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くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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独断と偏見の識別講座Ⅱ

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波多野邦彦

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第55回 Flycatchers Ⅲ <エゾビタキ、サメビタキ、コサメビタキ>

2014年10月 向かって左からエゾビタキ、サメビタキ、コサメビタキ 全て第1回冬羽

胸の縦斑だけで判断すると誤認する可能性がある。大きさ、目先の色彩、嘴の形状、下尾筒、翼先端の位置など常時総合的な判断が必要。それぞれ体色には個体差はあるが、最も顔が暗くアイリングがくっきりと目立つのはサメビタキ。体色も濃灰色で最も黒っぽく、嘴が一番短小に見える。エゾビタキはからだが他2種よりも一回り大きい。顔全体が灰褐色でアイリングは白く目立つものからほとんど見えないものまでいる。コサメビタキは3種の内では最も明るい体色をしているが、光線の具合で濃い灰色に見えたり、胸に縦斑があったりする場合もあるので要注意。また嘴が最も横に幅広い。

津屋崎 Field Noteから

上記3種については識別で苦労される方も多いのではないかと思います。エゾビタキとコサメビタキ2種だけであれば迷うことはないのでしょうが、サメビタキが入ることで双方との区別を難しくしているようです。今回はエゾビタキ、サメビタキ、コサメビタキの識別についてお話しいたします。

冒頭のイラストは秋の渡り、羽衣が新鮮で擦れが少ない第一回冬羽。大きさはコサメビタキとサメビタキが13〜14cmでほぼ同大。エゾビタキはひとまわり大きく15cm、オオルリ16.5cmとのちょうど中間程度。この大きさの差は慣れると肉眼でも解ります。但し、前2種は単独でいる時に大きさの把握が難しい場合もあるため注意が必要。3種類ともにフライングキャッチを頻繁に行いますので、距離があっても枝先にとまりこの行動をとっている小鳥がいれば目星がつくと思います。飛んでいる小さな昆虫を目視により空中で捕食する性質のために、目標を正確に捉えるため目は大きく、素早く餌を追って飛びまわれるように翼は長くなっています。また嘴は長くはないのですが、口を大きく横に広く開けられるようになっています。餌取りを近くで観察していると時々「パチンッ」という音が聞こえますが、これは嘴を閉じるときの音です。

エゾビタキの体色は通常、上面(頭・脊など)は僅かに褐色味のある薄い灰色で下面(胸・腹)は同色か暗褐色の縦斑ですが、中にはサメビタキのように上面が濃灰色の個体もおり、こういった個体は下面も濃灰色の太い縦斑が密集し、一見サメビタキ風に見えることがあります。ただし、胸・腹の地色は白色です。サメビタキは濃灰色の胸の縦斑がかなり明瞭な個体がいますが、胸の地色は灰色でここがエゾビタキとは違う部分です。他にからだの大きさ、顔の暗さと相対的に際立つ白く明瞭なアイリング、下尾筒の暗褐色の軸斑があることなどで他2種と区別します。コサメビタキも体色は薄いものから濃いものまで様々、胸に不明瞭な縦斑が見えるものもいます。静止時の尾に対する初列風切り先端の位置や最長三列風切からの初列風切の突出度合(Primary Projection・プライマリープロジェクション)なども図鑑によっては識別ポイントとなっていますが、見る角度などで判りづらく、参考程度に考えた方が良いようです。
因みに翼が長いのはエゾビタキとサメビタキの2種。地鳴きは3種類とも様々な声を出しますが、基本的に「ツイッ」「ツェッ」「ツィーッ」といった金属的で少ししわがれた独特な声を出し、この声だけで存在に気づくことがよくあります。コサメビタキは特に小さな声で長くぐぜっていることがあります。渡ってくるタイミングは春秋ともにエゾビタキ、コサメビタキの2種が先行し、サメビタキはやや遅めです。

■識別ポイント一覧表

特徴\和名エゾビタキサメビタキコサメビタキ
全 長15cm14cm13cm
目先の色彩淡色で不明瞭下半分が暗色淡色
嘴の色・形状幅が狭い3種中最も短い3種中最も幅広い
背の色淡灰褐色暗灰色淡灰色
胸・腹の縦斑明瞭、地色白色明瞭・密、地色灰色不明瞭、汚白色
初列風切突出度合最長三列風切より長い最長三列風切と同等か僅かに長い最長三列風切と同等か僅かに短い
その他目先が暗色の個体も希に見られる下尾筒に暗褐色軸斑
幼羽雨覆羽縁淡橙色
顎線が無いかまたは非常に薄い
個体差による相似目先や胸の縦斑が非常に濃い個体はサメビタキに似る体色が薄い個体はほとんどいない体色が暗色で胸に縦斑が出る個体はサメビタキに似る

■エゾビタキ

シベリア南部、サハリン、カムチャツカ半島南部等で繁殖し、冬季はフィリピン、スラウェシ島、ニューギニアなどへ南下し越冬する。旅鳥として全国各地の平地から山地まで様々な場所で観察される。特に秋の渡り(8月中旬〜10月)の個体数が多い。国内では繁殖しない。秋に見られる幼鳥は体上面に白い星状の斑があり、中にはたくさん持つものもいるが、第1回冬羽への換羽で次第に消えていく。

■サメビタキ

アフガニスタン、ヒマラヤ山脈、シベリア東部、サハリン、カムチャツカ半島などで繁殖し、冬季はユーラシア大陸南部、インドネシア、フィリピンなどへ南下して越冬する。夏鳥として本州中部の山岳地帯から北海道にかけて生息する。個体数はやや少なめで、渡りの時期は春秋ともに3種の中では最も遅く通過していく。識別ポイントは前述のとおりだが、意外と見落としがちなのが下尾筒にある暗灰褐色の軸斑。1〜3枚程度見えることが多い。

■コサメビタキ

シベリア南部、朝鮮半島、ヒマラヤ山脈などで繁殖し、冬季はユーラシア大陸南部、インドネシア、フィリピンへ南下し越冬する。夏鳥として九州から北海道の落葉広葉樹林に生息する。九州でも繁殖しており、夏季山地などで見られることがある。

■終りに

  1. 今回のヒタキ3種は意外と皆さんの身近にいる小鳥です。春秋の渡りシーズンには市街地の公園、農耕地周り、明るい林の林縁、庭園、低山など比較的開けた場所で観察されます。枝先や樹の頂上などでフライングキャッチを繰り返しますので観察し易いこともあって人気の種類です。
  2. 好みの樹木があり、カラスザンショウやクマノミズキなどの小さな実が好物で秋の渡りの時期にはこれらの樹々によく集まっています。一方、林に囲まれたゴミ捨て場やたい肥置き場などのハエ、アブなど小虫がたくさんいるような場所にも集まってきます。秋シーズンはすでに始まっていて11月初旬頃までは観察することができます。

■参考文献

  • Birds of East Asia: Princeton University Press Princeton Oxford
  • Collins BIRD GUIDE The Most Complete Field Guide To The Birds of Britain and Europe: HarperCollins Publishers Ltd
  • A Guide to the Birds of Southeast Asia CRAIG ROBSON: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON, New Jersey
  • 決定版 日本の野鳥650 真木広造 大西敏一 五百澤日丸 (株)平凡社
  • フィールドガイド 日本の野鳥 高野伸二著 2015年6月1日 増補改訂初版第1刷発行 (公財)日本野鳥の会

注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。

(2017-09-15掲載)

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