波多野邦彦
総目次
第58回 Cormorants <カワウ、ウミウ、ヒメウ>
2017年1月 左からカワウ、ウミウ、ヒメウ 全て幼羽
幼羽の場合、カワウとウミウの識別ポイントとして口角の形状を一番に挙げる人がいますが、実際にはそれほど尖っていない場合も多く、また距離があるときは小さく非常に見づらいと思います(一応、尖る傾向にあるのがウミウ、そうでないのがカワウ)。それよりも頬の白い部分の広さと形状であたりをつける方が易しいです。目の位置から斜め上方に白い部分が切れ上がり広がっているのがウミウ、目より上方にいかないのがカワウです。成鳥の場合は境界がよりはっきりしますが、幼羽では不明瞭で個体差がありますので注意が必要です。全長はウミウがやや大きく、カワウは僅かに尾が長く感じます。
Field Noteから 福津市津屋崎
チシマウガラスを除くウ類3種は北部九州でも比較的普通に見られる種類です。ヒメウは他2種に比べ小型で体格も華奢、頭が小さく嘴も細く特徴的です。皆さんはカワウ、ウミウの識別で迷うことが多いのではないでしょうか。川にいるのがカワウで海にいるのがウミウ?そう簡単には区分できません。鵜飼いのウミウは別として川でウミウを観察することはほとんどありませんが、一方、海に近い海岸や湾などにはカワウが普通に生息しています。
■カワウ
日本国内では4種のウ類が繁殖するが、世界的に最も広く分布しているのはカワウ。国内では留鳥として九州以北で繁殖し、北海道では夏鳥、九州南部以南では冬鳥。他の3種と違い、樹上に集団で営巣する。通常は、樹木に止まることが多い。川、池、湖、樹木の茂った海岸線、公園の池などで繁殖する。成鳥繁殖羽は頸から上、額にかけて白くなるが個体差が大きくほとんど黒いままの個体もいる。また足の付け根に白斑を生じる。成鳥の体は光沢のある黒色、背・肩羽・雨覆いなど上面は褐色味がある。口角の裸出部は黄色で尖らない傾向。外側の白色部は目の位置よりも下方にある。虹彩はエメラルドグリーン、脚は灰黒色。幼鳥は上面が黒褐色で、頸から下、胸・腹にかけて白っぽくなる。北部九州で真夏に見られるウは基本的にこのカワウ。
■ウミウ
世界的には日本沿岸周辺および中国、韓国、ロシアの一部に生息。国内では九州の一部、本州中部以北、北海道にかけて繁殖し、他地域では冬鳥。岩礁のある沿岸に生息する。カワウよりも首が長く、からだもやや大きい。成鳥の上面は褐色のカワウとは違い緑色光沢がある。成鳥繁殖羽はカワウと同様に頸から上、額にかけて白くなり、嘴は黒色味が増す。幼鳥も同様に上面が黒褐色で、頸から下、胸・腹にかけて白っぽくなる。成鳥ほど境が明瞭ではないが、頬外側の白色部分は目から斜め上に切れ上がり広がって見える。既にご存知の通り、鵜飼いのウはこのウミウである。冬鳥のように思われるが、北部九州では5月下旬頃まで見られることもよくある。
■ヒメウ
北部太平洋に分布し、国内では通常東北以北の沿岸で繁殖し、冬は九州以北で観察される。ウミウと同様に岩礁のある海岸部に生息する。前述の2種に比べると一回り小型で全身が光沢のある黒色。成鳥繁殖羽は目の周囲の裸出部の赤味が増し、全身が緑・青・紫色などの光沢が強く出て、嘴は淡色味が強くなり、非常に美しい。また頭頂と後頸に小さな二つの冠羽を持ち、脚の付け根にはかなり大きな目立つ白斑が出る。頸には少ないがパラパラと白い羽毛が生じる。幼鳥は全身が黒褐色でカワウやウミウのように胸・腹が白色になるようなことはない。飛翔中は真っ黒で頸から頭・嘴にかけて凹凸が少なく直線的に見えるところがカワウやウミウと違うポイント。北部九州では春先5月中旬頃、比較的に遅い時期まで残っていることがある。
■終りに
■参考文献
注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。
(2017-12-15掲載)
ご意見・ご質問は本ページのサブタイトルまたはURLを添えてこちらへ
Copyright (C) 日本野鳥の会筑豊支部 All Rights Reserved. (著作権者でない者による無断転載禁止)
本ウェブサイトは無断で自由にリンクまたはディープ・リンクができます(画像、動画、録音への直リンクは禁止)。
本ウェブサイトに記載の会社名、システム名、ブランド名、サービス名、製品名は各社の登録商標または商標です。
本文および図表、画像中では必ずしも®、™を表記しておりません。