クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2017-09-21

独断と偏見の識別講座Ⅱ

波多野邦彦

総目次

第12回 Cuckoos<トケン類>

2010年6月 セグロカッコウ成鳥

Indian Cuckoo 国内での繁殖は未確認 本来の生息地では托卵の相手はオウチュウ類 親がオウチュウ雛がセグロカッコウなんて夢のような組あわせ!日本国内での実現はなかなか難しいでしょうね。従来は春の渡りの時期に日本海側の島嶼で観察されることが多かったが、近年西日本や九州の山地に夏鳥として渡ってくるケースが増えてきた。

福岡県添田町英彦山 Field Noteから

当時5、6年前から英彦山には毎夏セグロカッコウが渡来していました。「ファファファフォ、ファファファフォ」最後の4音節目が下がる、特徴のある声は幾度となく聞いてきましたが、いつも繁った葉の中で鳴く習性のためにこれまでどうしても姿を捉えきれませんでした。次にチャンスがあったら必ずモノにしようと心に決めていました。

2010年6月突然チャンスが巡ってきました!今朝の個体は林道に沿って移動を繰り返します。セグロカッコウ一種に集中し他の鳥には目もくれません。顔前の茂みで鳴いていたかと思うと羽音もたてずに突然声だけが自分の真後ろに回ったりします。声を追って、林道を行ったり来たり、稜線上の登山道に登ったり下りたり、気がつくと5時間以上粘っていました。

半分諦めかけた時、突然頭の真上で鳴き始めました。近すぎる!身動きできません。脈拍が速くなり、呼吸するのも忘れそうです。ゆっくりと頭を振り、繁った葉の間を通して林の樹冠の外側に突出した枯れ木で鳴いている姿を発見しました。静かにスローモーションのようにスコープを据え付けます。

赤褐色の虹彩、黄色のアイリング、上胸両側の暗褐色、胸・腹の太目の横斑、暗灰褐色の背、かなり擦り切れていましたが尾先端の太い黒帯など全ての識別ポイントを確認できました。この間もずっと鳴き続けています。離島でなくては見るのが難しいと考えていただけに嬉しさも大きかった!しかも長時間狙ったうえでの粘り勝ち、もう最高の気分でした!!

トケン類はカッコウの仲間の総称です。日本産のカッコウの仲間Cuculus属にはカッコウ、ツツドリ、ジュウイチ、ホトトギス、セグロカッコウなどがいます。前4種は初夏に日本に渡ってきて繁殖する夏鳥です。どの種類も声にたいへん特徴があります。渡ってくる順番はツツドリが最も早く4月中旬頃、次にカッコウ、ジュウイチ、そして最後にホトトギスが5月中旬ごろ渡来します。秋はどの種類も10月頃には渡去するようです。またカッコウ類のほとんどの種類は毛虫を好んで食べます。平気で有毒物質を持った毛虫や有毒な果実も食べることから、毒に対する耐性を持っているものと考えられています。

今回はこれらに近年観察されるようになったオオジュウイチを加えて、説明していきたいと思います。

■カッコウ

ユーラシア大陸の西の端から東の端まで最も広く分布する中型の種類です。主な宿主はオオヨシキリ、コヨシキリ、モズ、ホオジロなどで、他の森林性のカッコウ類と違って林縁や草原などの開けた環境に棲息する傾向が強いようです。胸から腹にかけての横斑は一本一本が細く間隔も狭いです。小翼羽の色彩は白色で細い黒色横斑が入ります。下尾筒は白色で小さな横斑がありますが、通常はほとんど見えません。ツツドリ、ホトトギスの雌では赤色型が見られますが、国内でカッコウの赤色型の確実な報告はいまのところ知られていません。九州では個体数はそれ程多くなく、代表格4種の中では最も少ない種類だと思われます。

■ツツドリ

バルト海沿岸から東側、ヒマラヤ以北のユーラシア大陸繁殖し東南アジアなどで越冬します。平地から亜高山帯の林内に生息する中型の種類です。早朝かなり薄暗い時間帯から鳴き始めますが、夜間は鳴きません。ツツドリの主な宿主はセンダイムシクイやメボソムシクイなどのムシクイ類です。胸・腹には明瞭な太い横斑があります。小翼羽は白色で無斑かあっても僅かです。下尾筒は黄色味を帯びた淡褐色で細かな横斑が見られます。

■ジュウイチ

2009年5月 ジュウイチ
Northern Hawk Cuckoo 亜成鳥 風雨が激しい悪天候の中、繁った葉の陰で、たまに鳴いたり、伸びや羽繕いなどをしてリラックスする。後頸に二つの大きな白斑 三列風切最上部の羽根に淡色の複雑な模様がある。

福津市津屋崎 Field Noteから

インド北部から中国東北部、ウスリー、朝鮮半島、日本などで繁殖し東南アジアで越冬します。主な宿主はコルリ、オオルリ、コマドリ、ルリビタキなどです。雛の翼内側に赤と黄色の皮膚が露出した部分があり、複数羽が口を開けているように見えることから托卵主の親に餌を与える行動を促していると考えられています。他の種類に比べて外見上の色彩が特徴的です。暗灰色の上面、成鳥ではオレンジ色無斑の胸・腹、尾の横帯など。幼鳥は胸・腹に明瞭な暗色縦斑が見られます。夜間もよく鳴きます。俳句では「慈悲心鳥(じひしんちょう)」として知られ夏の季語になっています。

鳥を見始めた頃、クラブの先輩からこのジュウイチは姿を見るのがとても難しいと教わりました。確かに通常のトケン類の中では難しさが格段に違う気がします。声が近いからと不用意に近づくといつの間にか声が止み、見失ってしまいます。ただ、こういった鳥は姿を見るのが不可能かというと可能性はゼロ“0”ではありません。コツは敢えて近づこうとせずに離れたところから探すことです。ある程度以上の距離を保てば、このような種類の鳥はいつも近くに気を配っているのか遠方に対しては意外と無用心でじっくりと観察することができたりします。右図の個体は風雨が吹き荒れる天候の中、たまたま近くで発見できたケース。木陰で安心して羽繕いをしたり、伸びをしたりしていました。

■ホトトギス

ヒマラヤ、中国、朝鮮半島、日本で繁殖し東南アジアで越冬します。代表格の4種の中では最も遅く、5月中旬頃に九州に渡来します。他の種類よりもひとまわり小型の種類で、慣れてくると単独でもその小ささがわかるようになります。主要な宿主はほとんどウグイスといってもよいほどですが、ウグイスが分布しない伊豆諸島などではイイジマムシクイ、ウチヤマセンニュウなどに托卵するようです。胸・腹の横斑は太く間隔も広く本数が少ないです。小翼羽は灰白色で無斑です。下尾筒は無斑で黄色味のある淡褐色をしています。カッコウ、ツツドリは直線的に飛びますが、ホトトギスは浅く流れるような波状飛翔を行ないます。

■セグロカッコウ

日本初記録は、1978年鳥取県の中学生がラジカセで録音した声によるものとして有名です。声だけでも100%識別可能です。中型の種類で、外見上の特徴は虹彩が赤褐色、黄色のアイリング、グレーの頸の最下部両側が暗色、胸の横斑は太く本数は少なめ、背中は褐色味が強く出る、尾先端に幅広い黒色帯があることなど(巻頭イラスト参照)。春季、日本海側の島嶼で観察されることが多かったのですが、近年は九州や西日本の山地で頻繁に観察されるようになりました。本来の生息地での托卵相手はオウチュウ類ですが、日本国内での繁殖はまだ確認されていません。

■オオジュウイチ

大型のカッコウの仲間。通常ヒマラヤから東南アジアにかけて分布していますが、近年韓国や日本でも記録されるようになりました。私は聞けませんでしたが、数年前春季日本海側の離島で鳴き声が聞かれました。通常「ビピーハ」と聞きなしされますが、その時実際に聞いた方の話しによるとかなり大きな声で「ティティーフ、ティティーフ・・・」第2音節にアクセントがあり、次第に早くなる・・・と聞こえたようです。今後は記録が増える可能性があります。日本海側であれば、島嶼でなくても出現の可能性があり、注意が必要だと思われます。

終わりに

  • 冒頭にも書きましたが、セグロカッコウやジュウイチを初めて見たときの感動はいまでもはっきりと覚えていて忘れられません。自分なりに工夫して苦労しながら、時には数年かけて自分の力でようやく初見にたどりつくことも鳥見の醍醐味と言えるのではないでしょうか。
  • 秋の渡りの時期、毛虫が大発生しているような場所には数個体が集まっている場合があります。上手にブラインドなどを使えば、ツツドリやホトトギスの赤色型や黒っぽい幼鳥などをじっくりと観察する絶好のチャンスです。そうした場所を探してみるのもいいかもしれませんね。
  • 托卵という、生まれてまだ目も見えないうちから他の鳥を犠牲にする習性(さが)を持っているためか、カッコウのグループはどこか一種独特な雰囲気を感じてしまうのは自分だけでしょうか?

参考文献:

  • Birds of East Asia: Princeton University Press Princeton Oxford
  • Collins BIRD GUIDE The Most Complete Field Guide To The Birds of Britain and Europe: HarperCollins Publishers Ltd
  • BIRDER 1998年6月号 カッコウ鳴く初夏の森:文一総合出版
  • A Guide to the Birds of Southeast Asia CRAIG ROBSON: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON,New Jersey
  • 決定版 日本の野鳥650 真木広造 大西敏一 五百澤日丸:(株)平凡社

2014-03-20掲載(「野鳥だより・筑豊」2014年6月号 通巻436号)

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