クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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独断と偏見の識別講座Ⅱ

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波多野邦彦

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第6回 FlycatchersT<ヒタキ類:キビタキ、リュウキュウキビタキ、キムネビタキ、マミジロキビタキ、ムギマキ>

2008年10月 マミジロキビタキ雄第1回冬羽と思われる個体。全国的にも秋の記録はほとんど無い。

福岡県内離島  Field Noteから

春の渡り、やや遅めのGW明け頃、マミジロキビタキを見られたことのある方は多いと思います。真っ白な眉斑、レモン色の喉・胸、腰、白い中大雨覆い、三列風切羽縁など雄は美しく可憐で「春の使者」と言った風情があります。ところで、右のイラストはマミジロキビタキ雄第1回冬羽と考えられる個体。2008年10月福岡県内の離島です。勘の良い方ならここで気がつかれると思います。マミジロキビタキは春と秋では渡りのコースが違うため、国内での秋の記録はこれまでほとんどありません。もし、あっても極端に少なく数件程度だと思われます。上面は少し緑色味のある灰褐色。喉は黄色の地に細かい褐色斑、胸・腹は汚白色。大雨覆いと三列風切羽縁に大きく白色斑があります。腰から下背にかけて広範囲に黄色でこれらの部分が雄個体であることを示唆しています。単独で行動しており、声は地鳴きも全く聞くことはできませんでした。皆さんも春に見られたと手放しに喜んでいてはダメです。秋の記録が肝心なのです!

ヒタキ類第1回目の今回は中でも人気のある、キビタキ、リュウキュウキビタキ、マミジロキビタキ、ムギマキ、そして2006年に国内で初めて記録されたキムネビタキについてお話ししたいと思います。

■キビタキ

初夏渡ってきたばかりのキビタキ雄成鳥。縄張りを確保するため、頭上で一心不乱に囀ります。腰の黄色がかなり上方まで広がり、枯れ枝に一輪の黄色い花が咲いたようです。

添田町英彦山

日本国内ではとても身近で皆さんに親しまれているキビタキですが、世界的にみると実は日本、サハリン、ウスリー地方の一部など極東の非常に狭い地域で繁殖する種類です。雄は眉斑、喉、胸及び腰が濃い黄色で喉にはオレンジ色味があります。中雨覆い、大雨覆いの一部が白色で大きな斑を形成します。雄は成鳥も1年目の個体も特徴ある色彩でわかり易いのですが、皆さんは雌で特にオオルリの雌との比較で悩まれることが多いと思います。ただし、実際には大きさとスタイルが全く違います。オオルリは日本産ヒタキ類の中でも突出して大柄です。少し難しいかもしれませんが単独でも大きさがわかるようにマスターしていただきたいと思います。オオルリは全体的に伸びやかでスマートなスタイルで、一方キビタキは首が短くいくぶんコロッとしたかわいいスタイルです。オオルリ雌は頭からすっぽりとこげ茶褐色のベールを被ったような感じです。キビタキ雌はやや緑色味がかったオリーブ褐色で腰や尾の部分に茶褐色味がありあります。また喉にもやもやとした斑があります。嘴の太さ大きさなどにもかなり差があります。オオルリは太く長い形状でキビタキはそれに比べると細めで短い嘴をしています。

■リュウキュウキビタキ

もう34年も前の学生時代、野鳥を始めて2年目に南西諸島を訪れました。最初の宿泊地西表島。夕食前のひと時、民宿の周りを散歩しているときに1羽のヒタキを見つけました。全身に淡色の斑点があります。何かの幼鳥らしいことはわかりましたが、体色が明るい黄緑色です。こんなの見たことありません。今でこそ、リュウキュウキビタキは基亜種キビタキの別亜種として一般に知られていますが、当時はまだ未分類だったと思います(知らなかっただけかも?)。先輩共々かなり慌てましたが結局のところ「キビタキの巣立ち雛に似た“謎のヒタキ類 sp.”として確認」とフィールドノートに書き記しています。リュウキュウキビタキは種子島以南の南西諸島に留鳥として棲息しています。雄成鳥は暗緑色の上面、黄色の下面が特徴(キビタキ雄成鳥冬羽も上面に緑色味があるので注意)。黄色の眉斑は上嘴の鼻孔に達し、額で細く繋がる傾向があります(キビタキは上嘴基部に届かない)。喉のオレンジ色味は少なく、嘴がやや太く丈夫そうに見えます。また、三列風切基部羽縁にわずかに白色部がありますが、これは磨耗により消滅しやすいようです(キビタキ雄にはありません)。

リュウキュウキビタキは成鳥・夏羽になるのが遅く、幼羽から成鳥羽になるのに3年以上はかかるようです。第1回夏羽の雄では眉斑・喉は黄色ですが、雨覆い三列風切の白色斑も目立たず、他の部分は雌に似た羽色をしています。また、基亜種キビタキと異なり、前述のとおり第2回冬羽でもまだ成鳥・冬羽とはなっていません。雌成鳥はキビタキ雌によく似ていますが、リュウキュウキビタキは上面に緑色味が強く出ます。

■キムネビタキ

キムネビタキ Chinese Flycatcher Ficedula Elisae 雄成鳥 緑と黄色、翼・尾は黒褐色のとても美しいヒタキ。近年までキビタキの一亜種とされていましたが、現在は別種扱いです。

キムネビタキ Chinese Flycatcher Ficedula Elisaeは2006年5月2日雄1年目夏羽個体が松江市美保関町において国内で初めて標識放鳥されました。従来キビタキの別亜種として認識されていましたが、現在キビタキとは別種扱いになっています。もともとは中国の河北省や陝西省(せんせいしょう)などごく一部の非常に狭い地域で繁殖し冬はタイやマレー半島へ渡る種類です。雄成鳥は頭頂から顔、頸、背が緑灰色、翼・尾が黒灰色、眉斑・アイリング・喉は鮮やかな黄色で胸から腹・下尾筒にかけてはやや鈍い黄色、内側大雨覆いと中雨覆いの一部および三列風切羽縁基部が白色で非常に美しく特徴のある色彩をしています(右イラスト参照)。雌も雄同様上面は緑色味の強い灰褐色で下面は全体に黄色味があります。アイリングは黄色または淡黄色で目立ちます。上記のバンディング記録以外に国内での観察記録はまだありません。

■マミジロキビタキ

北部九州では5月GW過ぎ頃、春のやや遅い時季に出現することが多いようです。秋は記録されません(巻頭イラスト・説明参照)。雌雄ともに黄色い腰と翼の白斑が特徴です。雄は眉斑が白く、喉・胸・腹はきれいな黄色をしています。キビタキ雄のようなオレンジ色味は通常ありません。翼の白斑は中・大雨覆いと三列風切羽縁が白くなります。囀りはキビタキに似ていますが、より短く単調なフレーズの繰り返しで、囀りでキビタキとの識別が可能です。1984年6月24日に静岡県内富士山麓でマミジロキビタキ雄とキビタキ雌との自然交雑(営巣)が初めて確認・撮影されています<参照:写真集富士の鳥 保育社>。

■ムギマキ

英名Mugimaki Flycatcher、学名Ficedula Mugimakiでどれも「ムギマキ」という名前がつきます。日本国内では春5月、秋10月後半〜11月中旬頃に通過する旅鳥です。ロシアから中国北東部、朝鮮半島、サハリンなどで繁殖し、中国南部、フィリピン、インドネシアなどで越冬します。年によって個体数に差はありますが、一部の個体は日本国内で越冬します。世界的に見るとキビタキなどに比べより広範囲に分布する種類です。雄成鳥は黒い上面、目の上から後に垂れる白い眉斑が顕著。また中大雨覆い・三列風切羽縁の白斑がよく目立ちます。尾基部の両側数枚が白色です。喉から胸・腹にかけて濃いオレンジ色をしており、他の種類に無い特徴的な色彩をしています。1年目冬羽の雄は上面が黒褐色で眉斑は個体によってはあったり無かったりです。喉のオレンジ色もやや鈍い色彩です。雌は上面が褐色で喉は薄いオレンジ色です。1年目冬羽の個体は中・大雨覆い先端の淡褐色斑が顕著で2本の明瞭な翼帯になります。下面は薄いオレンジ色または黄色ですが、個体によっては全く色味の無い個体もおり、非常に細かい暗色斑が胸腹一面にあります。

終わりに

  • ヒタキ類の中でも今回ご紹介したキビタキの仲間は色彩が非常に美しくオオルリと共に、初心者の方々や写真家にはとても人気のあるグループです。
  • 亜種リュウキュウキビタキについては個人的には亜種というよりも別種に近い感覚でみています。生態が全て明らかになっている訳ではなく、換羽等でまだ研究が必要な未解明な部分が多く残されているようです。
  • キムネビタキは日本では1度標識放鳥されただけの珍鳥です。棲息地域は非常に狭く中国でもごく一部に限られているため、基本的に日本を通過しているとは考え難く、国内での再発見時期など今後の動向が気になる種類です。
  • ムギマキなどは、感覚的には個体数が年々減少しているように感じます。キビタキも年によっては極端に多くなったり少なくなったり。このグループ、どの種類もこれから目が離せないといった感じがしています。
  • 参考文献:

    • Birds of East Asia: Princeton University Press Princeton Oxford
    • オオルリ(Cyanoptila cyanomelana)キビタキ(Ficedula narcissina)識別マニュアル
      平成21年3月環境省自然環境局野生生物課鳥獣保護業務室
    • 写真集 富士の鳥 浅見明博、堀田明:兜ロ育社 昭和60年4月30日発行

    2013-09-21掲載(「野鳥だより・筑豊」2013年12月号 通巻430号)

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