クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2025-04-20

独断と偏見の識別講座Ⅱ

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波多野邦彦

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第50回 Eurasian Hoopoe <ヤツガシラ>

2006年3月 ヤツガシラ
ヤツガシラというと奇抜なスタイルと色彩が美しいとお感じの方は多いでしょう。一見派手そうですが、意外にもこの色彩には高い保護色効果があります。丁寧に見ると鮮やかなオレンジ色なのは折り畳んだ冠羽の内側だけで見える所はくすんだ色合いをしています。このややくすんだオレンジ色は、荒地や特に乾燥した赤土の上に居ると目立たなくなります。種類は違いますが、ちょうどアカツクシガモの色彩も同様です。また、背・翼・尾の太い白黒のゼブラ模様は細かく茂った枝の中に入り複雑な枝ぶりとその影が重なると、輪郭を消してしまいます。実際に遠距離から観察中、地上から細い枝が茂った枯れ木に飛び上がった途端、姿を見失いこのことに気づきました。試しに上のイラストを少し離れた所から目を細めて見てください・・・。いかがです?面白いでしょう!!

筑前相島 Field Noteから転記

2004年3月 ヤツガシラ
やや短く肉色味の強い嘴を持った個体だった。警戒心は個体差が大きく、遠く離れていてもこちらの姿をみてすぐに逃げる神経質なものもいれば、「きれいな私を見て」と目の前で羽繕いや伸びを披露してくれるおおらかなものもいる。興奮時などに冠羽を扇状に広げる

筑前相島 Field Noteから

ヤツガシラは一属一種、ユーラシア大陸に広く分布しアフリカやインド、東南アジアなどで越冬します。国内では春3〜4月頃が渡りのピークになります。秋は渡りのコースが異なるのでしょう、特に少なくなります。日本海側の離島や南西諸島などを通過する個体が多いようですが、本土側でもしばしば観察されます。
地上を歩いて採餌しているところに出くわすことが通常です。主に蛾や甲虫の幼虫など土中にいるイモムシ等を掘り出して食べます。驚いた時、羽繕い時や伸びをした時等に瞬間的に冠羽を開くことがあります。腰は白色。下背から次列風切りと一部雨覆いにかけて数本の白黒の縞模様があります。翼は幅広く、先端には丸みがあり、初列風切りと尾には幅広の一本の白帯があります。脇腹に疎らに褐色斑。嘴は先端が暗色、基部は灰肉色で下方へ少し曲がっています。脚は灰褐色。軽やかなリズミカルな羽ばたきで、ふわっ、ふわっと飛びます。

■終わりに

  • 通常野鳥は種類ごとに好みの居場所がほぼ決まっていますが、このヤツガシラほど場所を選ばない種類はいません。正に神出鬼没!逆に言えば、意識的に探すのが難しい種類です。グラウンドのように開けた場所から林縁、林道、畑、植え込み、河原、田圃、荒れ地、港、海岸線などありとあらゆる場所で観察されます。極端に狭い場所に入り込むこともあります。
  • 英名Hoopoeフープーはその声が名前になったもの。「ポポッ」「ポポポッ」とツツドリよりもやや高い音質で鳴きます。日本国内で私はまだこの声を聴いたことがありません。いつかぜひ聞いてみたいものです。
  • 余談。独偏講座第50回記念号(自称)の題材を何にするか?いろいろと迷いましたが、初めて見るまでたいへん苦労したこの野鳥に決めました。
    実は、私がこの鳥を最初に見たのは鳥見を開始して13年目の春。既に南西諸島や日本海側離島を経験していたにもかかわらず、昨日までいた、今朝までいた、ついさっきまでいた等々、いつもこんな感じで自分には縁の無い鳥だと半分諦めていました。勿論、現在のように携帯電話もインターネットも無い時代です。幸運は春の山口県萩市見島でやってきました。早朝探鳥を終え宿で朝食中、「ヤツを今見てきた!」と同宿者が戻ってきました。勿論食べかけのまま、北灯台コースを時速○kmで駆け上がりました。当時は歩きが基本です。登り坂最後の曲がり角、2羽のヤツガシラが待っていてくれました!?誰にでもなかなか出会えない種類がひとつはあります。何年も待ってようやく巡り会えたときの喜びは何ものにも替え難いものです。それ程恋い焦がれたヤツガシラでしたが、その後はほぼ毎年当り前のように観察できていて、あの時のような新鮮さや胸のときめきは感じなくなってしまいました!ん、どこかで経験したような・・・?

■参考文献

注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。

2017-04-15掲載

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