クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2017-11-21

独断と偏見の識別講座Ⅱ

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波多野邦彦

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第31回 Otus <コノハズク属>

2009年5月 コノハズク灰色型成鳥
一気には逃げずに翼をばたつかせ枝移りしながら少しずつ離れて行きます。直立した枯れ木にも上手にとまります。レモン色の虹彩が美しい。脚が意外と長い。赤色型もとてもキレイです。ある年は快晴の真昼間に一生懸命鳴いている声も確認しました。島では日中にしばしば「ブッ・キョッ・コー」の声を確認することがあります。ここ数年は姿を確認できていません。

日本海側離島 Field Noteから

毎年通っていた日本海側の離島。以前は最終バンディングの小鳥を見せていただくのが楽しみのひとつでした。オオルリ、キビタキ、コルリ、センダイムシクイ、クロツグミ・・・etcを目の前で観察できます。ある年、コノハズク灰色型と赤色型、それぞれ1羽ずつを同時に観察することができました。ポワポワとしてまるでぬいぐるみのようです。握りこぶしほどの大きさしかありません。あまりに小さくて、自然の中でこれが鳴いているところを見つけるなんてほとんど不可能だと実感しました。その後、何とかして自然状態のコノハズクを見たかったのですが、持つべきものは出来の良い後輩です。彼らのおかげで、運よく数年続けて渡り途中の個体を観察することができました。最も多い年で鳴き声以外に3個体を確認。多少の雨は大丈夫。平気で採餌しています。ある年はかなりの強風の中、さすがに無理だろうと思いました。しかし、この時は林道の地面に降りて蛾など小さな昆虫を追いかけていました。細い林道が白いコンクリートでできていて、明るい路面に虫が集まっていたのです。数年後、姿は勿論のこと声も聞けなくなりました。理由はわかりません。渡島する時期を少しずつ変えたりもしましたが今のところ再発見できていません。ぜひまたあの可愛らしい姿に会いたいものです!!
日本産コノハズク属には、オオコノハズク、コノハズク、リュウキュウコノハズクがいます。
オオコノハズクは主に留鳥で一部は冬季南の地域に移動します。サメイロオオコノハズク、オオコノハズク、リュウキュウオオコノハズクの3亜種が知られています。コノハズクは夏鳥として初夏、インドシナ等の東南アジアから渡ってきます。リュウキュウコノハズクは南西諸島などで留鳥、福岡県筑前沖ノ島では夏鳥?として繁殖しています。また、リュウキュウコノハズクの一亜種として南大東島に生息するダイトウコノハズクが知られています。

■オオコノハズク

2001年11月 オオコノハズク
いオレンジ色の虹彩、淡褐色の後ろ襟、胸の縦斑に細かい横縞が入るのがコノハズクとの差異。昼間はほとんどお目にかかれない。秋終盤渡り途中と思われる個体。

日本海側離島 Field Noteから転記

留鳥として全国に生息し、一部は渡りを行います。ポイントの小さな林。何か気配を感じて立ち止まると不意に頭上から飛び立ち、すぐわきの木に移りました。待望のオオコノハズク。フワッ、フワッ、フワッ、スッ!翼が幅広いため飛ぶと大きく感じますが、枝にとまるときは、林に吸い込まれていくような感じで突然見えなくなります。この時はすぐ近くにとまってくれ、スコープの最短焦点距離では入りきれず後ろに下がって観察しました。擬態の体勢で体を思いっきり伸ばして緊張している時とは反対に、落ち着いているときは全身の力が抜けるのでしょうか、体が縮んで三頭身程度に見えコミカルな印象を受けます。渡り途中でかなり疲れているのかもしれません。片目だけときどきオレンジ色の薄目を開けてじっとしていました。英名のcollared<襟付きの>という意味の淡褐色の後ろ襟(イラストでは見えない)もしっかりと確認できました。この時とは別に春5月の遅い時期の昼間「オーウッ、オーウッ」と唸るような鳴き声(雄個体)を聞いたことがあります。越冬地などでは「キャー」「キュー」「ミュゥ」(雌)といったかわいい声も出すようです。
リュウキュウオオコノハズクは沖縄本島、屋我地島、西表島に留鳥として分布し、体色は赤味が強く、趾には毛があると言われています。以前沖縄本島ヤンパルの林道でガードレールにとまる本亜種を観察したことがあります。この時はオレンジ色の虹彩、暗褐色の体色、羽角などを確認できました。

■コノハズク

冒頭文章およびイラスト参照

■リュウキュウコノハズク

2015年6月 リュウキュウコノハズク♀?成鳥
ようやくここで見ることができた。全体的に褐色味が強い個体だった。偶然見つけた巣穴から飛び出す直前、周囲の様子を用心深く確かめる。ライトを反射し瞳孔が赤く見える。

宗像市沖ノ島 Field Noteから

トカラ列島以南の南西諸島に留鳥として生息しています。薄い灰色から赤味の強いものまで、様々なタイプが見られます。胸・腹の黒褐色の模様はコノハズクのものに比べ細かく複雑。虹彩は黄色。雄は「コホッ、コホッ」、雌は「キュー」などと鳴きます。南西諸島などでは平地から低山まで個体数も多く比較的普通に見られます。分布からいうとかなり北に孤立していますが、福岡県宗像市筑前沖ノ島にはこのリュウキュウコノハズクが生息しています。トカラ列島からこの沖ノ島までの約500km間にある五島列島やその他の島々では記録はあるようですが、繁殖は確認されていません。このような飛び石型の分布は本当に不思議です。2006年7月宗像市調査でこの筑前沖ノ島に渡島した際には夜間十数羽の声を確認することができました。
沖ノ島は公的な調査以外許可無しで上陸することはできません、念のため。古代からの信仰の島で宗像大社沖津宮(おきつのみや)を祀り、国宝級の出土品が数多く発見されています。別名「海の正倉院」と呼ばれ現在(2015年10月現在)世界遺産登録を目指しています。

終わりに

  • コノハズクをこの目でどうしても見たくて、夜の英彦山(ひこさん)に何度も通いました。私はたいへんな怖がりですが、見たいという気持ちの方が勝っていました。深夜、真っ暗な林道をヘッドランプの灯りだけを頼りにたった一人で歩くのは本当に恐ろしい経験でした。曇りだと月明かりも無く真の闇です。若い頃に体験した消防学校の暗室脱出訓練以来でした。恐ろしくて探鳥どころではありません。それでもチャレンジしましたが、結局成果には結びつきませんでした。その後、初めてコノハズクを確認した時、見ることができた嬉しさよりも「もうアレをしなくていい!」という安堵感の方がずっと大きかったのは言うまでもありません。
  • 野鳥情報も見ているその場から画像付きでリアルタイムに発信される時代です。絶え間ない情報収集と迅速な対応!効率的な鳥見が信条!!前述のような悠長ことはやってられない!!!といった方も多いのではないかと思います。でもちょっと待ってください。目標の種類について国内の生息環境や習性・行動などの特徴を詳しく調べて、また実際に見た人からお話を聴取して、試行錯誤を繰り返しながら、発見にこぎつける。成功した時の喜びは何ものにもかえ難い。これこそ探鳥(バードウォッチング)の醍醐味だと思うのです。以前、情報を集めて飛び回っているある野鳥カメラマンの方になぜそんなに撮り急ぐのかとお聞きしたことがありました。本人の回答。「あと(人生に残された時間)が無いので焦ってしまうから!」と言われたことがあります。むむむ・・・!?

参考文献

  • BIRDS OF EAST ASIA: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON AND OXFORD
  • Collins BIRD GUIDE The Most Complete Field Guide To The Birds of Britain and Europe: HarperCollins Publishers Ltd
  • A Guide to the Birds of Southeast Asia CRAIG ROBSON: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON,New Jersey
  • 決定版日本の野鳥650 真木広造 大西敏一 五百澤日丸 (株)平凡社
  • フィールドガイド 日本の野鳥 高野伸二著 2015年6月1日発行 増補改訂新版 初版第1刷 (公財)日本野鳥の会
  • 南大東島に隔離分布するダイトウコノハズク個体群の保全に関する研究:ダイトウコノハズク保全研究グループ
  • 鳥たちの夜の世界 BIRDER 2012年8月 文一総合出版

注)本識別講座において、過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。

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