クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2018-11-20

独断と偏見の識別講座Ⅱ

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波多野邦彦

総目次

第59回 Eagles & Hawks Ⅳ <ハイタカ>

2001年2月 ハイタカ雌幼鳥
稀だが一見雄と同じような色彩の雌個体に遭遇することがある。大柄な体格、白く明瞭な眉斑等が雌幼鳥であることを示している。後頭両側に大きなふたつの白斑。背上面には数個の白斑。胸・腹にオレンジ褐色の横縞。体下面の斑紋には様々な変異がある。太い〜細い、縦斑+横斑、暗褐色〜赤色、V字斑やハート型斑等が混じるものなど。小雪が降る中、谷合の樹の枝にじっと佇んでいた。

犀川町祓川 Field Noteから

中国、四国以北では留鳥、九州以南では冬鳥として分布しています。冬期、海沿いの干拓地や平地から河原、山林まで様々な地域に生息し、主に小鳥を捉えます。雄はキジバトと同大。雄成鳥の顔はすっぽりと暗灰色で眉斑はほとんどありません。背や尾の上面は青灰色、黄色の虹彩、頬から胸、腹の模様はオレンジ色味が強く出ます。翼下面は白く暗褐色の鷹斑(たかふ)がきれいに並びます。尾は角尾で長く、数本の太い横帯があります。
雌は雄よりも一回り大きな体つきです。虹彩は黄色、体羽は通常雄のようなオレンジ色味は無く、暗灰褐色の地味な色合いをしています。幼鳥は雌に似ていますが、上胸が縦斑、胸から下が横斑になります。成鳥や幼鳥など年齢を問わず、肩羽や三列風切数枚に大きな白斑を持つ個体が多いようです。
飛翔形はハイタカ属特有で、短く幅広の翼と長い尾を持っています。ハイタカは特に胴体がスマートに見えます。飛び方は素早い羽ばたきと帆翔を交互に繰り返します。「パタパタパタスーッ」です。旋回能力に優れており、細枝が複雑に入り組んだ林の中でも自在に飛ぶことができます。小鳥を追いかけトップスピードのまま林内に飛び込むこともよくあります。初列風切の翼指はオオタカと同様に6枚です。稀ですが雌の中には雄成鳥と同じようなオレンジ色味を持つ個体(右イラスト参照)を観察することがあります。
ハイタカ属のタカ類については本講座第1回アクシピター(ハイタカ属)の中で概要を説明しました。本講座を始めるきっかけになった種類です。インターネット上の画像を見ても、オオタカとハイタカ、ハイタカとツミは混同されているケースが非常に多いので、やはり識別が難しいカテゴリーではないかと思われます。オオタカとハイタカは実際の大きさでは重複する部分はないのですが、ハイタカ雄の小型個体とツミ雌の大型個体は全長の計測値が重複しています。他に何も比べるものが無い高空を1羽で飛んでいるタカ類の大きさを正確に把握するのは、ベテランでもたいへん難しいことです。全体のバランスやスタイル、飛び方などで識別します。よくカラスにつきまとわれますのでカラスとの大きさを比較するのも有効です。また、オオタカとよく間違われるタイミングは翼を十分に広げゆったりと帆翔しているときです。帆翔しているときはハイタカも翼の後縁が膨らんで大きく見えます。ハイタカとオオタカの場合、胴体の太さ、尾の形状、翼前縁から前に突き出した頭と嘴の大きさ・長さ、羽ばたきなど複数の識別ポイントを常時確認することが大切です。
ハイタカが翼を閉じ気味にして細く尖らせ高速で飛んでいるとき、チョウゲンボウやトケン類(ツツドリ、ホトトギス等)によく似ている場合があります。トケン類は嘴が細く尖り、顔の形が違うから間違えないだろうとおっしゃる方がいるかと思いますが、かなりのスピードで飛ぶために光線の具合が不十分な場合や角度が悪い時などは誤認してしまう可能性が無いとは言い切れません。
また、ハイタカとツミの飛び方を比較した場合に個人的にはツミの方が「パッ、パッ」とキレの良い羽ばたきをしているように感じます。より深い翼動で羽ばたくためにこのように感じられるのかもしれません。ハイタカは胴体も細く尾も長く、飛んでいるとき全体的に非常にスマートに見えます。ヒラヒラとしたところは、チョウゲンボウの飛び方に似ていると感じるケースも多々あります。巻頭にも書いたように獲物を追ってトップスピードのまま枝の繁った林の中に突っ込んだり、翼を三角形にたたみ高空からつるべ落としのように垂直に急降下したり、相手の死角から超低空で接近し出会いがしらに体を翻して捕獲したりとハイタカの狩りはたいへんバラエティに富んでいます。

■終りに

  1. 北部九州で夏期に観察されるハイタカ属(accipiter;アクシピター)の種類は留鳥として生息しているオオタカとツミで、特に初夏5〜6月頃であれば遅い渡りをする傾向のアカハラダカまで含まれます。冬鳥(地域的な)であるハイタカはまず見られません。このようにある特定の地域、特定の季節によって観察できる対象種を絞り込むこともできます。野鳥の識別は目の前に出現した種類を単純に同定することだけではありません。この時期、ここには何が生息しているのか、季節的、地理的要因も頭に入れておくと識別にたいへん役立ちます。
  2. ハイタカは冬の探鳥会などでふつうに観察されるポピュラーなタカ類です。以前、ある探鳥会で樹にとまるハイタカをお見せした時に毎回常連のように参加されている会員の方から「とまっているハイタカを初めて見ました!」と喜ばれました。意外でした。おそらく日頃のハイタカ属の探し方がよくないのだろうと想像できます。ノスリのように樹の頂上や電柱の天辺を探しても見つかることは少なく、アカハラダカを除くハイタカ属の仲間は枝の繁った樹の中層や低層を注意して探すのが発見のコツです。

■参考文献

  • フィールドガイド 日本の猛禽類 vol.03 ハイタカ 渡辺靖夫 伊関文隆 越山洋三 先崎啓究
  • Birds of East Asia: Princeton University Press Princeton Oxford
  • Collins BIRD GUIDE The Most Complete Field Guide To The Birds of Britain and Europe: HarperCollinsPublishers Ltd
  • フィールドガイド 日本の野鳥 高野伸二著 2015年6月1日 増補改訂初版第1刷発行 公財)日本野鳥の会
  • 決定版日本の野鳥650 真木広造 大西敏一 五百澤日丸 (株)平凡社

注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。

(2018-01-15掲載)

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