波多野邦彦
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第47回 Snipes Ⅰ <アオシギ>
2001年1月 アオシギ
最初は背筋を伸ばし頭と尾を立てて三日月形の置物のようだったが、距離を詰めるにつれ体を棒のように細長くし、次第に姿勢を低く沈めていった。イラストは最終段階。嘴・胸・腹は冷水の中。もうこれ以上は無理というところまで体を低くしている。真上から見ると保護色が効いて、まるで折れた朽木のようにしか見えない。距離僅か3m程度。極限状態のため羽毛を体に貼りつけ目を大きく見開き、まるでタシギの様な顔つきに変わっている。身を切るほど冷たい清流だった。
福岡県犀川町祓川 Field Noteから転記
アオシギは山間部の渓流に生息するジシギの仲間です。光線の具合で体羽や翼にうっすらと青灰色味が感じられるところからその名前がついています。英名は Solitary Snipe 独りぼっちのジシギです。名前のとおり単独でいるケースがほとんどですが、一本の同じ川筋にバラバラに数羽が観察されたり、数羽が集まっていたりすることもあるようです。また以前、2羽が並んで飛ぶ姿を観察したことがあります。同様の環境にヤマシギやタシギ、その他のジシギ類は通常生息していませんので、山間部の渓流でタシギのように嘴の長いシギを見た場合はこのアオシギの可能性がかなり高いと思われます。
私が観察した限りでは、山間部の“自然渓流”よりも人工的な“コンクリート三面張りの大型側溝”で発見することの方が多いように感じます。体長30cm。オオジシギと同大です。上面は緑色の光沢がある暗褐色、下面は特徴的な太い褐色の横縞模様があります。嘴は直線的で長く、目先が長く特徴的な顔つきをしています。限られた生息環境から他のジシギ類と混同する可能性は低いと考えられますが、稀にヤマシギなどと重複している生息地域もあり、注意が必要な場合があります。
私が九州でアオシギを本格的に探し始めたのはイラストにあるように2001年の冬からで最初のシーズンから運よく見つけることができました。そもそも、それまでは九州ではアオシギの話はほとんどされなかったのではないかと思います。生息環境が明確になったこともあり、以降はポツポツと九州各地で発見されるようになりました。清流に住むということは基本的にヤマセミとほぼ同じような生息環境にいるということです。この2種はセットで探すといいのかもしれません。
アオシギは餌の取り方に特徴があり、体を震わせながらスクワット(脚の曲げ伸ばし)をやります。ヤマシギや他のジシギ類もやりますが、目立つ方だと思います。足を伸ばしたり縮めたり、微妙にからだを揺らすことで水中の川虫などを探しているのかもしれません。遠くからでも水路の中でこのスクワットをしているジシギがいたら、アオシギかな?と気づくことができます。余談ですが、ジシギの仲間のコシギは体は小さいですがもっとド派手なスクワット・ダンス?をやるようです。海外の動画サイトなどで楽しむことができますのでぜひ一度ご覧ください!!結構笑えますよ。
終わりに
参考文献
注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。
2017-01-17掲載
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