クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2017-09-21

野鳥撮影における
デジタル一眼レフの使い方(№24)

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野村芳宏

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5.カメラ・アラカルト(最終章)

(4)撮影現場は応用編(最終号)

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編集部長の三宅さんから依頼を受け、2011年10月号から投稿を始め、ちょうど2年がたった。今月号が最終号となる。このシリーズでは、野鳥撮影をするためのデジタル一眼レフの使い方と設定について書いてきた。最終号は、今まで書いてきたことの総括になる。どんな題が適切か色々と考えたすえ、「撮影現場は応用編」が頭に浮かんだ。

私の経験を書いてみたい。2012年11月、インターネットでミサゴの写真が撮れることを知った。以前からミサゴが魚の狩りをするところを是非撮って見たいと思っていたので、その機会がやってきた。本会の森本義光さんに色々とお尋ねし、情報を得た。そして、11月30日からミサゴの撮影が始まった。合計7回通ったが、ミサゴの狩りの撮影には失敗した。すでに森本さんは、数ヶ月にわたりミサゴの撮影をし、素晴らしい成果を挙げられていた。ミサゴの狩りを撮影しようと常時数名がかけつけていた。私が通い始めて、一度だけ良いチャンスがあった。私はもちろんシャッターを切った。しかし、自宅でパソコンの画面で画像を見ると、ことごとく失敗に終わっていた。ファインダーの中央に捉えることができずに、ミサゴが画面からはみ出していた。私は、500ミリレンズにAPS-Cサイズのカメラを付けていた。それで、次の日から500ミリレンズにフルサイズのカメラを付け、撮影に臨んだ。ファインダーの中に捉えやすくするために、撮影倍率を下げて対応しようとしたわけである。それ以来、1度も近距離でのダイブはなく撮影に失敗したという訳である。

常時通われていた中にプロカメラマンの中村雅博さんがいた。中村さんがここで撮影したミサゴの写真をA4版程度の一冊のフォトブックにされていたので、見せてもらった。見た瞬間に目から鱗が落ちた。ミサゴの迫力ある映像がページをめくるたびに現れた。ミサゴがダイブをし、水面から上がろうとする時に猛烈にしぶきが上がり、ミサゴの野生的な鋭い目が捉えられていた。また、ミサゴがダイブする寸前に、魚の群れが驚き飛び跳ねている写真は、今までに見たことのない、一瞬を捉えたすごいシーンの写真であった。中村さんからフォトブックの感想を聞かれたので、自分の印象を色々と話した。その時、中村さんが言われた言葉が印象に残った。「とにかくシャッターを切ること。」私は、この言葉にはっとした。光の当たり方や背景にこだわっているところがあり、条件が悪いときはシャッターを切らない時があった。まして、曇天では水面の色がでないため、撮影すら行かなかったことがあった。多少ピントが外れても、ブレても、背景が悪くても、ひたすらミサゴの迫力あるシーンを追い求める気概に欠けていたことに気がつかされた。

それで私は、とにかくシャッターを切ればミサゴの迫力あるシーンが撮れるようにカメラの設定を変えた。通常、私は絞り優先モードにしている。絞り優先モードは、ご存知のように絞り値を優先しているため、シャッタースピードが変化する。背景の写り方をコントロールするのには良いが、天候が曇りとなるとシャッタースピードが落ちてしまう。そこで、普段はほとんど使ったことのないシャッタースピード優先モードに切り替え、シャッタースピードを1/2000秒に固定した。さらに、曇天でも堤防の影でも1/2000秒を確保するために、ISO感度オートに設定した。どんな条件でもとりあえずシャッタースピードは1/2000秒は切れる。ミサゴの激しい動きは写し止められる。条件が悪ければ、ISO感度が上がり、ノイズが入ってしまうが、とりあえず写し止められることになる。ミサゴの迫力あるシーンを切り取るために、シャッタースピードを最優先したわけである。

結局この成果を出せずに終わってしまったのだが、この時に感じたことが最終号の題になっている「撮影現場は応用編」ということである。撮影する場所によって最適なカメラ設定があるということである。基本は基本としてもっておき、常に撮影現場では、その状況に応じて臨機応変に対応していかねばならないということを学んだわけである。そして、シャッターを切らなければ何も始まらないということである。

さて、このシリーズの最後の言葉として言いたいことは、「どうか写真を撮り続けて下さい。」ということである。昔から写真は記録と言われてきた。野鳥写真も記録を残すことである。この時代にこんな鳥がいた。この場所にこんな鳥がいた。野鳥を撮影することは記録を残すことである。そして、この鳥を見て自分はこんなことを感じた、それを撮ることも記録である。とりもなおさず、それは、自分の人生の記録でもある。写真を撮ることは、自分が生きていた証を残すことである。「どうか写真を撮り続け、自分が生きていた証を残していって下さい。」人はいつしかいやおうなしに死を迎える。しかし、写真は記録として永遠に残る。そして、あなたが撮った写真を孫やひ孫が見て、「じいちゃんは、どんな人やった。」と尋ねることだろう。そうすると息子や娘が「野鳥が好きで、写真が好きで、自然を愛した人やった。」と答えることだろう。いつまでもあなたのことが語り継がれることであろう。

「この2年間、野鳥撮影におけるデジタル一眼レフの使い方を愛読していただき、心から感謝申し上げます。」

つたない文章だったが、何か皆様のお役に立てたならば、こんな嬉しいことはない。

「ありがとうございました。」

(「野鳥だより・筑豊」2013年9月号通巻427号より転載)


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