波多野邦彦
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第27回 Larks Ⅰ <ヒバリ類Ⅰ>
2004年11月 コヒバリ成鳥冬羽 新宮町
Field Noteから
脱色と摩耗が進み、バフ色といってもかなり白っぽい個体。最もよく似ているヒメコウテンシとの識別ポイントは、嘴の形状、初列風切の突出状況、胸の斑、後趾爪の形状など。この個体は、典型的なコヒバリにしては嘴が僅かに長く大きめだが、嘴峰の形状はヒメコウテンシと明らかに違い丸みが強く出ていた。三列風切羽縁はかなり擦れていたが、それを考慮しても暗褐色の初列風切がしっかりと4枚目程度まで見えていたのでコヒバリで問題ないと考える。胸の斑は細かい縦斑でヒメコウテンシのような首両脇の斑にはならない。後趾爪は趾よりも短く湾曲する。警戒して背筋を伸ばしたときは短い冠羽を立てる。行動は敏捷で雑草の種子を食べながらせわしなく動き回る。ヒメコウテンシに比べ小さくややコロッとした体型。非常に深い波状形を描いて飛び、飛翔中の声質は澄んだ「チュイィーン、チュイィーン」だった。
今回はコヒバリ、ヒバリ、ハマヒバリ、そしてタイワンヒバリについてお話したいと思います。他にもヒメコウテンシ、クビワコウテンシ、また過去には北海道でコウテンシも記録されていますがこれらはまた別の機会にご紹介したいと思います。
■ヒバリ
2013年2月 ヒバリ成鳥
<亜種不明>詳細な顔の模様、嘴の形状、初列の突出度、胸脇腹の色彩、背・腰の色彩、後趾の爪の形状などヒバリの各部の状況を正確に言える方はなかなかいらっしゃらないと思います。ヒバリはヒバリ科の野鳥を観察する時の基本形。詳細な部分までしっかりと覚えておくことが大切です。地元津屋崎では冬期、明らかにひとまわり大きな個体が増加します。
津屋崎 Field Noteから
最も目立つ冠羽に目が行きがちですが、過眼線が無く目の周囲がぐるりと淡色なこと、眉斑が耳羽の外周と繋がっていること、嘴は尖りやや長いこと、顎線はほとんど無いこと、特徴的な肩羽の色彩、初列突出度合、冠羽を寝せたところなどヒバリのパターンは基本型としてよく覚えておく必要があります。1年を通して見ても色彩が変化します。地元では冬期ヒバリが増加します。通常いるヒバリよりも明らかにからだがひとまわり大きく太っています。「ビュルッ、ビュルッ」声も野太い感じです。ヒバリにはオオヒバリやカラフトチュウヒバリなどの別亜種が知られていますが、私は勉強不足のため外見上の違いはわかりません。過去に日本海側の離島でマミジロタヒバリとほぼ同大の冠羽の無い大きなヒバリ類を観察したことがあります。
■ハマヒバリ
2013年11月 ハマヒバリ雄成鳥冬羽
これも西日本や九州ではなかなか見られない種類。黄色と黒色の顔の模様は特徴的。上胸中央の下から湧き上がる模様は他亜種との識別で役立つ。
長崎県対馬市 Field Noteから
観察場所は小さな漁村のはずれにあるゲートボール場。枯れた短い芝と砂地。タヒバリ20羽程の群れと行動を共にしていました。よく肥えておりタヒバリよりも一回り大きく見えます。上面の褐色部分には僅かにピンク色味があり、暖かい印象を与えます。体を丸く姿勢を低くして、ごく僅か少しずつちょこちょこと這いまわります。黄色の顔は曇天下思ったよりも目立たず、特に枯れた芝の葉先と重なると黄色と黒の特異な顔のパターンは完全な保護色となり輪郭を消してしまいます。西日本への飛来は数少なく、特に九州ではなかなか見られません。今回、対馬のバーダーの方々の協力を得てようやく夢が叶った瞬間でした!寒かった!
■コヒバリ
旅鳥または冬鳥として飛来しますが、ヒメコウテンシに比べ個体数はずっと少ないです。コヒバリに最も酷似するのはヒメコウテンシで両種の差を識別ポイントとして覚える必要があります。コヒバリはヒメコウテンシに比べ、体が小さくコロッとした印象、嘴に丸味があり短小、胸は細かな縦斑、畳んだ翼の初列風切が三列風切を越えはっきりと確認できることなどがポイントになります。
■タイワンヒバリ
1996年3月、1997年2月、2003年2月沖縄県与那国島、1999年11月沖縄県金武町などに記録がある。ヒバリよりもやや小さい。冠羽は短く、足・尾も短い。初列風切の突出は短い。次列風切後縁はヒバリのように白色ではなく、褐色など。識別には注意を要する。
終わりに
参考文献
2015-06-18掲載
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