クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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独断と偏見の識別講座Ⅱ

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波多野邦彦

総目次

第57回 Gulls in Kyushu Ⅱ <九州のカモメ類Ⅱ>

九州のカモメ類(A3版用紙左側)

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去る、平成29年9月3日福岡市油山自然観察センター研修会で使用した資料。カモメ類の経験が浅い受講者の方が多いということで、対象種を九州で観察できる種類に絞り、さらに成鳥冬羽を基本モデルとして一覧表にしたもの。それぞれの識別ポイントは手書き記入。これだけでも結構な情報量があり、覚えるのがたいへんそうです。
最上段左からシロカモメ、ワシカモメの大型カモメ類2種。そして二段目左オオセグロカモメから以下、セグロカモメ、ウミネコ、カモメ、ユリカモメ、ズグロカモメを「九州で見られるカモメ類基本6種」として掲載しました。
次頁と組みでA3版の大きさなので持ち運びには不便ですが、一覧表に並べてみると大きさ、体型、背の灰色の濃淡、その他の特徴を一目で比較することができます。一応、左右の種が対で比較対象種になっています。この段階をクリアできたら、成鳥夏羽、第1回冬羽、幼羽等、他年齢毎の羽衣へスキルアップすることを目指しています。

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九州のカモメ類(A3版用紙右側)

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こちらは前半のものと少し趣を変え、セグロカモメの仲間、モンゴルセグロカモメ、ホイグリンカモメ、タイミルセグロカモメの3種(亜種)と九州では数少ないミツユビカモメ、そして国内では九州だけで記録のあるオオズグロカモメ、ハシボソカモメを掲載しました。モンゴルセグロカモメとミツユビカモメについては、最も特徴的な羽衣である第1回冬羽を載せています。
日本産鳥類目録改訂版第7版に沿って言うと、モンゴルセグロカモメ⇒キアシセグロカモメ、ホイグリンカモメ⇒ニシセグロカモメという表記になるのですが、モンゴル−は成鳥でも脚は淡ピンク色です。一方、ヨーロッパにはニシセグロカモメ(日本未記録種)という別種(別亜種)が分布しているために、前述の第7版の表示と実際とが整合しなくなります。しばしば観察される脚の黄色いセグロカモメ(二段目左)はタイミルセグロカモメと考えるのが現状一番妥当だと思われます。

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終わりに

  1. カモメ類は種類が多く識別も難しいカテゴリーのため、敬遠される方も多いことでしょう。本格的にはちょっとという方は今回ご紹介した種類を覚えておくといいかもしれません。全種類ほぼ同じ縮尺比率ですので、大きさの比較が容易だと思います。油山研修会で意外と好評でしたので、こちらでも使ってみました(現物A3版・1枚もの)。いかがでしょうか?
  2. 文一総合出版BIRDER誌2017年11月号特集ゆる〜く楽しむカモメ類に「カモメ類基本6種、成鳥の攻略法」の記述がありました。盗用だ、パクリだと誤解されるとイヤですので、敢えて弁解しておきますが、私の方が2ヵ月弱早く2017年9月3日の公開研修で使用済みです。構想段階ではさらに3か月以上前に遡りますので誤解の無きよう。全種のイラストを描くだけでもけっこうな時間がかかっています。ただ基本6種の中身が少し違います。セグロ、オオセグロ、ウミネコ、カモメの4種にくわえ、私はユリカモメとズグロカモメの2種を、BIRDER誌はシロカモメとワシカモメの2種を加えたものを「基本6種」としています。これは地域差、九州と関東の差だと考えられます。それにしてもまずは成鳥冬羽で比較するところなど、鳥屋が考えることは自然に似かよってくるのかもしれませんネ。
  3. 個人的な話で恐縮ですが、今でも4、5年に一度は千葉県銚子<国内におけるカモメ類の聖地>へカモメ類の観察(勉強)に通っています。3キロ強に渡って防波堤が続き、上下2段、3段に幾重にも重なってカモメ類がびっしりと並んでいるというより犇めいています。この中から目的のカモメを探し出すのは本当に骨が折れますが、カモメ類識別の訓練と集中力の鍛錬になります。ある年に訪問したときは全コースを歩き、長時間冷たい雨に濡れながら探鳥したため、無意識のうちに体力を消耗してしまい、いざ駅まで戻ろうとしたときに、足が全く動かなくなっていました。漁港という場所柄、ほとんど走っていないタクシーをどうにか捕まえ、帰りの特急電車に滑り込んだ経験があります。スコープも鏡筒や接眼レンズに水が入り1本ダメにしてしまいました。勿論、今ではレンタカー利用が必須であることは言うまでもありません!

参考文献

  • BIRDS OF EAST ASIA: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON AND OXFORD
  • Collins BIRD GUIDE The Most Complete Field Guide To The Birds of Britain and Europe: Harper Collins Publishers Ltd
  • Birds of Europe with North Africa and the Middle East 1992 Lars Jonsson: Christopher Helm A & C Black・London Birds Korea HP
  • フィールドガイド 日本の野鳥 高野伸二著 1988年5月10日 初版第10刷発行 財)日本野鳥の会
  • カモメ識別ハンドブック改訂版 氏原巨雄・氏原道昭著 2010年11月20日 初版第1刷発行 (株)文一総合出版
  • 日本鳥類目録 改訂第7版
  • BIRDER 2017年11月号 (株)文一総合出版
  • 独断と偏見の識別講座Ⅱ

注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。

(2017-11-16掲載)

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