クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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独断と偏見の識別講座Ⅱ

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波多野邦彦

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第9回 Woodpeckers<ケラ類>

2010年10月 ハシブトアカゲラ Dendrocopos major brevirostris 雄成鳥 九州内(対馬を除き)では通常アカゲラを見ることはできない。本種と思われる羽根の拾得記録が宗像市沖ノ島である。

福岡県内離島Field Noteから

ケラ類に関しての基本知識。通常離島にはケラ類がいません、もしいてもコゲラの場合が多く、それ以上大きな大型ケラ類はいないのが普通です(対馬や佐渡などの大きな島は例外、両島ともアカゲラ棲息)。

2010年10月福岡県内のある離島。ショボショボと霧雨が降る中を独りで探鳥していると突然林道の脇から「コーン、コーン」という大型ケラ特有のDrumming(ドラミング)の音が聞こえてきました!九州初記録のチャバラアカゲラ、ハシブトアカゲラ、それとも日本初記録のBay Woodpecker!頭の中はぐるぐるフル回転、全ての種類の識別ポイントは準備OK!イヌツゲの向こうの枯れ木が揺れています。

しばらく待っていると下から姿を現したのは、褐色部分がほとんど無く白く美しい顔のハシブトアカゲラ雄成鳥でした。次第に全身が現れてきます。背の白斑は翼前縁に届くほど大きく、三列風切先端にも白斑はありません。識別ポイントは全て押さえました!と同時に飛び立ち頭上すれすれを飛去しました。超珍鳥に出遭ったときのいつものヒリヒリとした緊張感がしばらく纏わり付いて離れませんでした。九州内生きたハシブトアカゲラ、初めての記録です。

日本産のキツツキ類は、アリスイ、クマゲラ、ヤマゲラ、ミユビゲラ、オオアカゲラ、アカゲラ、コアカゲラ、アオゲラ、コゲラ、ノグチゲラ、チャバラアカゲラ、そして絶滅したキタタキの12種です。九州に住んでいますと北海道でしか見られないクマゲラ、ヤマゲラ、コアカゲラは遠い国にいる鳥のように感じます。それぞれ特徴のある種類ですので今回は九州に馴染みのある、オオアカゲラ、アカゲラ、アオゲラ、コゲラ、ノグチゲラについてお話したいと思います。また今後日本海側の離島で出現の可能性があるチャバラアカゲラそしてヤブゲラ(Bay Woodpecker)まで説明したいと思います。ケラ類はもともと土着性が強く、渡りをする種類が少ないことが知られています。アカゲラが通常あの狭い関門海峡を渡らないことからも、その性格がおわかりになると思います。

■オオアカゲラ

日本全国北海道から九州まで分布するポピュラーな大型のケラです。白っぽい背中、胸から腹にかけて縦斑があります。アカゲラにはこの縦斑がありません。国内では4亜種が知られており、北から北海道に棲息するエゾオオアカゲラ、本州北部・中部のオオアカゲラ、本州中部・南部、四国、九州、済州島に分布するナミエオオアカゲラ、最後に奄美大島のオーストンオオアカゲラが知られています。北に住む亜種ほど白っぽく、南に行くほど黒っぽくなることはご存知の通りです。エゾオオアカゲラはとても白く美しいのですが、一方奄美のオーストンオオアカゲラは上面に紺色の光沢があり、下面の赤は濃い苺色で通常白い部分がクリーム色をしておりこちらもまたとても美しい亜種です。初めて奄美大島に行ったときにルリカケスよりもアマミヤマシギよりもこのオーストンオオアカゲラを見たくてたまらなかったことを覚えています。

■アカゲラ&ハシブトアカゲラ

アカゲラは広くユーラシア大陸に分布し、アジア圏内では東南アジアまで分布しています。国内では北海道に亜種エゾアカゲラ、本州・四国に亜種アカゲラが棲息しますが、基本的に九州以南にはいません。ただし、近年渡りの時期に日本海側の島嶼で見つかっています。対馬には従来からアカゲラが棲息しています。亜種ハシブトアカゲラ(巻頭イラスト参照)はユーラシア大陸北部や樺太、オホーツク海西部等に棲息し渡りをする数少ないケラの一種です。春秋の渡りの時期に日本海側の離島で観察され、過去には山口県見島、石川県舳倉(へぐら)島、福岡県(本件)等で観察されたことがあります。ハシブトアカゲラの特徴は嘴がやや太く短めであること、顔・胸が非常に白っぽいこと、翼上面の左右一対の白斑が非常に大きいこと、三列風切先端には白斑が無く黒であることなどです(巻頭イラスト参照)。過去に宗像市・沖ノ島で本種と考えられる羽根が拾得されています。

■アオゲラ

アオゲラ Japanese Woodpecker は九州ではもっとも見る機会の多い種類のケラです。日本固有種です。北海道以外の日本国内だけに棲息し、全世界的に見ると意外にも日本では北海道だけにいるヤマゲラよりもずっと分布域の狭い種類です。上面は光沢のある緑色で胸にはV字の小黒斑が密に入ります。食性は雑食で、主に昆虫を食べますが、果実もよく食べます。また、アリを食べる習性があるため地表近くでも採餌します。市街地のちょっとした雑木林などにも生息します。意外と身近に多くいる種類かもしれません。

■コゲラ

国内ケラ類の中でコゲラは街路樹や住宅地の樹木のあるところで普通に見られるため、私達が最も身近に感じる種類ですが、世界的に見ると中国東北部、韓国、北朝鮮、南サハリン、日本など極東に限られたとても狭い地域だけに分布する種類ということができます。国内では基亜種のキュウシュウコゲラを含めて9亜種が知られています。雄は耳羽のすぐ上に赤い羽根がありますが、通常は羽毛の下に隠れていて見ることが難しいです。冬季は他のカラ類やメジロと一緒に混群を作り、市街地でもよく観察されます。

■ノグチゲラ

2010年4月 ノグチゲラ雌成鳥
乳白色の嘴、全身の赤褐色を基調とした色彩が美しいケラ類。頭上1.5m 全く逃げる様子もなく、細い枝に上手にとまり木の実を採餌。森林伐採等による環境悪化のため、個体数は減少している。

沖縄本島ヤンパル Field Noteから

皆さんもご存知の通り全世界で沖縄本島北部(やんぱる)のみに棲息する世界的希少種。1属1種。日本固有種。1972年国の天然記念物、1977年特別天然記念物に指定されています。全身が赤褐色の非常に特徴的な色彩で間違えることはありません。生息数は100〜200羽程度と言われており、森林開発による環境悪化により生息数が減少し絶滅が心配されています。動物食中心の雑食性ですが木の実もよく食べます。

■チャバラアカゲラ、ヤブゲラ(Bay Woodpecker:日本未記録種)など

チャバラアカゲラは2005年5月16日石川県舳倉島で国内初記録、その後同島で数度観察されています。アカゲラ程度の大きさ。非常に特徴のある色彩ですので詳細な説明はここでは割愛します。九州の離島でもいつか必ず出現すると確信しています。ヤブゲラは大きさがオオアカゲラと同等、シナモンブラウンの地に黒斑が点在する色彩の美しいケラです。発見されるのはなかなか難しいとは思いますが、九州や南西諸島近辺などは出現可能性がゼロ“0”ではありません。他にもクリチャゲラ、キエリアオゲラ、ヒメアオゲラ、タケゲラなど華南や東南アジアに棲む南方系の数種類のケラは可能性があります。北のロマンがミユビゲラならこちらは南のロマンと言えるかもしれません!

終わりに

  • 巻頭では「drumming(ドラミング)の音による識別」をご紹介しました。日本国内離島でのケラ類の生息状況を理解していれば、このように「声」ではなくまず「音」に気づくことができ、その音だけでかなりのところまで種類を絞り込むことができます。また、最大のクマゲラや最少のコゲラもこの音で識別することができます。探鳥技術を駆使するとこのような識別も可能になってきます。
  • 日本産ケラ類全11種類(キタタキ除く)、全て見ている人はほとんどいないと思われます。希少種のミユビゲラが含まれているからです。北海道には極少数ながら棲息が確認されています。私もずいぶん昔、若い頃に無謀にもこのミユビゲラに挑戦したことがあります。北海道然別湖畔早春3月、マイナス33℃の世界でした。まる二日間探しましたが、当然発見できませんでした。いつの日か自分の瞼にあの姿を焼き付けたいと考えています。
  • 今回全ての種類については詳しい説明ができていません。クマゲラ、ヤマゲラなど北海道に棲むケラ類は今後に持越しです。ただケラ類は対馬で絶滅したキタタキも含めそれぞれに特徴があって、強烈な個性で私達を惹きつけるそんな種類だと思います。

参考文献:

  • BIRDS OF EAST ASIA: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON AND OXFORD
  • BIRDER 2010年10月号 「日本国内におけるミユビゲラの生息状況」北方森林鳥類調査室

2013-12-29掲載(「野鳥だより・筑豊」2014年3月号 通巻433号)

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