波多野邦彦
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第44回 Kingfishers Ⅱ <ヤマショウビン>
1994年5月 ヤマショウビン成鳥
上空のトビを警戒し矢印のようにからだを細くし一直線の姿勢をとる。トビが帆翔し移動するとそちらに向き直って再度この姿勢。実にコミカルな動き。子供の頃、アメリカのテレビ漫画でコヨーテに追われるロードランナーがやっていたのを思い出した。イラストのように目の直前上に白斑があるものやまた後頭に不明瞭な白斑が出る個体もいる。この時のペリットは白く半透明になったモクズガニの甲羅の塊だった。
長崎県対馬佐護 Field Noteから転記
バードウォッチャー憧れの野鳥に必ず挙げられる一種。野鳥を知らない人でもこのビビッド&トロピカルな色彩には思わず感動するでしょう!国内では5月から6月、主に春の渡りの遅い時期に日本海側の離島などで観察されます。20年近く前まで長崎県対馬ではまだ上県(かみあがた)が探鳥の中心で、5月のゴールデンウィークは北部の佐護に全国からバードウォッチャーが集まっていました。佐護川にヤマショウビンが出現するのは、毎年連休最終日辺りのきわどいタイミングでした。関西や関東など遠方から来ている人たちは少し早目に帰らないと連休明けの仕事に差し支えてしまいます。後ろ髪を引かれながら帰省し見逃してしまった人も多かったようです。水田、河川中・下流域、溜め池、貯水池、海岸線、農耕地、林などにも生息します。横に平べったく厚みのある嘴の形状を見るとわかりますが、アカショウビンと同様に悪食(あくじき)で、昆虫、両生類、爬虫類、甲殻類、魚類など様々なものを食べます。通常は対馬等のように河川のある日本海側の大きな離島で見られることが多いのですが、島だけでなく本土側でも結構出現します。地元津屋崎地区でも過去に二度記録(一度は越夏)があります。私もいつもヤマセミを見に行っていた英彦山系の河川上流域の渓流で一度遭遇したことがあります。時期はやはり5月下旬、ここでは短時間の滞在でした。
国内で記録のあるカワセミ科の鳥はアカショウビン、アオショウビン、ヤマショウビン、ナンヨウショウビン、カワセミ、ヤマセミ、ミヤコショウビン、ミツユビカワセミの8種類です。ミヤコショウビンは絶滅したと考えられており、世界にたった1羽、1887年2月に採集された嘴の無い標本が(公財)山階鳥類研究所に残っているだけです。
今回ご紹介するのはカワセミ類第2弾ヤマショウビン。バードウォッチャーなら誰でも一度は見てみたい鳥でしょう。(参考:第34回 Kingfishers T <ヤマセミ>)
主にインド、ミャンマー、中国南部などに留鳥として生息し、一部は夏期中国東部、朝鮮半島に渡り、冬期はタイ、マレーシア、シンガポールなどで越冬します。海外ではそれほど珍しい種類ではなく、過去に訪問した中国南部では水田地帯の電線や電柱にポツポツと止まっている姿を観察しました。日本では数少ない旅鳥で日本海側の離島などで主に春期観察されています。あまり鳴かないので声を聴く場面はそれほどないと思われますが、複数羽などで出現した場合では、鳴き交わす姿も観察されています。赤く巨大な嘴と赤い脚、頭頂から顔の上半分は黒く、喉・頸・上胸は白色、腹・脇腹から下尾筒までオレンジ色、次列雨覆、初列風切り先端は黒色、背・腰・上尾筒・尾、初列雨覆・次列風切りは光沢のある濃青色で非常に特徴的な色彩をしています。初列風切りは基部から半分以上が白く、飛翔中は大きな白斑となり遠方からもよく目立ちます。
終わりに
参考文献
注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。
2016-10-31掲載
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