波多野邦彦
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第41回 Pipits & Wagtails Ⅰ <セジロタヒバリ、ムネアカタヒバリ>
2012年10月 セジロタヒバリ第1回冬羽
不明瞭な眉斑、淡ピンク色で太めの嘴、目先に僅かにある過眼線、不明瞭な顎線、胸・腹の地色は白色で胸の部分のみ僅かに淡褐色、背に左右二対の白色縦線、初列風切は三列風切を越えて数枚が見える、尾が短く寸詰まりの体形、声はハクセキレイに似た「チュン、チュン」
Field Noteから 福津市津屋崎
セジロタヒバリは北部九州では主に9月中旬から10月中旬頃にかけて観察されます。通常、春の渡りや越冬個体はほとんど観察されないと考えた方がいいと思います。最もよく似ているのはムネアカタヒバリですが、別表の通りの相違点があります。慣れれば顔つきだけで判るようになります。ポイントとしては@三列風切からの初列風切突出の確認、A嘴の色と形状、B声などが有効な識別ポイントになるでしょう。草地の中に隠れる習性が非常に強く探すのが大変な種類です。朝夕に鳴きながら飛び周る習性があるので、特徴的な声に気付くことができれば問題ありません。ヨーロッパではマキノセンニュウと並び最も見づらい種類に挙げられることがあるようです。
■ムネアカタヒバリ
2016年1月 ムネアカタヒバリ 第1回冬羽
個体差はありますが、ほとんどのムネアカタヒバリの背には白色または淡色縦線があります。つまり「背に白い線があるからセジロタヒバリだ!」とは言えないのです。また、 雌冬羽やこの第1回冬羽個体などには全く赤味がありません。三列風切りからの初列風切り先端の突出無し、嘴の形状・色彩、声などは必ず確認することが大切です。これらはごく基本的なことなので覚えておいてください。
Field Noteから 福津市津屋崎
北部九州では春秋の渡りの時期と冬期越冬個体が観察されます。「ピシィーィ」という尻下がりの細い声は特徴的でよく鳴くので、これだけで存在に気付くことができます。冬でも雄成鳥は頭や顔に赤褐色味が残っていますが、雌や第1回冬羽などはきれいな黄褐色で赤味がほとんど見られません。個体差はありますが、背には白っぽい淡色縦線があります。つまりこれだけではセジロタヒバリとの区別はできないので注意が必要です。声、三列風切りからの初列突出が無いこと、黄色く細い嘴、明瞭な眉斑等を必ず確認することが必要です。
セジロタヒバリとムネアカタヒバリの相違点一覧表
特徴 | ムネアカタヒバリ | セジロタヒバリ | 備考 |
体型 | 尾が短い | さらに尾が短く寸詰まり | 飛翔中でも認識可能 |
頭頂・顔色彩 | 前後不明瞭な過眼線 | 目先の過眼線短く独特な目つき・表情に見える | |
眉斑 | 淡色で長く明瞭 | 頭頂の縦斑が入り不明瞭 | |
初列風切先端 | 三列風切を出ない | 三列風切を明らかに越える | 三列羽縁擦切れ注意 |
背・色彩 | 不明瞭な淡色縦線あり | 白色明瞭な縦線あり | これだけでは同定不能 |
嘴形状・色彩 | 細く下嘴黄色。先端暗色 | やや太く下嘴ピンク色 | セジロは必ずピンク色 |
行動 | 草地に隠れる傾向あり | 草地に隠れる傾向非常に強 | |
声 | 細く尻下がりピシィーィ | チュン、チュン一声ずつ | ハクセキレイに似る |
胸・腹地色色彩 | 淡ベージュ色 | 白色・上胸のみ褐色味あり | |
その他 | 春秋および越冬個体 | ほぼ秋シーズンに限られる |
終わりに
参考文献
注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。
2016-08-10掲載
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