クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
total 
modify:2024-09-08

独断と偏見の識別講座Ⅱ

短縮URL

波多野邦彦

総目次

第41回 Pipits & Wagtails Ⅰ <セジロタヒバリ、ムネアカタヒバリ>

セジロタヒバリ

2012年10月 セジロタヒバリ第1回冬羽
不明瞭な眉斑、淡ピンク色で太めの嘴、目先に僅かにある過眼線、不明瞭な顎線、胸・腹の地色は白色で胸の部分のみ僅かに淡褐色、背に左右二対の白色縦線、初列風切は三列風切を越えて数枚が見える、尾が短く寸詰まりの体形、声はハクセキレイに似た「チュン、チュン」

Field Noteから 福津市津屋崎

セジロタヒバリは北部九州では主に9月中旬から10月中旬頃にかけて観察されます。通常、春の渡りや越冬個体はほとんど観察されないと考えた方がいいと思います。最もよく似ているのはムネアカタヒバリですが、別表の通りの相違点があります。慣れれば顔つきだけで判るようになります。ポイントとしては@三列風切からの初列風切突出の確認、A嘴の色と形状、B声などが有効な識別ポイントになるでしょう。草地の中に隠れる習性が非常に強く探すのが大変な種類です。朝夕に鳴きながら飛び周る習性があるので、特徴的な声に気付くことができれば問題ありません。ヨーロッパではマキノセンニュウと並び最も見づらい種類に挙げられることがあるようです。

■ムネアカタヒバリ

ムネアカタヒバリ

2016年1月 ムネアカタヒバリ 第1回冬羽
個体差はありますが、ほとんどのムネアカタヒバリの背には白色または淡色縦線があります。つまり「背に白い線があるからセジロタヒバリだ!」とは言えないのです。また、 雌冬羽やこの第1回冬羽個体などには全く赤味がありません。三列風切りからの初列風切り先端の突出無し、嘴の形状・色彩、声などは必ず確認することが大切です。これらはごく基本的なことなので覚えておいてください。

Field Noteから 福津市津屋崎

北部九州では春秋の渡りの時期と冬期越冬個体が観察されます。「ピシィーィ」という尻下がりの細い声は特徴的でよく鳴くので、これだけで存在に気付くことができます。冬でも雄成鳥は頭や顔に赤褐色味が残っていますが、雌や第1回冬羽などはきれいな黄褐色で赤味がほとんど見られません。個体差はありますが、背には白っぽい淡色縦線があります。つまりこれだけではセジロタヒバリとの区別はできないので注意が必要です。声、三列風切りからの初列突出が無いこと、黄色く細い嘴、明瞭な眉斑等を必ず確認することが必要です。

セジロタヒバリとムネアカタヒバリの相違点一覧表

特徴ムネアカタヒバリセジロタヒバリ備考
体型尾が短いさらに尾が短く寸詰まり飛翔中でも認識可能
頭頂・顔色彩前後不明瞭な過眼線目先の過眼線短く独特な目つき・表情に見える
眉斑淡色で長く明瞭頭頂の縦斑が入り不明瞭
初列風切先端三列風切を出ない三列風切を明らかに越える三列羽縁擦切れ注意
背・色彩不明瞭な淡色縦線あり白色明瞭な縦線ありこれだけでは同定不能
嘴形状・色彩細く下嘴黄色。先端暗色やや太く下嘴ピンク色セジロは必ずピンク色
行動草地に隠れる傾向あり草地に隠れる傾向非常に強
細く尻下がりピシィーィチュン、チュン一声ずつハクセキレイに似る
胸・腹地色色彩淡ベージュ色白色・上胸のみ褐色味あり
その他春秋および越冬個体ほぼ秋シーズンに限られる

終わりに

  • 今回のような地味系種類の識別こそ、「独断と偏見の識別講座」の存在意義が問われるところだろうと思います。ぜひ皆さんに熟読していただき、これらの見方を実践して欲しいと考えています。もっと難しい識別はいくらでもありますので、「みんな同じに見えて区別がつかない!」ではなくて、このレベルにまずは慣れていただきたいと考えています。食わず嫌いにならないでください。チャレンジあるのみ!やってみて初めて見えてくるものが必ずあります!
  • 筑豊支部管内でもセジロタヒバリは間違いなく発見されるはずです。基本的に単独(1羽)です。狙う場所は広い刈田の畔や刈り残された稲の周り。草や稲の根元から出たり入ったりします。開けた場所にドーンといることはほとんどありません。特徴的な声が確認できれば間違いありません。飛びながらよく鳴きます。朝夕は活発に飛び回ります。これまで記録が無いのは、皆さんが今までこういった識別・探鳥を経験したことが無いからだけだと考えています。チャンスは年に一度だけ9月中旬から10月中旬頃までのわずか1か月間限定です。緊張感をもって、慎重に!

参考文献

  • BIRDS OF EAST ASIA: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON AND OXFORD: Harper Collins Publishers Ltd
  • Collins BIRD GUIDE The Most Complete Field Guide To The Birds of Britain and Europe: HarperCollins Publishers Ltd
  • A Guide to the Birds of Southeast Asia CRAIG ROBSON: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON,New Jersey
  • PIPITS & WAGTAILS of Europe, Asia and North America: Per Alstrom and Krister Mild CHRISTOPHER HELM LONDON
  • 決定版日本の野鳥650 真木広造 大西敏一 五百澤日丸 (株)平凡社
  • フィールドガイド 日本の野鳥 高野伸二著 2015年6月1日 増補改訂初版第1刷発行 (公財)日本野鳥の会
  • 独断と偏見の識別講座Ⅱ

注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。

2016-08-10掲載

ご意見・ご質問は本ページのサブタイトルまたはURLを添えてこちらへ

左矢印前へ  上矢印目次  次へ右矢印

Copyright (C) 日本野鳥の会筑豊支部 All Rights Reserved. (著作権者でない者による無断転載禁止)
本ウェブサイトは無断で自由にリンクまたはディープ・リンクができます(画像、動画、録音への直リンクは禁止)。
本ウェブサイトに記載の会社名、システム名、ブランド名、サービス名、製品名は各社の登録商標または商標です。
本文および図表、画像中では必ずしも®、™を表記しておりません。