クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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独断と偏見の識別講座Ⅱ

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波多野邦彦

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第32回 Rosefinches <マシコ類>

2006年5月 アカマシコ雌第1回夏羽
全身暗灰褐色、胸に不明瞭な暗色縦斑、嘴峰は湾曲。ブッシュを好む。全身灰褐色の俗に言う「チャマシコ」。飛翔中はほとんど真っ黒にしか見えない。マシコの仲間はどれもそうだが、赤く美しい雄成熟個体が少ないのが泣き所。あまり鳴かないが声はややこもった低い音質で「デュリッ、デュリッ」。咥えているのは鱗翅類の幼虫。

福岡県内離島 Field Noteから

Rosefinchの仲間はシロボシマシコ、ヒゴロモマシコ、オオマシコ、コウザンマシコ、アカマシコ、ベニマシコ、ハシグロナキマシコ、モウコナキマシコ、サバクマシコ、クリムネアカマシコ、ハギマシコ、シンジュマシコなど紅色やピンク色を基調とした美しく魅力的な種類が数多くいます。和名も洒落た名前が多いような気がします。アフリカ北部、中近東、ヒマラヤ、モンゴル、中国などの砂漠や荒地、高山地帯を中心にユーラシア大陸に広く分布しています。
その中でもアカマシコは少し性格を異にしたタイプで、比較的高緯度の北方地域に分布し、ブッシュや灌木が茂る環境で繁殖します。日本国内では主に春秋の渡りの時期に日本海側の離島で観察されることが多いようです。越冬個体が観察されることもあります。
日本国内でRosefinchの仲間は、オオマシコ、アカマシコ、ハギマシコ、ベニマシコなどがあげられます。雄が赤い色彩をしているアトリ科の小鳥を指します。俗に言う「赤い小鳥」達です。北方系の種類が多いので九州ではやや馴染みの薄いグループですが、これら4種類については福岡県内でも冬鳥または旅鳥として全て記録があり、散発的に観察され、全く見られないという訳ではありません。「赤い小鳥」と言われる種類には他にもギンザンマシコやイスカ、ベニヒワ、ウソなどもいますが、また別の機会にお話したいと思います。

■アカマシコ

日本海側の離島では主に春秋の渡りの時期に観察されます。越冬個体が観察される場合もあります。1羽から数羽の小群の場合が多いようです。ブッシュの中にいることが多く、ほとんど鳴かないことからも意外と見つけにくい種類です。これまで何度も見てきましたが、運がないのか未だに赤い雄の個体には遭遇したことがありません。(巻頭イラスト及び解説参照)

■オオマシコ

冬鳥として全国に渡来しますが、主に本州中部以北が中心で、西日本や九州では数が少ない小鳥です。数羽から数十羽の小群になるケースが多く、他のマシコ類同様に美しい雄の成熟個体は少ないようです。頭に丸みがあり、体は大きくやや太っています。3〜4年で成長羽になります。雄成鳥は全身が濃ピンク色で額・腮・喉が銀白色でたいへん美しい色彩をしています。嘴は円錐形で嘴峰がやや湾曲します。雌や第1回冬羽は全身が褐色で頭・胸・腹・腰などに赤味があります。九州では極く稀な冬鳥、周辺の日本海側の島嶼でも記録が少なく、かなり珍しい種類だと考えられます。

■ハギマシコ

1997年4月 ハギマシコ雄成鳥冬羽
国内には局地的に分布するが、基本的には北方系である。九州でも冬鳥として局地的に分布する。春秋の日本海側の離島で渡りの群れが記録されることもある。このように鮮やかな色彩の個体は少ない。このときは大分県中津市内の工場駐車場で雑草の種子に群がっていた。80羽ほどいたが、美しい個体は十羽もいなかった。遠目や飛翔時には黒っぽく見えることが多い。胸や腹など体下面にピンク色が多いため、冬季雪上で見ると照り返しでバラ色が映え非常に美しい。

中津市 Field Noteから転記

焦げ茶色のからだに薄い桃色の萩の花びらを散らしたような美しい色彩をしています。ハギマシコ、とても素敵な名前だと思います。国内には冬鳥として局地的に分布しますが、西日本、特に九州では少ないようです。北海道の高山帯では夏の観察例があります。山地から平地、海岸線まで様々な場所で見られます。イラストは雄成鳥冬羽。雄の方がはっきりとした色彩をしており、一方雌はやや鈍い色合いです。夏羽は黄褐色の襟が白っぽくなり、顔から胸、腹にかけて黒味が増し全体的にモノトーン色が強くなります。数羽から時には数百羽の大きな群れになります。福岡県内では過去に福岡市西区今津の毘沙門山海側の崖に数年の間冬鳥として群れが飛来していました。英彦山などには少ないながらも毎冬飛来しているようです。色合いには個体差があり、このような鮮やかな色彩のものは数少ないようです。

■ベニマシコ

国内では北海道で繁殖しています。今回ご照会する種類の中では冬季九州で観察される機会が最も多い種類です。数は少ないながらも冬鳥としてコンスタントに飛来します。ブッシュの中を好みますのでなかなか見つけにくいのですが、通常は「フィッフォッ、フィッフォッ」という優しい口笛のような独特な声で存在に気づきます。声を頼りに探すのが効果的です。貯水池、池、湖、河川、クリーク、干潟など水辺のアシ原やブッシュなどに好んで生息します。嘴峰が湾曲し、丸く小さな嘴。雄夏羽は濃いピンク色、冬期はやや鈍い色です。雌や若い個体は赤味が目立たず褐色の地味な色彩をしています。遠目には太ったエナガのような形で両側が白く長い尾が目立ちます。

最後に

  • 一口に赤い小鳥といってもその赤い色の感じ方は人によって様々です。オオマシコ濃ピンク、アカマシコ真紅、ハギマシコ萩色、ベニマシコ濃イチゴ色、ギンザンマシコ濃紅色、イスカ赤レンガ色、ナキイスカ赤濃ピンク色。これは私個人の感じ方。正解はありません。皆さんもご自分で実際に見て感じてください。
  • 「赤い鳥」は冬鳥として日本に渡来するアトリ科の野鳥のうち、雄の羽色が赤い色をしている種類の総称です。これら「赤い鳥」を含むアトリ科の小鳥は年によって渡来数が大きく変動します。多い年は「当たり年」、少ない年は「外れ年(はずれどし)」といい、ほとんど渡って来ない年もあります。毎年どのような傾向にあるのかを見極めるのもひとつの楽しみです。
  • マシコは漢字で「猿子」と書きます。猿が赤い顔をしているところからきているようです。
    とても可愛らしい名前だと思いませんか?「赤い鳥」、北方系の種類が多いので九州では見る機会が少ないですが、それだけに赤い姿を見つけたときの喜びは大きなものがあります。ぜひ皆さんも冬は「猿子」を探してみてください。
  • 参考文献

    • BIRDS OF EAST ASIA: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON AND OXFORD
    • Collins BIRD GUIDE The Most Complete Field Guide To The Birds of Britain and Europe: HarperCollins Publishers Ltd
    • 決定版 日本の野鳥650 真木広造 大西敏一 五百澤日丸 (株)平凡社
    • フィールドガイド 日本の野鳥 高野伸二著 1988年5月10日発行 初版第10刷 (公財)日本野鳥の会
    • 冬に咲く花アトリの仲間 BIRDER 1995年2月号 文一総合出版
    • 冬の赤い鳥大全 BIRDER 2010年12月号 文一総合出版

    注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。

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