波多野邦彦
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第35回 Pheasant-tailed Jacana <レンカク>
2011年5月 レンカク成鳥夏羽
内側初列風切りの先端が細長く伸び、翼を閉じた時に突出する。色彩は雌雄同色だが、雄よりも雌の色彩の方が鮮やかだと言われている。とびきり長い指からは優雅にハスの葉の上を歩く姿が連想され、純白の首筋、金色の後頸、長い尾など原色の色彩と特異な形は見るからに南方系の種類をイメージさせる。
長崎県対馬 Field Noteから
2006年11月 レンカク第1回冬羽
見れば見るほど美しい色彩と特徴的なスタイル!
識別見地からみて他に似た仲間がいないのは逆にちょっとさびしい。
福岡市西区今津 Field Noteから
レンカクの仲間はアフリカ、東南アジア、中南米を中心に世界に8種類が生息しています。中でもこのレンカクは華やかで最も美しい種類だと思います。
この鳥の特徴は何と言っても極端に長い足指と爪です。お蔭で沈むことなく上手にハスの葉の上を歩きながら採餌することができます。夏羽であれば純白の顔、灰白色の嘴、ゴールドに輝く後頸、優雅な翼と長く伸びた尾など非の打ちどころがありません。
通常日本国内では繁殖しないのであまり知られていませんが、習性は一妻多夫で雄が抱卵、ヒナを育てます。食性は雑食と言われています。
福岡市西区、カントリーエレベータ横の水が半分ほど干上がった護岸がコンクリートで固められた、溜め池で越冬しました。ハスなどの水草が無く、一見あまりきれいとは言えない場所でした。ふだんは周囲の泥の上で採餌することが多いようでした。周りの土手が高く遮るものが無いので観察や撮影はし易かったのですが、脚が泥で汚れていることが多くカメラマン泣かせだったようです。
成鳥も美しいですが、この第1回冬羽も茶系でまとめられた独特で複雑な色彩がきれいです。頭頂は赤褐色、目から側頸、胸にかけて黒褐色斑がつながります。幼鳥、第1回冬羽の虹彩は黄色。嘴は青灰色。脚は黄緑色。雨覆いは黄褐色の地に褐色の細かいウロコ模様、初列風切りは白色で先端が黒色、次列風切りも同様に白色。尾羽は短く褐色で尖る。夜は水の中で眠るようで、まだ暗い早朝、横倒しのティアドロップ(涙型)形状に体を縮めじっと目を閉じていました。
終わりに
以前は「珍鳥」と呼ばれていた種類が年を経るごとに「珍鳥」ではなくなってくる。見ている側にとってはありがたいことですが、一種のありがたみや重さは次第に薄れていくような感じがします。「何っ!レンカク?!」が「また、レンカクか」こんな感じです。
過去の出現記録や傾向を調べて自分で季節や場所を予想したり、種ごとの習性や識別ポイントを勉強したり、いろいろな場面で、自分で考え自分で苦労することが少なくなってきたような気もします。一種を見るための勉強、努力、成功や失敗、諸々の知識や経験の積み重ねが、バーダーの実力に繋がっていくのではないかとも思うのです。
参考文献
(2016-02-13掲載)
注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。
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