クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2017-07-26

独断と偏見の識別講座Ⅱ

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波多野邦彦

総目次

第53回 Bittern、Pond Heron Ⅲ <オオヨシゴイ、ヨシゴイ>

オオヨシゴイ

1979年6月 オオヨシゴイ雄成鳥
アシ原の中でも灌木などのあるやや乾燥した場所を好む。婚姻色の雄では目先が赤くなるものがある。喉中央に一本褐色線がある。瞳孔の後ろ側に暗色斑があり周囲と繋がり特異な顔つきに見える。

茨城県霞ヶ浦 Field Noteから転記

40年近く前、私の学生時代、茨城県霞ヶ浦・浮島草原はヨシゴイとオオヨシゴイの繁殖地として有名でした。当時からオオヨシゴイの数はそれほど多くはなかったのですが、現地に行けばまず見逃すことはありませんでした。
同じ湿地帯の中でもヨシゴイよりもやや乾燥した場所を好み、ヨシよりもその中に点在する灌木やブッシュなどにとまることが多いようでした。虹彩はレモン色で瞳孔の後ろ側に黒斑があり周囲と繋がっているため特異な顔つきに見えます。栗色味がかった褐色の上面は飛んでいる時によく目立ち、灰黒色の初列・次列風切と淡灰色の雨覆いとのコントラストが明瞭です。翼下面は全体が一様に灰色でヨシゴイのような黒い風切とのコントラストはありません。
夏鳥として渡来し、本州中部以北で局地的に繁殖しています。九州では数は少ないものの各地に記録があります。近年長崎県対馬では秋の渡りの時期に少数が毎年定期的に観察されています。繁殖地ではヨシ原の乾燥化や開発による消失などにより、個体数の減少が非常に顕著です。現在はCR:絶滅危惧TA類に指定されています。
皆さんはヨシゴイについてはご覧になったことがあると思います。地元管内、直方地域(福岡県)にも有名な探鳥地があり、そこに行けばまず間違いなく観察することができます。数年前の九州大水害の前は飛んでいる雄だけでも十羽以上を数えました。営巣・抱卵している雌まで含めると狭い場所で相当数が繁殖していたと考えられます。水害で水没し、翌年は渡来がいったん途絶えましたが、ここ数年回復傾向にあるようです。
一方、オオヨシゴイは本州中部以北で局地的に繁殖するため、九州では渡りの時期に通過するだけです。また、近年は環境の悪化に伴う個体数の減少が顕著になっており、ほとんど見られなくなりました。
今回の識別講座はこの小型サギ類2種について紹介します。

■ヨシゴイ

北インドから中国東部、朝鮮半島、沿海州、日本などで夏鳥、インド、パキスタン、ミャンマーなどで留鳥、ボルネオやインドネシアで越冬する。日本産サギ類中最小。ヨシ原のある湖沼、湿地、沼、溜池などに生息する。雄は額から頭頂にかけて青灰黒色で背・翼上面雨覆いは黄褐色。婚姻色では目先が赤味を帯びる。雌や幼鳥は全体に褐色味が強く、体上面にはオオヨシゴイのような白色斑は無く、体下面に数本の褐色縦斑が入る。翼上面・翼下面ともに灰黒色の初列・次列風切と淡色の中・大雨覆とのコントラストが明瞭で、翼下面全体が淡灰褐色のオオヨシゴイと大きく違う識別ポイントになる。籠った低い声で「ウォーッ、ウォーッ」と鳴き、特にまだ薄暗いうちや夕暮れ時に活発に活動する。飛翔はたいへん軽々とふわふわと浮くような飛び方をする。

■オオヨシゴイ

中国東北部、沿海州、日本で繁殖し、冬期はマレーシア、インドネシア、フィリピン等で越冬する。極東地域限定の種類。巻頭イラストおよび解説参照。雄は上面が栗色味のある赤褐色、体下面はクリーム色で無地、喉から胸中央に一本の褐色縦斑が通る。翼上面、中・大雨覆が灰色で飛翔中はよく目立つ。繁殖期に入ると雄の目先は鮮やかな濃ピンクや赤色に変わる。嘴は灰黒色。虹彩は黄色で後ろ側に暗色斑があるため、瞳孔と繋がり、これが特異な顔つきに見える要因になっている。雌や幼鳥は褐色味が強く、上面に細かな白色斑があり、体下面には数本の褐色縦斑が入る。目先や嘴は黄色味があり、嘴峰は灰黒色。夏鳥として本州中部以北に渡来し、少数が局地的に繁殖する。繁殖期の雄はやや高い犬のようなこえで「ウォッウォッウォッウォッ・・・・」と連続して鳴く。近年個体数が著しく減少し、著名な繁殖地でもなかなか見られなくなったようだ。春秋の渡りの時期に稀に記録される程度になっている。

■飛翔時の識別ポイント

オオヨシゴイ雄成鳥(左)、ヨシゴイ雄成鳥(右)

色で、初列・次列風切は灰黒色。翼下面は全面が一様に灰色で雨覆と風切りの色彩差はない。一方、ヨシゴイ雄成鳥は、体は全体が黄褐色で頭頂部分が青灰色。翼上面は中・大雨覆いが淡クリーム色で初列・次列風切りは灰黒色。翼下面の色彩が最もオオヨシゴイと違う部分で、クリーム色の雨覆と暗灰色の初列・次列風切との間に明瞭なコントラストが出る。

終わりに

  1. ここ20年内にバードウォッチングを始めた人はオオヨシゴイを未だ見ていない方が大勢いらっしゃると思います。それ程、近年個体数の減少が顕著な種類です。一方、頻度は少ないのですが渡りの時期などには思いがけない場所で見つかったりします。ふだん人出の多い街中公園の池、散歩コースの小さな溜め池、大学キャンパス内にある人工的な池、稲田の畔、狭小なヨシ原、小さなハス田・湿地など、およそ珍鳥が潜んで居るとは想像できないような場所です。九州であれば、季節は秋シーズンの早い時期、9月後半〜10月初旬頃が最も可能性が高いように感じます。いつか自分も遭遇できると信じて注意を怠らないことが大切でしょう。
  2. サギ類の特徴として粉綿羽(ふんめんう)があげられます。粉綿羽は一生換羽しない特殊な羽毛で、胸部のかなり広い部分に生えていて、先端からボロボロと壊れ耐摩耗性、耐水性のある微小な角質の粉末になります。サギ類はこの粉末を他の羽に塗りつけ、汚れや水濡れなどを防ぐために利用しています。櫛爪(くしづめ)は中趾の先端が櫛状にギザギザになっていて前述の粉綿羽の粉をからだに塗るときに使うのに役立つといわれています。
  3. サンカノゴイ、ヨシゴイ、オオヨシゴイ、リュウキュウヨシゴイ、タカサゴクロサギ、ミゾゴイ、ズグロミゾゴイ、ゴイサギ、ササゴイ。○○ゴイ属のサギ類は他のシラサギの仲間とは違ってどれも個性的、魅力的です。ゴイサギ以外は珍鳥が多いのも特色ですが、そのゴイサギも近年数を減らしているようです。理由ははっきりとわかりません。そういえば、あまり見かけなくなったと思いませんか?機会があれば夜の田んぼを覗いてみてください。昼間見かけなくなったゴイサギも夜なら餌を求めて活発に動き回る姿を見せてくれるはずです。

参考文献

  • Birds of East Asia: Princeton University Press Princeton Oxford
  • A Guide to the Birds of Southeast Asia CRAIG ROBSON: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON, New Jersey
  • 決定版日本の野鳥650 真木広造 大西敏一 五百澤日丸 (株)平凡社
  • フィールドガイド 日本の野鳥 高野伸二著 2015年6月1日 増補改訂初版第1刷発行 公財)日本野鳥の会

注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。

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