クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2017-11-21

独断と偏見の識別講座Ⅱ

波多野邦彦

総目次

第26回 Luscinia Ⅰ <ノゴマ属Ⅰ>

2001年5月 シマゴマ第1回夏羽

やや立ち姿勢を保ち地上で餌を探す。上面の褐色部分の赤味の強弱や胸脇腹のうろこ模様の大小には個体差がある。うろこ模様はイラストのような大きなものからグレー一色の無斑のものまで様々。腰・上尾筒・尾の部分に赤味が強く出るのが識別ポイント。国内初記録も山口県内。

萩市見島 Field Noteから

山口県見島は萩市の北北西45km沖合いの日本海に浮かぶ離島です。今から約40数年前に日本野鳥の会北九州支部の精鋭メンバーの方々により探鳥地として開拓されました。現在は国内有数の渡りの中継地として全国的に名前が知られるようになりました。私も初めての渡島から30年近くになります。

2001年5月のある朝、いたる所で多数のシマゴマが一斉に囀り始めました。夜のうちに島内に大きな群れが入ったようです。観察するため見通しが効く大きなブッシュの中で林床に静かに座っていると、3〜4羽のシマゴマが次第に近づいてきて自分の周囲の地面で餌を採り始めました。

長距離の渡りで余程疲れて空腹なのか、こちらは全く気にも留めずに一心不乱に落ち葉の中の昆虫を漁ります。思ったよりも立ち姿勢です。どんどん寄って来て手が届きそうな所で愛嬌をふりまきます。よく見ると体上面の赤味や胸のウロコ模様が一羽一羽違います。ウロコ模様は非常に大きなものから灰色で無斑に近いものまで様々です。腰から上尾筒にかけて赤味が強く出ています。「ヒルルルルルルrrr、ヒルルルルルルrrr」一本調子で尻下がりの少しもの悲しげな囀りが聞こえてくる中、至福の時間を独占することができました。

ノゴマ属の小鳥にはノゴマ、コマドリ、アカヒゲ、ルリビタキ、コルリ、シマゴマ、オガワコマドリがいます。ほぼ13〜16cmの大きさの仲間です。この仲間の特徴は体長に比較して脚が長く、地上生活に適したスタイルをしていることです。また体を比較的水平に保っていることが多いようです。模様や色彩が美しいのですが、ブッシュや藪の中に潜航する性質のため、なかなかゆっくりと姿を現してくれません。囀りや地鳴きで判断するケースもしばしばあります。またどの種類も美しい囀りを持っています。今回はこの中でシマゴマ、オガワコマドリ、コルリをご紹介したいと思います。

■オガワコマドリ

2009年3月 オガワコマドリ雄第1回冬羽

この個体も4月に入ると次第に上胸の青い部分が拡がって最後には喉全体を覆い中央にはオレンジ色の斑が出てきた。

福岡市西区今津 Field Noteから

オガワコマドリ、いつ聞いてもとてもきれいな名前だと思います。英名Bluethroat(蒼い喉)も余計なものが無くて洒落ています。名前の通り水に依存した生息環境を好み、クリークや池の周り、湿地のアシ原などに生息します。第1回冬羽は喉の模様と色彩で雌雄を判断します。晩秋に発見されたこの個体は当初薄暗く細い側溝の底部泥質土の上でよく採餌していました。暗くて細かい部分までよく見えないのですが、ときどき胸を張り直立した姿勢を取るため、シルエットだけでもオガワコマドリだと確認することができました。この個体も無事越冬し、4月に入ると美しい夏羽に変わりその後渡去しました。

今津では過去に越冬した記録もありますが、その時はブタ小屋脇の藪に覆われた暗い溝で採餌することが多く、猛烈な臭いを我慢しながらの観察だったようです。顔や喉の色彩・模様が特徴的で見間違える可能性は低いと思われますが、併せて尾基部両側のオレンジ色まで確認すれば識別の確実性が高まります。

■コルリ

2014年8月 コルリ♂第1回冬羽

顔や胸・腹などは一見雌のようですが、背・雨覆いは美しいコバルトブルーをしています。やや暗い林道。目の前で落ち葉の中を探り採餌を繰り返します。8月夏の盛りまだ蒸し暑いうちから秋の渡りが始まっています。春も早いですが、秋の渡りでも時期的には盛夏〜晩夏の早い時期に渡っていきます。このコルリも見るのが難しいとよく言われますが、上手くアプローチすれば美しい姿を現してくれます。残念ながら、大人数の探鳥会などで渡りの個体を観察することはほとんど不可能に近いと思われます。

福津市 Field Noteから

例年春4月上旬、順番的にはコマドリの次に東南アジアから日本に渡ってきます。「チッチッチッチッ」という前奏の後に「チーッジョイジョイジョイジョイ」(後半バリエーションあり)と声量のある声で囀ります。地鳴きは「カッ」。落葉広葉樹林や針広混交林などの明るい林の低層に好んで生息します。雄はオオルリとはまた違った清楚な青色をしています。イラストは雄第1回冬羽。しばしば尾を打ち下ろす行動が観察されます。雌は体上面がオリーブ褐色で腰の部分に青味があります。腮から喉、上胸にかけて黄色味が強く細かなウロコ模様が見られ、この部分がコルリの識別ポイントのひとつになっています。春は4中旬の早い時期にやって来ますが、秋も8月中旬から9月上旬のまだ暑い時期に渡って行きます。蒸し暑さに汗を流しながらさらに暗い林の中で蚊に刺されながら観察しなければならないのが泣き所です。

終わりに

  • ノゴマ属の仲間は潜行性が強いため、通常は見たくてもブッシュの中から声がきこえるばかりでなかなか簡単にはその姿を現してくれません。一方、そういったところがかえって魅力的な種類です。福岡市内では動植物園のあるM公園が渡り鳥の観察ポイントとして有名。下草がきれいに清掃されていて、地上性の小鳥も簡単に見ることができるため、多くのカメラマンが通っています。都会の中のオアシス的性格もあり、その他渡り途中の小鳥類も数多くここに立ち寄ります。春になるとコルリ、コマドリ、ノゴマ、シマゴマ等のきれいな写真がHPやブログに次々とアップされます。薄暗い場所を好む鳥の撮影には適したところなのでしょう!
  • 山口県萩市見島も近年は国内メジャーの探鳥地になり渡りのシーズンには数多くのバードウォッチャーやカメラマン達が来島します。初心者の方や島の探鳥未経験者の割合が増加しているのも近年の傾向のような気がします。ここ見島や舳倉島、対馬、飛島など日本海側の島は珍しいものなら何でも出現すると安易な考えをお持ちの方も多いようです。こちらも珍鳥の識別をする前に情報の真贋を見極めなければなりません。

    私が体験した見島での過去の出来事です。珍しいシギがいるのでぜひ見てほしいと頼まれ、一面識もない方でしたが無下に断る訳にもいかず、今来た道を引き返して見に行きました。当時は勿論「歩き」が基本の時代です。スコープを覗くとごく普通のアオアシシギでしたが、丁寧に説明しても全く聞く耳を持たず結局納得していただけませんでした。どうも本人はカラフトアオアシシギにしたかったようです。かなりの時間を無駄にしてしまいましたが、侘びの一言も一切なし、しかもこの方は中年の女性です。島の鳥を見に行こうと考えている方は、他の方に迷惑をかけないよう島での鳥の見方や過去の実績などについて最低限の事前勉強をお願いします。当然のことですが、その前に礼儀やマナーの勉強は必要でしょうね!

参考文献

  • BIRDS OF EAST ASIA: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON AND OXFORD
  • Collins BIRD GUIDE The Most Complete Field Guide To The Birds of Britain and Europe: HarperCollins Publishers Ltd
  • フィールドガイド 日本の野鳥 高野伸二著 1988年5月10日 初版第10刷発行 財)日本野鳥の会
  • A Guide to the Birds of Southeast Asia CRAIG ROBSON: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON,New Jersey
  • 決定版 日本の野鳥650 真木広造 大西敏一 五百澤日丸 兜ス凡社

2015-05-20掲載

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