クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2017-09-21

独断と偏見の識別講座Ⅱ

波多野邦彦

総目次

第25回 Bittern、Egret、Heron <サギ類Ⅰ>

1999年5月 カラシラサギ成鳥夏羽

翼を半分閉じた状態で体を左右に傾けながら走り回り魚などを採ります。春は冠羽や胸などの飾り羽が長く伸び、たいへん美しいサギです。

長崎県対馬市 Field Noteから転記

春秋の渡りの時期や初夏(春の遅い渡り)などに九州では少数ですが比較的ふつうに見られます。コサギとほぼ同大。成鳥夏羽は後頭部の冠羽、胸や背の飾り羽、青緑色の眼先、黄色く長いくちばし、黒い跗蹠、黄色の趾などが非常に美しいサギです。イラストのように翼を半開きにして体を左右に傾けて走り回る採餌方法は特徴があります。秋の幼羽や冬羽の場合は、嘴が暗色で脚の色も灰緑色などの不明瞭な色彩で、コサギやクロサギ(白色型)によく似ていて識別が難しくなります。日本国内ではそれほど珍しい種類ではありませんが、地理的に見るとカラシラサギは朝鮮半島北西部の一部、中国南東部だけで繁殖する世界的希少種です。

今回はサギ類の中でも身近で一般的に白鷺と呼ばれる仲間のアオサギ、ムラサキサギ、ダイサギ、チュウサギ、コサギ、アマサギ、クロサギ、そしてカラシラサギについてご紹介したいと思います。

真夏!5月〜7月上旬の夏鳥繁殖の最盛期を過ぎ、小鳥の囀りもあまり聞かれなくなってから8月お盆頃のムシクイ類やシギチドリ類の早い渡りが始まるまで、皆さんはどんなふうに過ごされているでしょうか? 実はこのクソ暑い(失礼)時期こそ、サギ類をしっかりと観察する良い機会なのです。珍鳥があまり出ない時期なので情報に振り回されることもありません。車中でじっとりと汗をかきながら、落ち着いてサギ類を観察してみるのもいいかもしれません。

■アオサギ

1979年8月 アオサギ成鳥・婚姻色

ゆったりと飛んでいたアオサギが突風に反転した。

全国に分布する。北海道では夏鳥、奄美諸島以南では冬鳥。国内サギ類中最大。目の上から後頭に太い黒線があり、冠羽が伸びる。初列・次列風切、初列雨覆、小翼羽の一部が灰黒色。嘴・足は橙色、目先は淡黄色だが、婚姻色では嘴基部・足は赤味が強くなり、目先は青紫色になる。小春日和に翼を半開きにし、日光に虫干ししている姿をよく見かける。この時はすぐ頭上低空を、十数羽が編隊を組んで悠々と飛翔して行った。飛去後、大先輩が小先輩に「今の何だった?」当たり前のように「タンチョウでしょ!」

思い込みは怖い!

北海道春国岱 Field Noteから転記

どう見ても青く見えないのになぜアオサギという名前なのか?納得のいかないまま、モヤモヤ感の抜けない方も多いと思います。名前の由来ほど不確かではっきりしないものはありません。ある説をご紹介します。アオサギの「アオ」は「青」ではなくて「蒼」であるというもの。「蒼」はくすんだ青、または灰色がかった青という意味があるそうです。中国語でもアオサギは「蒼鷺」と書くようで、少し納得? 一方、英名では「Grey Heron」灰色鷺、ストレートでとてもわかり易いです。どこか情緒的な名前をつけるのは東洋系民族の特質でしょうか。鳶色(とびいろ・赤味のある暗い茶褐色)、鴇色<朱鷺色>(ときいろ・紫に近い淡いピンク)、鶯色(うぐいすいろ・本来は灰色味のある緑褐色)、濡烏(ぬれがらす・黒く青味のある色)など、鳥の名前を使った色はまだまだたくさんあります。最後の濡烏は日本女性の黒髪の美しさを表したものだそうです。今では死語かな?「鳥名色」興味のある方は調べてみると面白いかも!

■ムラサキサギ

2011年7月 ムラサキサギ成鳥

九州では旅鳥や冬鳥、まれに夏鳥としてしばしば観察される。

福津市 Field Noteから

南西諸島では留鳥として生息しており、沖縄以北、その他の地域では渡りの時期に旅鳥や迷鳥として観察される。西日本や九州本土では見られる頻度は比較的高く、通常は冬鳥として、また春秋の渡りの時期にも出現する。少ないが夏にも観察されるケースがある。右イラストの成鳥は1か月以上滞在した。アオサギよりもやや小さくスマート。嘴・頸、胴体はより細い。頸から上がなんとなく爬虫類のヘビのような印象を受けるのは自分だけ?雌雄同色。額・頭頂・後頸・側頸は黒い。頸全体は濃いオレンジ色。嘴は黄褐色で長く、上辺が暗色。足も黄褐色だが、跗蹠前縁と足指は暗色。婚姻色では赤味を増す。幼鳥は冠羽無く、色彩も成鳥にくらべぼんやりとした淡褐色で地味な感じ。南西諸島に行くと畑・水田・草原などで餌を探しながらじっと佇んでいる姿をよく見かける。昆虫、両生類、爬虫類、鳥類、小型哺乳類など何でも捕食する。

(オオ)ダイサギ A. a. alba とチュウダイサギ A. a. modesta 比較表

亜 種大きさ嘴・目先の色足の色その他
(オオ)ダイサギ

A. a. alba

アオサギと同大かやや大きい・夏羽嘴黄色で黒味あり、目先やや緑
・冬羽、嘴・目先黄色
・脛・跗蹠淡黄色
・冬羽、脛・跗蹠淡黄色
通常冬鳥と言われているが、冬期以外にもしばしば観察されている。
(チュウ)ダイサギ

A. a. modesta

アオサギよりもひとまわり小さい・婚姻色・嘴黒い
・〃 目先・青緑
・冬羽、嘴・目先黄色
・婚姻色、脛赤い 跗蹠黒
・冬羽、脛・跗蹠 黒色
国内で繁殖する。九州では冬も観察される。

■チュウサギ

夏鳥として全国に渡ってきます。皆さん意外とこのチュウサギとダイサギ(チュウダイサギ)との識別が難しいようです。夏羽は嘴が黒く目先は黄色。冬羽の嘴は黄色で先端に暗色部分があります。ダイサギ(亜種チュウダイサギ)も目先が黄色で同じような色彩をしたものがいます。初夏7月も下旬になると巣立った幼鳥がたくさん見られるようになります。ダイサギ(亜種チュウダイサギ)の幼鳥はからだもそれほど大きくなく、嘴が黄色くまだ短めで先端に暗色部があり、チュウサギによく似ています。ぱっと見だけでは判断に迷うケースが多いのでこの時期は注意が必要です。口角の位置、頭の形や首や脚の長さなど総合的な判断が必要です。

■コサギ

留鳥として本州以南に分布する。地元津屋崎で一年を通して観察すると、夏季は他の地域(繁殖地?)へ移動しているようで、個体数が減少します。白鷺の中で一年中、嘴が黒いのはこのコサギだけです。夏羽は後頭に長い冠羽が出ます。足は黒く趾は黄色。目先・虹彩は淡黄色。婚姻色では目先および趾は赤くなります。冬羽では冠羽はなく、下嘴がやや淡色になります。幼鳥は足が淡青緑色で嘴も黒味が少ない色彩です。幼鳥はカラシラサギの幼鳥に似ており注意が必要です。

■アマサギ

世界中に広く分布するのがこのアマサギです。アフリカの映像などで水浴びをするカバや水牛、ゾウの背中などに乗っかっているものと同じです。夏鳥として本州以北に飛来します。九州以南では越冬している個体がいますので注意が必要です。俗に言うシラサギ類の中では最も小型です。頸や足が短く寸詰まりの体型です。嘴は一年中黄色。足は指先まで黒です。成鳥夏羽では頭・頸・胸・背の飾り羽などがオレンジ色になります。婚姻色では嘴基部や脚が濃いピンク色になります。

■クロサギ

本土側であれば問題はないのですが、南西諸島等南方の島々に行った場合は注意が必要になります。黒いクロサギよりも白いクロサギの方がはるかにたくさんいるからです。嘴、頸、脚がやや太めでほんの少し短く、ずんぐりとした体型です。また幼鳥には黒い斑のある個体もたまに観察されます。(独断と偏見の識別講座No.19 Variationイラスト及び解説参照)

■カラシラサギ

巻頭文章及びイラスト参照

終わりに

  • サギ類は種類が多いため数回に分けてご紹介していきます。
    他の小鳥類に比べると、サギ類は体が大きく、動作もゆっくりとしているので、比較的観察しやすい対象です。1年中観察できる種類もいますので、初心者の方などが野鳥観察を始めるのに適した種類だと思います。今回はサギ類の中でも身近なものを選んでみました。いかがでしたでしょうか?
  • サギ類は婚姻色、櫛爪、粉綿羽(ふんめんう)、飾り羽、ユニークな採餌行動など面白い習性や特徴を持った種類が多く、バードウォッチングの対象として十分に楽しむことができます。
  • サギ類に対しては雛が裸で可愛くない、目つきや顔つきがよくない、行動が気持ち悪い、雰囲気が暗いなどあまり良いイメージを持たないように思いますが、今後様々な種類を紹介していきます。無理にとは言いませんが、ぜひサギ類に興味をもっていただきたいと思います!!

参考文献

  • BIRDS OF EAST ASIA: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON AND OXFORD
  • Collins BIRD GUIDE The Most Complete Field Guide To The Birds of Britain and Europe: HarperCollins Publishers Ltd
  • フィールドガイド 日本の野鳥 高野伸二著 1988年5月10日 初版第10刷発行 (公財)日本野鳥の会
  • A Guide to the Birds of Southeast Asia CRAIG ROBSON: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON,New Jersey
  • 決定版 日本の野鳥650 真木広造 大西敏一 五百澤日丸 (株)平凡社

2015-04-10掲載

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