波多野邦彦
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第34回 Kingfishers Ⅰ <ヤマセミ>
2000年10月 ヤマセミ 雄成鳥
基本的に雄は顎線と胸に褐色斑がある。雌にはこの褐色斑はないが、翼下面の雨覆いが大きく褐色になる。白黒の濃さや雄の茶色の範囲には個体差があり、色白のものから黒っぽいものまで様々。比べてみるのも面白い。
犀川町祓川 Field Noteから
九州から北海道まで河川の中上流域、クリーク、湖沼、ダムなどに留鳥または漂鳥として生息しています。平地や河口近くまで下りてくることもありますが稀です。日本産カワセミ類の中で最大種。雄雌共に逆立った冠羽を持ち、頭、背、翼、腰、尾にかけての上面は白黒の細かい鹿の子模様で体下面は白色。また顎線、上胸に黒色斑があります。雄はこの部分にさらに褐色斑が点在しますが、大きさ・範囲は個体差があり、ほとんど褐色斑が見えない雄個体もいます。雌は同じ部分に褐色斑がありませんが、その代わり翼下面雨覆いの部分が大きく赤褐色をしており、飛翔中によく目立ちます。フワフワとした飛び方をします。岸辺や山間部の川の土手や崖に嘴で穴を掘って営巣し、餌は主に魚類、他に甲殻類、水生昆虫などを捕食します。水面に張り出した枝などにとまりじっと魚を狙うことが多いですが、ホバリング(停空飛翔)からのダイビングも行います。水浴びはダイナミックで、水面近くを飛びながら往復し、そのまま水中に繰り返しダイブします。「ケッ」、「ケレッ」とよく響く物悲しげな声で存在に気づくことが多く、声による探索が有効です。水質が良好で川魚が多く棲む清流を好みます。
国内で記録のあるカワセミ科の鳥はアカショウビン、アオショウビン、ヤマショウビン、ナンヨウショウビン、カワセミ、ヤマセミ、ミヤコショウビン、ミツユビカワセミの8種です。ミヤコショウビンは絶滅したと考えられており、世界にたったひとつだけ、(公財)山階鳥類研究所に1887年2月に採集された標本が残っています。また、ミツユビカワセミは2006年6月沖縄県島尻郡で傷病鳥として保護された1例の記録 (PDF)があります。
今回ご紹介するのはヤマセミ。パキスタン北東部から、インド北部、インドシナ半島北部、中国中南部、朝鮮半島、そして日本にかけて分布しています。日本国内では九州から北海道まで留鳥として生息しています。日本で確認されているカワセミ類の中では最大で、主に魚を専門に捕食する種類です。両生類、爬虫類、甲殻類、昆虫など様々なものを食べるヤマショウビンやアカショウビンの横広で分厚い嘴とは形状が少し違い、ヤマセミの嘴はどちらかというと縦に扁平な形をしています。特に清流に好んで生息するため、そのような環境が減少している現在、ヤマセミを観察する機会も失われていっているように感じざるを得ません。<詳細巻頭参照>
終わりに
参考文献
注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。
2016-01-12掲載
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