クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2017-11-21

独断と偏見の識別講座Ⅱ

波多野邦彦

総目次

第24回 Ural Owl <フクロウ>

フクロウ雄成鳥

1999年5月 フクロウ雄成鳥
イラストのように上を向いているとタレ目で優しい顔、逆に見下ろすとツリ目でとてもキツイ顔に見えます。巣穴の入り口でじっと見張りをする雄成鳥個体。北部九州では体色は本州のものと変わらず白っぽい個体がほとんど。国内では4亜種が知られています。

築上郡大平村 Field Noteから

転勤族だった私は、大分県中津市に6年近く住んでいたことがあります。福沢諭吉邸の近く、古くからの閑静な住宅街の一角でした。中津市や周辺の市町村は自然に恵まれ里山の環境がたくさん残る地域です。鎮守の森(寺社林)が点在する水田地帯。こんもりとした森がいくつもあります。夜間営業で回っていた時、ある森でフクロウの声を聞きました。場所だけ確認しておき、週末に捜索。150本程度の木立がある小さな森です。1本1本丁寧に探していきます。すべてくまなく調べましたが見つかりません。5月といってももう初夏。暑さでくたびれてしまいました。森に隣接した小さな木造の公民館。軒下に座り込んで休憩します。冷えたお茶を飲みながら流れる汗を拭いて「フッ」と見上げた4mほどの高さの樹上から、こちらを静かに見下ろしていました。途中から朽ち折れ、樹洞にからだがすっぽりと入る太さのクヌギの老木でした。イラストのように上を向いているとタレ目でとてもかわいい顔をしています。逆に下を向くと目が釣り上がり非常にキツイ顔付きになります。能面の傾きや陰影による表情効果と同じようなものかもしれません。この後、2年程ここで繁殖し姿を消しました。

フクロウは九州北部から北海道にかけて留鳥として生息しています。里山を代表する鳥類の一種です。全長約50センチ雌雄同色でミミズクのような羽角はありません。ハート型の顔盤で暗褐色の縁取りがあります。上面は灰褐色で複雑な模様があり、下面は淡色の地に褐色または黒褐色の縦斑が密にあります。虹彩は暗色。脚および足指は白い羽毛で覆われています。亜種は北から北海道にエゾフクロウ、本州北部にフクロウ、本州北部・中部にモミヤマフクロウ、本州中部から九州・四国・伊豆諸島にキュウシュウフクロウが分布していますが、エゾフクロウ以外は分布状況が不明確なようです。体色も北方のエゾフクロウは非常に白っぽく、南方に生息するものほど色彩が濃くなるといわれていますが、これまで九州北部で観察した個体は、褐色味が強いキュウシュウフクロウの体色には当てはまらず、ほとんどが今回のイラストのようにずっと薄い体色をしていました。

声は繁殖期に低い音質で「オッ、ホー。・・・オロッホオッホー」と鳴き、雌雄で鳴き交わす声もよく聞かれます。頻度は落ちますが、繁殖期以外にも一年を通してこの声は聞かれます。また「ギャーッ」「キャー」「ウオッ、ウオッ、ウオッ、ウオッ」「フーウウウウ」頻繁に様々な声を出します。

フクロウ巣立ちヒナ

1999年5月 フクロウ巣立ちヒナ
巨木の頂上付近の枝でじっとこちらを見ていた。

築上郡大平村 Field Noteから

当時自宅からも近かったためしばらく観察していたフクロウですが、ある日巨木の樹冠に近いところで巣立ちビナ1羽を発見しました。やはり繁殖していました。既に親鳥の2/3程度の大きさ。全身羽毛というよりも暖かそうな羊毛の様な産毛に覆われています。やや灰褐色味のある生成り。まるで厚手のカウチンセーターを着ているようです。大雨覆い、次列風切は茶褐色。尾羽は確認できず。アイリングは濃ピンク。顔板が未発達なためか、嘴は大きく裸出しています。薄いレモン色で基部はピンク色。爪は黒色。ほとんど動かずじっとしています。近くに親鳥がいるはずですが、見つけることはできませんでした。思いがけずヒナを見つけてしまったため、長居は無用、2〜3分ほどですぐに現場を立ち去りました。観察できたのはたった1羽だけでしたが、他にも兄弟がいたのかもしれません。大きな道路が新設され、周囲の状況は大きく変わりつつあります。このヒナが無事に育ってくれることを願わずにはいられませんでした。

フクロウ成鳥

1996年12月 フクロウ成鳥
よく見るとバンの若鳥の頭が!愛嬌のあるフクロウ類もやはり猛禽の一種!翼は幅広で長い。
この個体も淡色系の薄い体色をしている。

大分県中津市 Field Noteから

小春日和の早朝、いつもの探鳥コースを独り歩いていると、突然「ギャーッ!」という大きな悲鳴がしました。湿地に隣接したとても静かな明るい林の中の小道。人の様なあまりの大声にこちらがびっくりしてしまいました。何事かと思い、声の方向に歩いていくと、一羽のフクロウが目の前を通り過ぎます。重そうに羽ばたくのでよく見ると何か足でつかんでいます。バンの若鳥が首をブラブラさせていました。さっきの悲鳴は・・・。ネズミばかりでなく、こんな大きな獲物も獲るんだ、フクロウとは言え、やはり猛禽だなと改めて考えさせられた年の瀬でした!!

最後に

  • フクロウ、ミゾゴイ、オオタカ、サシバ、ヤマシギなどが生息する地域は人と自然が共存できている里山やそれに近い環境が残った場所で、様々な動植物を観察することができます。自宅周辺では鳥類は100種以上、それ以外に哺乳類もこれまでイノシシ、タヌキ、ノウサギ、モグラ、トガリネズミ?、アカネズミ、ハタネズミ、アナグマ、キツネ、コウモリ類、サルなどを観察しています。いったいどんな場所?と思われるかもしれませんが、気付かないだけで皆さんの周りにも実際には様々な生き物が生息しているかもしれません。
  • 私もいつの間にか壮年の仲間入り、健康(体重?)維持のためランニングを続けています。自宅周辺水田地帯の小川に沿ったコース。伴走は、カワセミ、キセキレイ、セグロセキレイ、夏はサシバ、ホトトギス、冬はノスリ、チョウゲンボウ、モズなどが常連です。さすがに双眼鏡は無く肉眼ですが、季節を感じながら、探鳥しながらのランはとても気分よくあっという間にフィニッシュします。
  • 最後になりますが、この「独断と偏見の識別講座Ⅱ」も早いもので、今回で掲載開始まる2年を迎えることができました。第1回アクシピターを書いたのがつい先日のようです。ここまで来ることができましたのもひとえに筑豊支部やその他の読者の皆様からの温かいご支援のおかげです。始めた当初は不定期掲載でいつ終わってもいいようになどと考えていましたが、最近ではせっかく続けてきたのだからと考え方も少し変わってきました。どこまでできるかわかりませんが、今後ともこの識別講座をよろしくお願いいたします。

参考文献

  • BIRDS OF EAST ASIA: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON AND OXFORD
  • Collins BIRD GUIDE The Most Complete Field Guide To The Birds of Britain and Europe: HarperCollins Publishers Ltd
  • A Guide to the Birds of Southeast Asia CRAIG ROBSON: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON,New Jersey
  • 決定版日本の野鳥650 真木広造 大西敏一 五百澤日丸 (株)平凡社
  • 夏の夜にフクロウが鳴く BIRDER 1993年8月号 文一総合出版
  • 冬、フクロウ類を探しに行こう BIRDER 2001年11月号 文一総合出版

2015-03-12掲載

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