波多野邦彦
総目次
第30回 Waders Ⅰ Tringa <シギチドリ類Ⅰ・クサシギ属>
1998年5月 キアシシギ第1回夏羽
満潮時、岸壁の狭い出っ張りに群れが休む。脚、趾が角度良く順光できれいに見え、とびきり鮮やかな黄色の美脚にハッとさせられました!淡肉色の嘴基部、胸・腹中央は無斑です。跗蹠後面の模様ははしご状で、細かな鱗状のメリケンキアシシギと異なるポイントです。クサシギ属のシギの仲間はお尻を上下に振る特徴があります。地味な中にも控えめなワンポイントの華やかさがあり、また胴が長く足が短めなところなど、個人的にはとても日本人好みの?シギだと思ってしまいます。
中津市今津干拓 Field Noteから転記
春秋の旅鳥として全国の干潟や河口に飛来し、完全な砂地よりもやや岩場のある海岸を好みます。翼やからだ上面はほぼ一様な灰褐色。上胸・脇腹に不規則な横縞が入ります。翼下面は一様に暗灰褐色。目立った翼帯もなく、あまり特徴が無いのがこの鳥の特徴だということもできます。過眼線は黒色、下嘴基部は淡肉色。メリケンキアシシギとの識別の際に使う識別ポイントのひとつ、鼻孔の前にある溝は嘴の1/2程度です(メリケンキアシシギでは2/3まで溝が伸びる)。夏羽では上胸や脇腹に明瞭な横斑がありますが、下胸・腹中央や下尾筒は白色です。幼鳥の上面は淡い灰色で小さな白斑が点在します。大きく違うのは鳴き声。「ピューィー」と尻上がりの良く通る大きな声で鳴きます。声で存在に気づくこともよくあります。一見地味ですがスッキリとした色彩のとても美しいシギだということに気づきます。
クサシギ属(Tringa)には多くの種類がいます。今回はキアシシギ、メリケンキアシシギについてお話したいと思います。これら2種の色彩はどちらかと言うと地味な方ですが、細かく観察するととても味わいのある色彩をしています。キアシシギはとても身近な種類ですので、夏羽、冬羽、成鳥羽、幼羽などそれぞれの段階の羽衣を注意深く観察するように心がけましょう。メリケンキアシシギは後述のように観察できる地域が限定されています。
■メリケンキアシシギ
1982年5月 メリケンキアシシギ成鳥夏羽
伊豆諸島のひとつ三宅島ではこの時期毎年定期的に観察できた。岩場に居ることが多く、数羽の小群で生息する。慣れてくると顔付き、嘴の色・長さ・形状、上面の色彩などで、キアシシギと区別できるようになる。色彩には個体差があり、模様の薄い個体などは両種との識別に注意を要する場合もある。生息地域は主に関東太平洋岸、伊豆諸島、小笠原諸島周辺に限られ、それ以外で観察されることは非常に稀であるので、まずは観察した場所が第一番目の識別ポイントになる。
東京都三宅島 Field Noteから転記
アラスカ南部で繁殖し冬季はメキシコ西岸や南太平洋の島嶼などに渡ります。国内では関東地域の太平洋側海岸、伊豆諸島、小笠原諸島で主に春の渡りの時期に観察され、これらの島々を経由して渡ります。まず、生息地域及び渡りのコースに注目します。これら太平洋沿岸以外の地域、西日本や九州などで観察されることはほとんどありません。ここが第一のポイントです。次にキアシシギとの大きな違いは声です。基本的には「ピリリリリ・・」「ピピピピピ・・」でキアシシギとは全く違った声です。夏羽では不規則な横斑が胸・腹中央・脇腹・下尾筒先端までびっしりとあります。他に鼻孔の溝の長さ(嘴長の2/3)、 跗蹠後面網目状、長めの初列突出など。冬羽では羽衣の特徴がやや不明瞭になり識別が難しくなってきます。どの羽衣の段階でも声は重要な識別ポイントになっています。
最後に
参考文献
注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。
(2015-09-11掲載)
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