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くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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独断と偏見の識別講座Ⅱ

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波多野邦彦

総目次

第54回 Pipits & Wagtails Ⅱ <ウスベニタヒバリ>

2009年3月21日 ウスベニタヒバリ 第1回冬羽⇒第1回夏羽
淡黄緑色の小雨覆とレモン色の腋羽が美しい。ピンク色の夏羽とともにこのタヒバリの最大の特徴。

福津市 Field Noteから

ウスベニタヒバリ最大の特徴と言っていい、淡黄緑色の小雨覆とレモン色の腋羽。背の地色はモスグリーンからやや淡褐色味が増してきた。上胸の太い黒色斑はほぼ見えなくなり、側胸、わき腹などに小さな斑が疎らに残る程度。イラストでは薄く見えるが、胸・腹のピンク色は全体的にかなり色が濃くなっている。曇天下だとこの色彩がよくわかる。このとき眉斑はまだ淡黄色のままで、最終的には渡去直前の4月第1週目の終わりころになってようやくピンク色に変わった。
2009年1月25日(日)早朝。昨日午後から降り続いた大雪で当地では珍しく10cm程度の積雪があった。低く厚い雲に覆われ暗い朝だったが午後からさらに積雪があるとの予報のため、午前中だけでも調査しておこうとノロノロと運転に注意しながらマイフィールドの地元津屋崎地区に出かけた。真っ白な雪景色になった広大な畑地帯に東西南北、格子状に黒く細い水路が走る。その内の1本、水がひいた泥底でハクセキレイと一緒に非常に黒っぽいタヒバリが採餌していた。30分ほど観察したのち、風雪が激しくなり探鳥を切り上げた。以上が発見当日の様子。

2009年1月31日 ウスベニタヒバリ 第1回冬羽
幅広で先端が下方に鉤状に曲がった眉斑、直線的で細く先端が尖った嘴の形状は特徴的。顎線は無い。背の黒色と淡色の太い縦斑もよく目立つ。胸の暗色縦斑も太く明瞭。前述の夏羽イラストと比較。次列風切羽縁が形作るレモン色の三角形が美しい。

福津市 Field Noteから

後端が鉤型に曲がる太く明瞭な淡黄色の眉斑。先端が尖った直線的で細い嘴。顎線無し。背に太い黒色と淡黄色の縦斑目立つ。胸に明瞭な黒色縦斑。全体的に非常に黒っぽく見えるところは他のタヒバリ類と異なるポイント。三列風切及び尾の羽縁は幅広く淡褐色。畳まれた次列風切羽縁がレモン色の不等辺三角形を形作る。重要な識別ポイントとなる淡黄緑色の小雨覆とレモン色の腋羽は通常見えない。脚は暗褐色で後趾の爪は黒色でやや湾曲し長さは後趾と同等。地鳴きはやや擦れた「ピピッ」「シシィッ」でタヒバリによく似ている(区別困難)。
越冬終盤の模様。2009年3月1日。3月に入り、胸・腹のピンク色味が増してきた。同時に黒色斑が小さく疎らになってきた。眉斑の淡黄色は変わらず。冬羽の時も同様だが、顎線はほとんどない。上面、背の太い黒色縦斑の間の淡色縦斑はほぼ消滅し全体がモスグリーン地に黒色縦斑に変化。次列風切羽縁のレモン色はやや彩度が鈍くなった感じ。淡黄褐色の三列風切外側羽縁は明瞭、内側はややボケる。腰は淡緑褐色の地にうっすらと数本の細い暗色縦斑が入る。尾は黒褐色の軸斑で淡黄褐色の幅広い羽縁がある。暖かくなるにつれ次第に行動にも変化が見られるようになった。周辺のシロツメクサなどの雑草が伸び始めると、その中を隠れて移動することが多くなり、発見までに時間を要するようになってきた。

終わりに

  1. 本種は永く「チョウセンタヒバリ」という種名で知られていました。私も学生時代からその名前は知っていましたが、夏羽がピンク色になるということくらいしか判りませんでした。もともと朝鮮半島に生息している種類ではなく、名前に合理性が無いことからも、今回正式に国内初記録として認められるのを契機に新しい種名を提案しました。桜の咲く時期と色合いからサクラタヒバリ、夏羽の色彩からモモイロタヒバリ、ヒマラヤ山脈山麓に生息することからヒマラヤタヒバリ、関係メンバーでいろいろ考えましたが、名前から受ける上品さと最も夏羽の色彩を表している表現から「ウスベニタヒバリ」を提案しました。
  2. 1月25日の発見から4月中旬渡去するまでの約3ヶ月間、50m程の長さの直線水路からほとんど離れることがありませんでした。最も頻繁に出現し採餌していた範囲はさらに狭く、長さ約20m程度。タヒバリ類にはよく見られる行動ですが、お気に入りの場所(水辺)への依存度が非常に高いという習性がよく表れていたように感じました。

参考文献

注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。

(2017-08-15掲載)

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