波多野邦彦
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第43回 American Sparrows <北米産ホオジロ類>
2007年5月 ウタスズメ Song Sparrow
本来北アメリカやカナダで繁殖し、北アメリカ南部、メキシコで越冬する種類。この個体は最終的にはアラスカ本土にいる亜種 Melospiza melodia kenaiensis または亜種M. m. caurinaではないかというところまで判明しました。本件が正式な国内初記録となりましたが、より以前に北海道に画像の無い観察記録があります。Song Sparrowの仲間は北米大陸に広く分布し、数多くの亜種があり、色彩もこれで本当に同じ種類なのか?と思うほど変化に富んでいます。目がくりくりとして結構可愛いのにこの時は種類が全くわからず、何か得体のしれない怪物を見ているような気分でした。
山口県見島 Field Noteから
37年余のバーダー人生の中で眼前に現れた種類で唯一、「種類」や「属」、さらに「科」までも瞬間的にわからなかった個体です。やや大きく感じる中途半端な18〜19cm程度の大きさ。嘴は長い円錐形。全く鳴かず。ホオジロ科の様でもあり、イワヒバリ科の小鳥の様でもあり、ドキドキしたのを覚えています。その時一緒にいたメンバーにどんな画像でも結構です、いい写真でなくて全然構いませんので、あらゆる角度から撮ってくださいとお願いしました。観察記録の画像はこの時のうちの数枚です。後で判ったことですが、胸中央に暗褐色斑が集中しているのはウタスズメの重要な識別ポイントのひとつです。この個体が正式な国内初記録となりました。
「○○ Sparrow」と言ってもスズメではないのでご注意ください。北米産のホオジロ科の仲間は通常このように呼ばれます。アメリカでは「○○ Bunting」とは呼びません。これらの種類はほとんどがアメリカ国内で渡りを行なうために日本はコース上になく、日本国内で記録される種類はどれもかなりの珍鳥です。特に西日本や九州まで南下することは極めて稀なため、めったに遭遇できません。今回はあまり身近ではないのですが、なかなか魅力的な種類が多いAmerican Sparrowの仲間についてご紹介します。
■ウタスズメ
巻頭イラスト及び解説参照
■ミヤマシトド
2013年2月 ミヤマシトド第1回冬羽
灰色味の強い体色をしている。
鹿児島県出水市 Field Noteから
迷鳥は通常成鳥個体は少なく、幼鳥や第1回冬羽など若い個体が多い。このミヤマシトドや次に紹介するキガシラシトドなどは頭頂の模様・色彩が非常に特徴的な種類。ミヤマシトドは成鳥夏羽になると頭頂は純白になる。若いものでも額が白くその兆しを窺える。嘴は年齢を問わず上下嘴とも淡いオレンジ色で識別ポイントのひとつになっている。からだは全体的に淡灰褐色ででっぷりとよく肥えている。中・大雨覆い先端が白く二条の白線になる。三列風切羽縁も白色。過去のサバンナシトド同様、なぜ鹿児島県のこの地域で北米産ホオジロ類が出現するのか本当に不思議だ!!
■キガシラシトド
1997年1月 キガシラシトド第1回冬羽
動作は緩慢で比較的ゆっくりと観察できた。発見後、かなり日数を経ていたが、この日もギャラリーは40〜50人ほどはいた。枝先を移るたびに真下の撮影者も右往左往。少し離れれば頻繁に移動しなくてもいいのにと思う。より近くで撮影したいといった群集心理が働くのでしょう。
大阪府堺市 Field Noteから
ミヤマシトドに比べ全体的にやや褐色味の強い体色をしている。ホオジロの仲間としてはかなり大柄。額から頭頂は黄色。嘴基部から後頭に向かって黒褐色の太い頭側線になる。イラストは第1回冬羽だが、夏羽になると頭頂は黄色と黒の非常にくっきりとした明瞭な模様になる。上嘴は暗灰色、下嘴は淡肉色。細いがくっきりとした白いアイリングがある。中・大雨覆い先端の白色帯も明瞭。行動はややおっとりとして、枝にとまった時などは頻繁に動き回ることなくじっとしている。地上にもよく降りる。直接は聞けなかったが、地元の方によると地鳴きは「ツィーッ」という通常のホオジロ科とは全く違う声だったらしい。現地到着後、約30分間観察したが、この日はこれだけだったと後で聞いた。出現頻度が悪い中で本当にラッキーだった!
終わりに
参考文献
注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。
2016-10-06掲載
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