クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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独断と偏見の識別講座Ⅱ

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波多野邦彦

総目次

第33回 Bittern, Night Heron Ⅱ <サギ類Ⅱ>

1996年9月 サンカノゴイ成鳥
太って体格がよく翼も幅広く広大なので飛ぶとより一層大きく見え迫力を感じる。

北九州市小倉南区曽根 Field Noteから

足を動かすたびにザワザワ、ザワザワと虫が蠢く。北九州市小倉南区曽根。堤防沿いに走るクリーク、両岸にアシが繁る。周囲の田んぼではこの夏、イナゴが大発生。1996年1月から断続的に観察されていたサンカノゴイがついに越夏したようだ。本州中部以北では繁殖し、周年観察される個体もいるようだが、九州で夏の記録は珍しい。餌は勿論無数にいるイナゴ。曇りや雨の天候であれば、アシ原の中から田んぼに出てきて堂々と採餌する。全長70cm。体格が良いので迫力満点。九州では越冬個体は結構普通に見られる。長崎県諫早などでは堤防上から広大なアシ原を眺めていると短距離をフワリと飛翔する姿をしばしば見ることができる。
今回はサンカノゴイ、ミゾゴイ、ズグロミゾゴイについてお話します。大型・中型のサギ類です。
サンカノゴイは九州ではおそらく相当数が越冬しているものと思われます。ただ、アシ原などに隠れる性質が強いため、なかなか私たちの目の前に姿を現わすことがありません。
ミゾゴイはオオタカ、サシバ、フクロウ、ヤマシギなどと同様に里山環境バロメーターの代表格です。人と野生生物が共存する里山環境が必要です。現在は宅地開発等でそういった環境がどんどん失われており、それに伴ってミゾゴイが安心して生息できる場所も激減しています。
ズグロミゾゴイは南西諸島に留鳥として生息しています。明るい林や牧場など比較的目につき易い場所にいます。おっとりとした性格で慌てて逃げるようなこともなく一度見つけることができればゆっくりと観察できます。

■サンカノゴイ

全長約70cm。太っているため非常に大きく感じる。「ヴォーッ、ヴォーッ」と繁殖期に鳴く重低音の声は数キロ先まで届くと言われている。背側の黄褐色の地色と暗褐色の複雑な模様の保護色効果が特に高く、枯れたアシ原の中に入るとすぐ傍にいるにもかかわらず全くわからなくなるほど。国内では本州中部以北の広大なアシ原で繁殖している。九州では越冬個体を観察する機会が多い。予想外に面積が狭いアシ原などにも隠れていることがあるので注意が必要。1985年3月小倉南区曽根で越冬した三羽のうち一羽は、首から上が赤褐色、青緑色の嘴と顔、暗褐色の虹彩を持った個体だった。第19回 Variations <バリエーション>参照。

■ミゾゴイ

2008年6月 ミゾゴイ雄成鳥
胸を膨らませ一心不乱に鳴き続ける雄個体。ライトに照らされた虹彩がピンク色に輝く。青い目先が印象的。喉から胸に一本の太い暗褐色線が入る。ここで繁殖した可能性があったが、この年だけで翌年には姿を見せなかった。この鳥が営巣するということは周囲に豊かな里山の自然がまだ残っている証拠。長崎県対馬で観察した時は山間の耕作放棄地で巨大なヤマミミズを貪り食っていた。

宗像市 Field Noteから

中国南部、フィリピン、台湾などから、夏鳥として九州や本州に渡ってくる。里山環境に棲む野鳥の代表格。春秋の渡り時には離島や市街地などでも観察される。
2008年6月宗像市内のある住宅地で住民からフクロウが夜うるさく鳴くので調べてくれとの苦情が野鳥の会に寄せられた。JR駅すぐそばの小さな丘。斜面に住宅が建ち、頂上付近にこんもりと林が繁る。その真ん中に円筒形の給水塔が建っている。薄暗くなった頃に行くと、既に鳴いていた。「ウップーッ、ウップーッ」低く太く腹の底に響くような声。近くで聞くと重低音でかなりの音量。たしかにこれはうるさい!給水塔の屋上の手摺をライトで照らすとミゾゴイが胸を大きく膨らませて搾り出すように鳴いていた。やや上方に頸を突き出すようにして口はほとんど開けず唸る。ひとしきり鳴いては位置を少しずつずらしながら、手摺りの上を移動していく。10分程度で一周し、360°周囲に満遍なく声を行き渡らせる。ライトの照射範囲を出ると姿が見えなくなるが、しばらく待つとぐるりと周って反対側から鳴きながら戻ってくるのがコミカルだ。時々飛び立っては低空を2、3度旋回し帰ってくる。飛翔中は赤褐色の翼と一本の太い暗色帯が目立つ。日暮れからほぼ夜通し鳴いていた。ライトに照らされた虹彩が暗闇にピンク色や虹色にも輝いて見えるのが幻想的だった。
以前、宗像市沖ノ島調査で春観察した渡りの個体は遥か上空をゆったりと帆翔しながら旋回し、方向を決めた後、真っすぐに流れて行った。日中も予期せぬ形で夜行性の野鳥に遭遇することがある。

■ズグロミゾゴイ

インド、中国南部、フィリピン、東南アジアなどに生息し、国内では石垣島や西表島などの南西諸島に留鳥として生息しています。おっとりとした性格なのでしょうか、明るい林や牧場の片隅などでじっと佇む姿をよく見かけます。本当に何時間もそのままじっとしていることも多いようです。近づいた時に急に驚いて逃げるようなこともなく、少しずつ歩いて遠ざかっていきます。成鳥はミゾゴイと一見よく似ていますが、灰黒青色の頭頂・後頭の冠羽、初列風切先端に白色斑を持つのが特徴です。幼鳥は全身が白と灰褐色の細かなまだら模様です。ミゾゴイ同様、沢沿いの広葉樹のあまり高くない樹上に粗末なお皿のような巣を作ります。

終わりに

  • 上記3種の中で最も観察する機会が少ないと思われるのはミゾゴイかもしれません。繁殖のために必要な里山環境が開発によってどんどん失われていることが原因だと思われます。もしも、あなたの家の周りで姿を観察したり声を聞いたりしたことがあるなら、それは豊かな自然環境が残っている証拠です。
  • 筑豊支部管内は英彦山など山地が多く、田畑や水田など比較的たくさん里山環境が残っている地域だと思われます。ミゾゴイを観察できる機会も他地域に比べると恵まれているのではないでしょうか?あとは気づき方、探し方を工夫するだけです。初夏の夕方、一日だけビールを我慢して近所の夜間探鳥に出てみるのも発見に近づくひとつの方法ではないでしょうか。夜静かにして、開けた窓の外に意識を集中してみるとフクロウ、トラツグミやヨタカ、そしてもしかしたら遠くからミゾゴイの声も聞こえてくるかもしれません。

参考文献

  • BIRDS OF EAST ASIA: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON AND OXFORD
  • Collins BIRD GUIDE The Most Complete Field Guide To The Birds of Britain and Europe: HarperCollins Publishers Ltd
  • フィールドガイド 日本の野鳥 高野伸二著 1988年5月10日 初版第10刷発行 財)日本野鳥の会
  • A Guide to the Birds of Southeast Asia CRAIG ROBSON: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON,New Jersey
  • 決定版 日本の野鳥650 真木広造 大西敏一 五百澤日丸 (株)平凡社

注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。

(2015-12-10掲載)

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