波多野邦彦
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第23回 Tits <カラ類>
2012年11月 キバラガラ雌第1回冬羽
国内4例目記録 上面は頭から薄っすらと黄緑色のベールをかけたような色彩。頬と喉が大きく白色で雌個体の特徴。背・雨覆等は青い光沢のある黒色で羽先の白斑とのコントラストが美しい。当初胸腹の黄色はレモン色(このイラストは濃く見える)だったが、次第に黄色味を増した感じだった。尾は短小。本来は中国のごく狭い地域だけに生息する種類。この冬シーズン国内記録が爆発的に増加し、翌春の渡りシーズンにも日本海側複数の離島で観察された。
福岡市 Field Noteから転記
2012年冬、福岡市民憩いの場・大濠公園にキバラガラ出現!2009年11月福岡市東区三苫(標識放鳥)、2010年4月石川県舳倉島、2012年11月春日市春日公園(ほぼ同時)に続き、国内4例目と思われる。
早朝、現地に直行する。ポイントは児童公園脇の広葉樹が繁る暗い小さな林。早朝で時間が悪かった?のか、すぐ側では年配の方々が150人以上集まり音楽をかけ太極拳や体操をしている。中には長さ1mもありそうな太極扇(カンフー映画でしか見たことなかった)をバンバンならして踊っている。こんな賑やかな状況で本当にいるのか!?モヤモヤした気持ちで終了を待つ。
約30分後喧噪が収まるのを待っていたかのようにキバラガラ登場。内心ほっとする。とても小さい!ヒガラと同程度。上面が黒紺色で黄緑色の薄っすらとした光沢があり下面は黄色。今まで見たこともない色彩の美しい小鳥。朝まだ薄暗い林の中を飛び回る。とても素早くチョコマカと動き回り一時もじっとしていない。しばしば地面すれすれまで非常に大きく弧を描くような飛び方をするため、その際に見失うことが多かった。あまり人を恐れず、すぐ頭上、手が届きそうな所にも飛んで来る。ドングリを樹木の割れ目等に詰める貯食行動も確認。こんな都会の真ん中にある公園で国内数例目の珍鳥が観察できるとは驚きだった!!何とか越冬してくれることを願う。
この個体発見直前(数日違い)に隣市の公園でも国内3例目となる♂第1回冬羽個体が発見されており、その後どちらの個体も翌春まで無事に越冬し美しい夏羽に換羽した姿が確認された。
これまでに記録された日本産カラ類は、ハシブトガラ、コガラ、ヤマガラ、ヒガラ、キバラガラ、シジュウカラ、そしてルリガラの7種類です。他の種類に比べ種類数が少ないのはカラ類の特徴として留鳥性が強くあまり移動しないことが一つの原因になっていると思われます。
■ハシブトガラ
日本国内では留鳥として北海道のみに生息する。コガラに酷似する。コガラとの違いは頭部の黒色部に光沢があること。嘴の会合線が白く目立つこと。初列風切、次列風切羽縁が淡色。尾は角尾。地上に降りることが多いなど。北海道には2種類とも生息しているので注意が必要です。
■コガラ
日本国内では九州以北の低地から山地に生息する。ハシブトガラに酷似する。違いは頭部の黒色部に光沢がないこと。次列風切の羽縁が特に白く目立ちその他の部分とコントラストをなすこと。嘴の会合線は目立たないことなど。
■ヤマガラ
1998年3月 ヤマガラ成鳥
カラ類の行動はとてもアクロバティック。見ていて飽きることがない。
豊前市合河 Field Noteから転記
低地から山地まで国内では全国に分布する。国内では8亜種が知られている。モノトーンが多いカラ類の中では色彩豊か。囀りはテンポが遅く、「ツーツーピー、ツーツーピー」とのんびりしたもの。「ピーピーピー」という地鳴きも強い声。「ニーニー」と甘えたような声は特徴的。声だけで識別可能な場合が多い。カラ類の中では最大種。嘴も長くしっかりとしている。貯食行動をとることもある。おみくじを引く芸をする小鳥として古くから一般に知られている。伊豆諸島にはより大型で茶系の濃い色彩をした亜種オーストンヤマガラ(Parus varius owstoni)が生息している。
■ヒガラ
全長11cmとカラ類の中でも最小の部類。屋久島以北の全国に生息するが、特に亜高山帯の針葉樹林に多い。冠羽があり頭頂はとがって見える。囀りは「ツピツピツピツピ・・・」と非常に早口。カラ類の中では珍しく一部は渡りを行い、小群で渡ることもある。離島では春秋の渡りのシーズン、特に晩秋11月頃に観察されることが多い。
■キバラガラ
中国のごく狭い地域にのみ生息する種類。朝鮮半島でも近年ようやく記録されるようになった。国内では2009年11月福岡市東区三苫(標識放鳥)、2010年4月石川県舳倉島それまでこの2件の記録しかなかったが、2012年冬西日本、九州を中心に爆発的に記録が増加した。九州内だけでも各地であわせて20個体ちかくの記録があり、さらに春の渡りでは日本海側の複数の離島で観察されている。個人的にも大濠公園、春日公園、筑前相島、山口県見島(情報画像)、新潟県佐渡島(弾崎)で観察した。春日公園の個体は発見当初はカラ類の混群中にいたが、その後シジュウカラと行動を共にするようになり、最後は単独で行動していた。筑前相島、山口県見島の個体は単独、佐渡の個体はヒガラの小群(10羽程度)と行動していた。(巻頭イラスト及び解説参照)
■シジュウカラ
1979年6月 シジュウカラ雄成鳥
壁際の天井に張り付いたクモ。足場もなく、これ以上近づけない。さあ、どうする?
長野県軽井沢 Field Noteから転記
カラ類は頭がよく、好奇心も旺盛なため、自然界の中でも注意深く観察しているとたいへん面白い行動を採ります。皆さんもご存知でしょう。餌を行儀よく?両足で挟んでつついたり、樹木の幹に垂直にとまったり、貯食行動をとったり etc. ・・・。
ここで以前私が観察したたいへんクレバーなシジュウカラ雄成鳥を紹介します。
でした。誰に習った訳でもないのに驚きでした!
シジュウカラはシジュウカラ、アマミシジュウカラ、オキナワシジュウカラ、イシガキシジュウカラの4亜種が知られています。南方の亜種になるほど、黒い部分の範囲が増えます。特にイシガキシジュウカラはモノクロで全体に黒味が強く、頬の白斑などはとても小さくなります。
■ルリガラ
国内では1987年11月北海道利尻島で唯一の記録がある。雌雄同色、白と青色を基調とした大きく美しいカラ類。もともとは渡りをしない種類なので今後の記録増加はあまり見込めないと思われる。
終わりに
※ピッシング pishing 歯と舌の隙間から「ピシーッ」という音を出すこと。カラ類、エンベリザ(ホオジロ科の小鳥)、大型ツグミ類などを呼び寄せたり、興味を持たせたりするのに効果がある。
参考文献
(2015-02-12掲載)
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