波多野邦彦
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第48回 Lapland Longspur <ツメナガホオジロ>
2011年1月 ツメナガホオジロ♂成鳥?冬羽
イラストのように小山の上で警戒姿勢を採ることは極稀れ1月下旬頃になると雄は後襟の赤味がかなり強くなる。この後次第に頭や顔の黒い部分が広がってくる。ツメナガホオジロの顔色彩の特徴は褐色の耳羽を取り囲むように暗色線が入ることと上下共に黄色い嘴。また上胸から脇腹にかけて複雑な模様が入るところ。以前MFにしていた小倉南区曽根でも観察したことがある。北部九州では数少ない旅鳥または冬鳥だと考える。ただし、毎シーズン飛来するわけではない。学生時代冬の北海道・道東。友人と二人、ツメナガホオジロとユキホオジロ200羽程の群れに遭遇し、両種ともに逃げずに採餌しながら接近してくるために身動きがとれなくなり、地面に座り込んで観察。取り囲まれたまま仕方なく昼飯にしたという、今考えると夢のような経験がある。
福岡県内 Field Noteから転記
2012年12月 ツメナガホオジロ(中央)とヒバリとの比較
違いが判りますか?動きがあるとより判りやすいです。ツメナガホオジロはヒバリ(大陸系大型亜種?)よりも少し小さく、翼は細長く先端に丸味があります。尾は短小で貧弱な印象。飛び方は羽ばたきと短い滑空を交えてカワラヒワに似ていますが、よりスピード感のある飛び方です。ヒバリのように時々フワフワ浮く動作はしません。目が良い人は胸や脇腹の複雑な模様を確認できます。飛び立ち時に最もよく鳴きますが、飛びながら鳴くこともあります。個人的な感覚かもしれませんが、飛翔中の小ささは双眼鏡よりも肉眼・遠景で見た方がわかり易く、特に前後方向から見たときの胴体の丸の直径がヒバリよりも小さいのがよくわかると思います。
福岡県内 Field Noteから転記
ツメナガホオジロは北方系の種類で通常は冬の北海道などで観察され、九州では見ることができない珍鳥だというイメージをお持ちの方が多いと思います。でも実は知る人ぞ知る、よく探せば冬の九州でも意外と見つかる「稀な冬鳥」です。数は少ないものの、開けた荒れ地や刈田に生息しています。地元ではヒバリの群れと行動を共にすることがほとんどです。但し、ツメナガホオジロを発見するためにはコツが必要です。群れが飛び立った時がチャンスです。飛翔中はコロンとした体つきと全体的に細長い翼、なぜか短小で貧相に見える尾などが特徴です。天気の良い日などはヒバリの群れが一度舞い上がると十数分降りてこないこともしばしば。飛翔群中のツメナガホオジロを見失わないように双眼鏡でずっと追いかけます。ようやく着地点を確認できても、着地した後は伏せるようにしているため、姿を確認できるまで時間と根気と運が必要です。採餌行動もジワジワと僅かずつしか動かず、起伏の多い耕地などにいるとからだの複雑な色彩も保護色が効いて、姿を確認するのがたいへん困難です。そうかと思えば、緊急時はホッピング&かなりのスピードで地上を走り回ることができます。雄個体は赤褐色の襟と胸・脇腹の複雑な模様が目立ちます。地色は白色。雌は雄に比べるとやや地味な体色をしています。襟は淡褐色で胸・腹も淡いベージュの地色に暗褐色の小さな斑が並びます。雌雄共に嘴が上下とも濃い黄色でかわいい顔をしています。
今回はツメナガホオジロにスポットを当てましょう。九州では普通見ることができない種類だとお考えの方も多いと思います。図鑑などにも「数少ない冬鳥として北海道、本州中部以北の海岸、草地、埋め立て地、裸地などに生息する。」(決定版日本の野鳥650、平凡社)このように記述があります。ただあまり知られていませんが、個人的には北部九州では数少ない旅鳥(秋季、主に10月初旬頃通過)または冬鳥だと考えています。
単独でいることもありますが、地元では通常ヒバリの群れに混ざっていることが多いようです。ヒバリがたくさんいても、ツメナガホオジロは特に警戒心が強いこともあり最初に飛び立ったヒバリの群れの中に入る確率が高いように感じます。至近距離なら飛び立つ際にヒバリの「ビュルビュルッ」という声の中に「キリッ」「キリリッ」「キチキチッ」という短く鋭くハスキーな声が聞こえてきます。目のよい人なら飛翔中、接近時に特徴的な顔や胸・脇腹の複雑な模様も見えます。見慣れると距離があっても飛翔形、飛び方、体型や大きさの違いなどが判るようになります。
■ヒバリの群れの中にいるツメナガホオジロを探すコツをご紹介します。ぜひMFでお試し下さい
終わりに
参考文献
注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。
2017-02-14掲載
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