。

では、プリント面の真ん中に大きく野鳥を入れた写真が悪いのか。それは、決して悪いわけではない。先ほど述べたように野鳥の細かい部分を見せるには良い撮り方である。しかし、30点の作品で写真展をしたと考えてみると、全部が野鳥のアップばかりだと、鑑賞者は窮屈に感じるのではないだろうか。野鳥のアップがあっても良い、その一方で引きの写真もあって良いはずである。色々なバリエーションがあったほうが、鑑賞は飽きないと思う。

蛇足だが、ここでいうバリエーションとは、鳥の種類のことではなく、写真の見せ方を指している。鳥は大きく写っていないが、プリント全体から味わいが感じられる。写真展では、そんな写真も必要ではないだろうか。だから、野鳥との距離やレンズの選択が大事になってくる。野鳥に近づくことができるのなら、少し短い300ミリを使うとか、わざと野鳥から距離をとって500ミリで撮るなど工夫も必要と思う。

最後に、「味わい」とはなんだろうか。感覚的なことで説明しにくいが、鑑賞者の心の中に何かの感情を起こすものではないかと思う。作品を見て、「かわいいなあ。」「美しいなあ。」「迫力あるなあ。」「安らぐなあ。」などのような感情が自然とわいてき、余韻が残るようなもの。そのような作品を撮るためには、被写体である野鳥の大きさや、位置や、向きや空間が重要である。そして、背景の色が非常に大切な要素になる。

次回は、いよいよ最終号、野鳥撮影におけるデジタル一眼レフの使い方(24)5.カメラ・アラカルト(4)撮影現場は応用編を書く予定である。

(「野鳥だより・筑豊」2013年8月号通巻426号より転載)


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