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くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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独断と偏見の識別講座Ⅱ

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波多野邦彦

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第51回 Shearwaters Ⅰ<アカアシミズナギドリ、ハイイロミズナギドリ、ハシボソミズナギドリ>

2012年6月 左からアカアシミズナギドリ、ハイイロミズナギドリ、ハシボソミズナギドリ

この時期、大洗−苫小牧航路で観察される代表的なミズナギドリ類3種。アカアシは単独または数羽で観察され、ハイイロとハシボソは大きな群れで出現する場合が多い。全長や翼開長はアカアシが最も大きく、イラスト順に小さくなる。アカアシは全身濃いチョコレートブラウンで、嘴と脚は淡灰桃色でよく目立つ。飛翔中、脚は見えない場合が多い。一方、白っぽい色彩で先端だけが暗色の太い嘴は遠目にもよく目立つ特徴的な識別ポイントである。ハイイロはハシボソと比較し、嘴が長く、頸や胴がわずかに太めに見える。翼下面は銀白色の光沢があるのが特徴。ハシボソは嘴が短小で、体つきは華奢に感じる。翼は細長く先端にやや丸味がある。多くの個体は翼下面が体色と同じ暗褐色だが、下雨覆いの大部分が淡褐色(ただしハイイロのような光沢は無い)の上記イラストのようなタイプの個体もしばしば観察され、こういった個体はハイイロに似るため要注意。アカアシの翼下面は体色と同じ褐色だがやや光沢があるため全体的に明るく見える傾向がある。ミズナギドリ類の識別では、特に飛び方に注目するほか、飛翔形(全体的なバランス)や細部の特徴(翼先端に丸味があるなど微妙な差異)、羽ばたきの速度、滑空の回数・時間、なぎ方などを含めた総合的な判断が常時重要になる。

大洗―苫小牧航路 Field Noteから転記

今回は前記3種類のミズナギドリ類について船上からの野外識別を中心に識別ポイントを勉強してみたいと思います。(便宜上、説明文中の名前は下部のミズナギドリを省略して記述しています。)特にからだやその他の部分の色彩については、洋上探鳥では日光の影響を受け易いため、説明文は晴天下かつ適度な光量かつ順光で観察した場合を基本条件として記述しています。悪天候や曇天下、強烈な光のもと、逆光の場合などは、その分を加味して考える必要がありますのでご注意ください。

■アカアシミズナギドリ

全長46−48cm、翼開長110−120cmの中型ミズナギドリ類。全身べったりとした暗チョコレート褐色。翼下面は光沢があり光線の具合で淡く見える場合がある。浅い羽ばたきと滑空を交えた飛び方をする。本種は太平洋ニュージーランド北島、ロードハウ島、また南インド洋セントポール島などの島嶼で繁殖し、非繁殖期に太平洋を北上、5月頃日本近海に達する。翼は長く幅が広く、先端に丸味がある。嘴は太く淡灰桃色で先端が暗色、脚も同様に淡灰桃色で、遠距離からは嘴・脚共に白っぽく見え暗褐色の体色とのコントラストが明瞭で本種の重要な識別ポイントになっている。但し飛翔中の脚は見えない場合が多い。頭が大きく、胴体も太めでがっしりとした印象。尾も長めで、足指は尾先端から突出しない。採餌時は海中を翼を使って泳ぎ、餌を追って深さ50m近くまで潜ることが知られている。

■ハイイロミズナギドリ

全長40−46cm、翼開長94−105cmの中型ミズナギドリ類。世界中の海洋に広範囲に分布し、ニュージーランド周辺、オーストラリア東部、南アメリカ南部周辺の島嶼で繁殖し、非繁殖期には太平洋を北上しベーリング海付近まで、また大西洋でも観察されグリーンランド南部付近まで北上する。日本近海では特に春先から6月頃太平洋を北上する大群が見られる。以下基本的によく似た後述のハシボソとの比較を前提に記述する。浅く速いはばたきと滑空を繰り返し、やや直線的に飛翔する。体色は全身暗灰褐色で黒味がわずかに強い。嘴が長く見え、頸も太くやや長めに見える。体つきは胸が張り、太めの体型。翼下面は雨覆いの部分が広く銀白色で、順光下では光沢があるように見える。図鑑によっては飛翔中反転する際に翼が撓(しな)って見えるとの記述もある。翼開長に対する全長の比率は、45%程度で胴体がやや長めに見える。採餌時は海中を翼を使って泳ぎ、深さ60m近くまで潜ることが知られている。

■ハシボソミズナギドリ

全長40−45cm、翼開長95−100cmの中型ミズナギドリ類。太平洋から南インド洋にかけて生息する。オーストラリア南東部やタスマニア島周辺で繁殖し、5月〜8月頃太平洋を北上する大群が日本近海で観察される。この時期、日本海側でも少数がオオミズナギドリの群中や単独で観察されることがある。日本の沖合を北上した大群は北太平洋に達した後、北米沿岸を南下、太平洋を横切って繁殖地に戻る超長距離の渡りを行うことで知られている。以下基本的によく似た前述のハイイロとの比較を前提に記述する。浅く速いはばたきと滑空を繰り返し、やや直線的に飛翔する。嘴は短小、頸はやや細めに見える。体つきは寸胴で華奢に見え、翼は細長く先端にやや丸味がある。全身暗褐色、翼下面は体色と同じ暗褐色の個体が多いが、雨覆い部分が淡褐色の個体もしばしば観察される。こういった個体は一見ハイイロに似るので注意が必要。ただし、体色よりも薄めに見える程度で、ハイイロのような銀白色の光沢は無い。翼開長に対する全長の比率は、40%程度で胴体が短かめで翼がやや長く見える。ハイイロと同様に採餌時は海中を翼を使って泳ぎ、深さ50m近くまで潜ることが知られている。

終わりに

  1. 海鳥観察については、まず船上からの観察に慣れることが一番です。目標物も無く、広大な視界の中の一点を捉えます。しかも対象の鳥は薙ぎながら飛んでいます。観察するこちら側も船上で揺れています。双眼鏡の視野内に目標を素早く正確に捉える練習が必要です。
  2. 実際には船上で図鑑をめくって改めて特徴を確認している余裕はほとんどありません。一旦捉えた対象から目を離すとすぐに見失ってしまうからです。今回の場合、ハイイロやハシボソは多数出現するので大丈夫ですが、アホウドリ、トウゾクカモメ類やウミツバメ類は単独の出現で全行程合わせても数羽程度です。千載一遇のチャンスをものにするためにも事前学習が必須です。
  3. ミズナギドリ類については種類ごとに飛び方に特徴があり非常に重要な識別ポイントですが、前述の飛び方の説明は、穏やかな海上で且つ風も弱い場合を想定しています。一方、強風・荒波の条件下では翼をM字型に固めほとんど羽ばたかず、なぎ幅も大きな飛び方をしたり、逆に海面すれすれを飛翔したりする場合があります。このように同じ種類でも気象条件が変わると飛び方も大きく変化しますので、これから海鳥を勉強しようとお考えの方は種類ごとの知識を蓄えるとともに、できれば洋上探鳥の経験を積み重ねることが大切になると思います。

注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。

参考文献

  • BIRDS OF EAST ASIA: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON AND OXFORD
  • Collins BIRD GUIDE: THE MOST COMPLETE FIELD GUIDE TO THE BIRDS OF BRITAIN AND EUROPE: Harper Collins Publishers Ltd.
  • ALBATROSSES, PETRELS & SHEARWATERS OF THE WORLD: PRINCETON FIELD GUIDES
  • Petrels, Albatrosses, and Storm-Petrels of North America: A Photographic Guide: Princeton University Press Princeton and Oxford
  • アホウドリ復活への展望 (公財)山階鳥類研究所
  • 決定版日本の野鳥650 真木広造、大西敏一、五百澤日丸 (株)平凡社
  • フィールドガイド 日本の野鳥 高野伸二著 増補改訂初版第1刷 2015年6月1日発行 公財)日本野鳥の会
  • 海鳥識別ハンドブック 箕輪義隆著 文一総合出版

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