波多野邦彦
総目次
第28回 Pigeons & DovesⅠ <ハト類Ⅰ>
2009年9月 アカガシラカラスバト
Columba janthina nitens
暗い林の中、道路沿いのガジュマルの木で一心不乱に好物の房になった実を貪る。警戒心はほとんど無く、慌てて逃げることもない。からだには緑、青、紫色の光沢があり、頭は特に濃いピンク色が目立つ。アカガシラの名の由来だ。最も個体数が多く生息する母島でも20羽程度、つまり世界中でも30羽弱しかいないことになる。過去にはより大型のオガサワラカラスバトが生息していたが、1889年9月媒島での1羽採集を最後に絶滅したと考えられている。
Field Noteから 東京都小笠原・母島
人生初めての小笠原・硫黄島3島ツアー。目標の一つが小笠原の固有種、固有亜種を全て制覇することでした。オガサワラミズナギドリ、オガサワラノスリ、オガサワラハシナガウグイス、アカガシラカラスバト、メグロ、オガサワラ(イオウトウ)メジロ、オガサワラヒヨドリ、オガサワラカワラヒワ。この中で最も難しかったのは、オガサワラカワラヒワでこの時は自分だけが運よく2羽を見ることができました。さらに予想もしていなかったオガサワラヒメミズナギドリに幸運にも遭遇できました<第8回Shearwaters参照>。2009年9月時点でアカガシラカラスバトは母島20羽程度、父島6羽(弟島不明)程度が確認されていました。母島でも生息場所は北部に限られており、ツアー客の中でも熱い気持ちで車を独自にチャーターしチャレンジしたメンバー達だけが幸運を享受することができました!
日本で確認されたハト類は、現在のところヒメモリバト、カラスバト、キジバト、シラコバト、ベニバト、キンバト、アオバト、ズアカアオバト、クロアゴヒメアオバト、そしてカノコバトの10種類です。そのうち今回は最も大型のカラスバトと最小の部類に入るキンバトについてご紹介します。
■カラスバト
世界的に見て非常に限定された範囲、日本と朝鮮半島南部および済州島、鬱陵島だけに分布する。離島で観察されることがほとんどだが、海に近接した陸地側でも稀に観察される。小笠原諸島・硫黄列島に亜種アカガシラカラスバト Columba janthina nitens、先島諸島に亜種ヨナグニカラスバト C. j. stejnegeri、その他に亜種カラスバト C. j. janthinaが分布している。亜種アカガシラカラスバトは亜種カラスバトに比べやや小型、亜種ヨナグニカラスバトは体色がやや薄いと言われている。全長は約40cm、頸が長く、頭が小さく見える。低く太い声でウーッ、ウーッと唸るように鳴く。常緑広葉樹林に好んで生息し、樹上を低く比較的ゆったりとしたはばたきで飛翔する姿をよく観察する。主な食料は樹木の果実で、地上に落ちたものを採餌する機会が多いため、肉食哺乳類などの天敵が少ない離島に生息しているという説もある。
■キンバト
1980年3月 キンバト♂成鳥
全長だけならヒヨドリよりも小さい。緑色の金属光沢が美しいハト。常緑広葉樹林のやや暗い林を好む。プッウーッと小さな声で唸る。国内では先島諸島だけに留鳥として生息する。渡りはしない種類なので、見たい人は現地に行くしかない。当時、石垣島―与那国島間、南西航空のかわいいプロペラ機の名前が「きんばと」だった。
石垣島名蔵 Field Noteから転記
第16回 Rails and Crakes <クイナ類>でご紹介した常緑広葉樹の林に囲まれた石垣島竹島農園再登場。庭に撒かれたニワトリの餌にキンバトが集まってきます。周囲のジャングルの中からバラバラと降るように湧いてきます。目にも鮮やかなエメラルドグリーンの雨覆いと濃いピンクのからだが美しい小さなハトです。世界的には東南アジア地域に広く生息しています。日本では先島諸島だけに留鳥として分布。オスは額・眉斑、雨覆い前縁が白色。下背・腰に特徴的な2本の白帯があります。嘴は半透明の赤い蝋(ろう)でできたような色彩です。眼瞼輪(がんけんりん)と足も赤色です。雌は雄に比べ色彩のコントラストが弱くやや地味で、幼鳥は全体的に褐色味があります。
終わりに
参考文献
2015-07-10掲載
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