クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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独断と偏見の識別講座Ⅱ

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波多野邦彦

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第52回 Waders Ⅱ Tringa <タカブシギ、クサシギ、コシグロクサシギ>

2015年10月 タカブシギ(上)幼鳥とクサシギ(下)幼鳥
クサシギの白黒コントラストの強さが目を引く。シギチドリ類は地味な色彩で似た種類が多いが、地上に降りているときよりも飛んだ時の方が違いがはっきりとわかる種類もある。翼の白斑の有無や位置、背・腰・尾の色彩、嘴の形状や足の長さなど飛翔時のパターンを覚えておくと識別に大変役立つ。

津屋崎 Field Noteから転記

シギチドリ類の識別では飛翔中の体形、色彩パターンの確認が有効だ。地上にいる時よりも、飛翔時のこれらの特徴を比較した方がわかり易い種類も多い。体型、翼上下面の色彩、翼の幅、腰、尾上面の色彩、尾からの趾(あしゆび)の出方、飛び方、声など。タカブシギは全体的にスマートな体型で特に後ろに向かって細長くなる。趾全体が尾を超えて見える。尾上面は白色の地に褐色の細い横帯が数本あり、遠目ではぼんやりとして見え、翼下面は汚白色でやや明るく見える。嘴は直線的で短い。一方、クサシギはからだがやや太めで趾が僅かに尾を超えて見える程度。尾上面は白色の地に先端に二本黒く太い帯が入り、遠目からは白い尾の先端に黒い塊があるように見える。翼下面は暗黒色で純白の胸・腹とのコントラストが強く出る。嘴は直線的で長い。飛び方はタカブシギが素早く羽ばたくのに比べて、クサシギは羽ばたきの回数は少なめでスピードに乗った滑空を頻繁に行う。タカブシギは高空を数羽から数十羽の群れで飛ぶことが多く「ピピピピピ・・・」と柔らかい声で鳴き、クサシギは単独の場合が多く時々鋭く「チュイーッ」「チュィリイーッ」と一声、二声を発する。声で気づくことも多い。

クサシギ属( Tringa )のシギ類には多くの種類がいます。今回はこれらの中でも最も身近で観察の機会も多いと思われる、クサシギ、タカブシギについてご紹介します。そしてもう1種類、日本未記録種ですがクサシギに類似した北米産のコシグロクサシギについても説明しておきたいと思います。

■タカブシギ

春秋の渡りシーズンに数羽から数十羽の群れでいることが多い。南方の地域では越冬する個体も少なくない。主に内陸部の水田、湿地などの淡水域に生息し、海水域に入ることはほとんどない。開けた場所にもいるが、稲や草の生えた湿地などにもよく潜っているので注意。雌雄同色。スマートな体型、上面に小白斑が多くあり、地味ながら美しい色彩。尾を頻繁に上下に振る。脚は黄緑色や黄色でやや長め。飛翔中は尾先端から指全体がちょうど出て見える程度。翼下面は汚白色でクサシギと比べると明るく見える。尾の上面には細い横帯が数本あり遠目にはぼやけて見える。「ピピピピピッ」と連続した、柔らかい声で鳴く。幼鳥は上面の褐色味が強く、淡黄色の細かな斑が点在する。

■クサシギ

旅鳥または冬鳥として主に河川や湿地などの淡水域に飛来、関東以南の地域で越冬する。単独あるいは数羽でいることが多く、群れにはならない。「キョピーッ」「チュイリィーッ」というけたたましい声を発し、飛び立つことが多い。雌雄同色。ややぽってりとした体型。上面はやや緑色味がある暗褐色で細かな小白斑が点在する。体下面は白色で濃い上面とのコントラストが明瞭。尾を上下に振る。白いアイリングと目の後方に伸びない眉斑が特徴的。嘴は長めで直線的、青灰色で先端は暗色。脚は青緑色で短め。飛翔中は指先端が僅かに尾を超える。翼下面は暗色でタカブシギと比較しかなり黒く見え、翼の幅も広い。また、イソシギのように翼を細かく震わせる飛び方もすることがある。尾の上面は白色で先端に太い黒帯が二本程度見える。幼鳥の上面には黄色の小斑が密にある。

■コシグロクサシギ Tringa solitaria Solitary Sandpiper

コシグロクサシギはアメリカ(新北区)に分布し、北アメリカ北部、アラスカ、カナダ等で繁殖し、中南米で越冬する。日本国内では今のところ未記録種であるが、今後出現の可能性が高い種類。色彩はクサシギに似て暗褐色の上面と白色の下面とのコントラストが明瞭であるが、大きさや体格はほぼタカブシギと同じで、クサシギよりも小さくほっそりとして華奢な印象を受ける。最大の特徴は腰から中央尾羽が暗色で尾上面の左右に細かな横帯が出ること。声はクサシギに似るがよりソフトで優しい声質。

■クサシギとタカブシギ相違点一覧表

クサシギタカブシギ備考
体形・体勢やや太って大きい
からだがやや横向き
ほっそりとしてスマート
からだがやや立ち気味
嘴形状・色彩青緑灰色で長く先端暗色黒褐色で頭長と同程度嘴の長さは嘴基部から後頭までの長さとの比率で測ります
眉斑形状基本的に目の後ろに伸びない淡色で太く明瞭。
上胸色彩水平に白い腹との境目明瞭細かい縦斑ありぼやける
背・翼上面全体的に暗緑褐色褐色の細かい模様飛翔時目立つ特徴
尾・腰上面白く尾先端に黒斑塊に見える白く細かな横線 ぼんやり
翼下面暗色で黒っぽく見える汚白色に見える飛翔時目立つ特徴
脚長さ
色彩
飛翔時尾をわずかに超える
緑灰色
飛翔時尾を長く超えて見える
淡黄緑色
腰・上尾筒・
尾の色彩
白地に太く数本の横帯。遠距離から先端のみ黒色に見える白地に細かい褐色の横帯
遠距離ではぼやけて見える
「キョピーッ」「チュイリィーッ」と鋭い一声。「ピピピ・・」と柔らかく連続した声声だけで両種は識別可能

2015年8月 クサシギ成鳥夏羽(左)、タカブシギ成鳥夏羽(右)
この時期、クサシギは体羽が擦れ、顔・頸・上胸にかけて白黒がより粗くコントラストが明瞭になる。羽根が擦り減ったぶん、ほっそりと見えるためタカブシギに外見の印象が少し似てくる。タカブシギも全体の羽毛が擦れてさらにほっそりとした印象に変わる。単独の場合は要注意。嘴の長さ・眉斑の形状、尾上面先端の模様、翼上面・翼下面の色彩、胸の色彩、足の色・尾からの突出度、声、飛翔中のバランスなどふだんから総合的な識別をしていれば何ら問題はない。

福津市津屋崎 Field Noteから

シギチドリの秋の渡りは、まだ猛暑が続く夏の盛り8月頃から始まる。炎天下、エンジンを止め蒸し風呂のような車内から観察するのは本当にたいへんな作業だ。夏羽の成鳥は、体羽が擦り切れボロボロで、少し痩せて見える。また、羽縁の白黒模様の白色部分が擦り減って黒褐色の模様がよく見え始め、全体的に黒味が強い色彩になり、あまりきれいとは言えない。一方、その年生まれの幼鳥は擦れも無く新しく非常に美しい羽を纏っている。これらは秋のシギチドリ類の羽衣の特徴。同じシギチドリ類の観察でも、春と秋では頭の中の基準を切り替えて観察する必要がある。

終わりに

  • タカブシギは英名 Wood Sandpiper 森(林)のシギと呼ばれている。シギチドリ類、多くの種類は湿地の草が堆積した地上に営巣し、タカブシギも同様だが、しばしば他の小鳥が使った後の樹上の古巣なども利用することがあるようだ。
  • クサシギとタカブシギの識別については差異も多く、慣れればそれほど難しいものではない。個人的な意見だが、敢えて似ているというケースなら九州での出現可能性は低いが北米に生息するコキアシシギ Tringa flavipes Lesser Yellow-legs とタカブシギの識別の方がより気を使うのではないかと考える。九州でこの2種を比較できるようなことが実際に起きないかな!?と密かに夢見ている。

注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。

参考文献

  • BIRDS OF EAST ASIA: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON AND OXFORD
  • SHOREBIRDS An identification guide to the waders of the world Peter Hayman, John Marchant and Tony Prater: CROOM HELM London & Sydney
  • フィールドガイド 日本の野鳥 高野伸二著 2015年6月1日 増補改訂初版第1刷発行 公財)日本野鳥の会
  • 決定版日本の野鳥650 真木広造 大西敏一 五百澤日丸 (株)平凡社
  • シギ・チドリ類ハンドブック 氏原巨雄・氏原道昭/著 文一総合出版

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