クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
total 
modify:2017-11-21

独断と偏見の識別講座Ⅱ

波多野邦彦

総目次

第13回 Starlings<ムクドリ類>

2009年2月 シベリアムクドリ雌第1回冬羽? 同定の決め手は肩羽最下段先端の白斑、一列の帯状になっています。三列風切にある小白斑もこの種の特徴です。成鳥は春の渡り5月の遅い時期に日本海側の離島などで観察されます。幼鳥や1年目個体の記録、さらに本種の冬季の記録は南西諸島以外ではほとんどないと思われます。九州本土でも今回が初記録の可能性があります。どんな経緯で九州本土に飛来したのかたいへん興味をそそる種類です。

福津市 Field Noteから

MF(マイフィールド)には小規模ながら何でも揃った田舎の便利なスーパーがあります。鳥を見た後、ちょっと買い物をして帰ることもしばしば。2009年2月 この日は霙(みぞれ)が降っています。鍋の材料とビールを両手に下げて車に乗り込もうとしたとき、正面街路樹のナンキンハゼに群れるムクドリの中、小さな淡色の1羽に目が留まりました。肉眼ではコムクドリかと思いましたが、一応双眼鏡で確認します。「おおっ!?」姿を見ていつものような反射的同定ができません。すぐに、頭をフル回転させます。直後にくだした判断は「もしかしたら、これってシベリアムクドリかも?!」でした。この1週間後、ナンキンハゼの実を食べ尽くすと同時にムクドリの群れと一緒に姿を消しました。

ムクドリ類は九州では比較的馴染みのある種類で、ムクドリ、コムクドリ、ホシムクドリ、ギンムクドリ、カラムクドリ、シベリアムクドリ、バライロムクドリ等、国内で確認されているすべての種類について記録があります。

■ムクドリ

九州ではごく普通に見られる小鳥で、大きな群れを作ることがあります。地域によって個体数に差があり、やや局地的な分布になっています。大群で街路樹や住宅地の電線等を塒(ねぐら)にするため、糞害に悩まされることもしばしば。街中などでたくさん居るような場所ではズラーッと電線に並びまるで霰(あられ)が降っているかのように糞をバラバラと音をたてて落とします。声もうるさく一般的にはあまり良い印象はもたれていないようです。成鳥の特徴はオレンジ色の嘴、白い頭、濃灰色の体、白い腰、三角形に近い翼の形、短い尾など。幼鳥は頭から体は灰褐色で頬がやや薄い色です。成鳥同様、ムクドリの仲間の中でも腰のみが白いということで容易に識別が可能な種類です。

■コムクドリ

日本国内では本州中部地方以北で繁殖します。九州では春秋の渡りの時期にムクドリの群れに混じっていたり、小群を作ったりします。また、時には単独で大群になる場合もあります。雄はクリーム色の頭に赤褐色の頬、紺色光沢の背中などが特徴。雌はやや地味な色合いで、特にシベリアムクドリとの識別では注意が必要です。(冒頭イラスト解説参照)

■ホシムクドリ

九州では冬鳥として定着しています。特に個体数が多い鹿児島県・出水、川内、長崎県・諫早などの地域では単独の大きな群れに遭うことがあります。理由はわかりませんが、諫早では不思議とタゲリと一緒に行動している姿をよく観察します。また、ミヤマガラスの群中でもしばしば観察されます。夏羽は黄色い嘴と何といってもからだの緑や紫色の光沢が非常に美しい羽衣をしています。冬羽は一見黒い体に白い斑が散らばっているように見えますが、よく見ると黒い地の色合いは夏羽と同じく緑や紫の光沢があり、たいへんシックでお洒落です。ムクドリに比べて、一回りからだが小さく嘴も細いので、慣れてくるとシルエットでも識別可能です。夕方塒入りの時に鉄塔や電線などにズラーッとならんだムクドリの中にいても区別がつきます。

■ギンムクドリ

1980年3月学生時代に沖縄県与那国島で日本初記録の本種を観察しました。30羽ほどの群れでした。当時は和名がわからず、英名のRed-billed Starlingレッドビルドとそのまま呼んでいました。現在は春秋の渡り鳥または冬鳥として定着しています。近年、九州ではそれほど珍しい種ではなくなりました。冬期の九州でムクドリの大きな群れに遭遇した時などはホシムクドリかこのギンムクドリが混じっている可能性が高いのです。特に南西諸島ではカラムクドリと同様に独立した群れで確認されることがあります。雌雄共に初列風切基部の大きな白斑が目印。雄は雌よりもはっきりとした色彩です。赤い嘴、クリーム色の頭部、銀色の体、緑色の金属光沢がある翼など非常に美しいムクドリです。

■カラムクドリ

中国華南から台湾、フィリピンなどの東南アジアの狭い地域に分布する種類です。日本では旅鳥または冬鳥として南西諸島、南九州などに渡ってきます。特に南西諸島(石垣島)では冬鳥として単独の群れが市街地で観察されます。街中の小さな公園にふつうにいる姿を見ると嬉しくなります。雌雄供に青灰色の虹彩、白または淡バフ色の雨覆いが特徴です。

■シベリアムクドリ

極東の狭い地域に分布する種類です。日本海側の離島で5月中旬過ぎ春の遅い時期に記録されることが多いようです。単独またはコムクドリの群れに混じったりします。雄雌共に肩羽最下段先端の白斑(繋がって太い白線に見える)が識別ポイントです(冒頭イラスト参照)。雄成鳥の後頭部には黒い斑があり、通称ハゲムクと呼ばれたりします(ある意味逆だと思うのですが・・)。また背中は紫色の光沢がある濃紺色です。雌の背中は茶褐色です。コムクドリの雌に似ていますので注意が必要です。冒頭イラストの個体は九州本土初記録の可能性があります。

■バライロムクドリ

2007年1月 バライロムクドリ第1回冬羽 九州本土初記録の個体 成鳥のイメージとはかなりかけ離れた色彩。ホシムクドリの群れと行動を供にしていました。

鹿児島県出水市 Field noteから

南西諸島や日本海側の島嶼で渡りの時期、主に春季に観察されます。成鳥夏羽は黒い冠羽、黄色の嘴、ショッキングピンクの胸腹、ひじょうに美しい色彩をしています。右イラストは第1回冬羽個体。2006年12月ツルの渡来地として有名な鹿児島県出水市に出現、九州本土ではこの時が初めての記録でした。皆さんが期待していた成鳥夏羽とは似ても似つかない姿に戸惑った方も多かったのではないでしょうか。ただよく見てみると黒っぽい喉・胸やピンク色味のある腹など、成鳥を連想させる兆しが感じられます。個人的には誰にでもわかる万人が美しいと感じる個体よりもこのような少し考えさせられる個体の方が味があって面白いと思います。実はこの年の春、日本海側の離島で黒と濃ピンクの成鳥夏羽をほんの数秒だけ視界に捉えていました。その時は残念ながらその瞬間だけでした。運よくその年の年末にリベンジを果たすことができました。また2014年1月南西諸島・西表島で本種単独8羽の小群を観察。ほとんどが成鳥or1年目冬羽でしたが、1羽だけが既に濃いピンク色と黒色の羽衣に変わっていました。

終わりに

  • 南西諸島を含む九州地域はほとんどのムクドリ類にとって棲みやすい環境が整っているようです。特に南西諸島では様々な種類が見られます。石垣島では以前から市街地にカラムクドリが棲息しています。今年2014年1月も石垣島で30羽程度の群れを観察しました。学生時代にはもっとたくさんいたような気がします。西表島では前述のバライロムクドリ小群や20羽余りのギンムクドリの群れにも遭遇しました。
  • 冬の九州では、ムクドリ類の大きな群れがいるとき、体や翼上面の白い部分の位置で種類を特定することができます。つまり腰が白いのがふつうのムクドリ、その中で真っ黒で少し小さいのがホシムクドリ、そして翼(初列基部)に大きな白斑が出るのがギンムクドリです。かなり珍しいですがもしカラムクドリがいれば、大雨覆い全体に大きく白い斑が出ます。こういったムクドリ類の色彩パターンを覚えておくと白い斑の有無とその位置によって遠くからでも飛んでいるムクドリの種類を識別することができます。
  • 九州周辺の春の渡りではご紹介したムクドリ類のどの種類が出てもおかしくありません。みなさんも南西諸島や離島でチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

参考文献

  • BIRDS OF EAST ASIA:PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON AND OXFORD
  • Collins BIRD GUIDE The Most Complete Field Guide To The Birds of Britain and Europe: HarperCollins Publishers Ltd.
  • A Guide to the Birds of Southeast Asia CRAIG ROBSON: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON,New Jersey
  • 決定版日本の野鳥650 真木広造 大西敏一 五百澤日丸 (株)平凡社

2014-04-11掲載

ご意見・ご質問はこちらへ

左矢印前へ  上矢印目次  次へ右矢印