クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2018-07-21

独断と偏見の識別講座Ⅱ

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波多野邦彦

総目次

第63回 Phylloscopus Warblers Ⅰ <モウコムジセッカ、ムジセッカ、カラフトムジセッカ>

■モウコムジセッカ

2013年5月 モウコムジセッカ 第1回夏羽?と考えられる個体
同種であれば国内数例目の記録。地鳴きはやや高音で歯切れのよい特徴的な「チョッ、チョッ、チョッ、」、囀りはワンフレーズが4〜6音節の「チョッ、チョッ、ジュリジュリジュリジュリジュリ」「チュルチュルチュルチュルチュル・・」「チョリチョリチョリチョリチョリリリ」など。与那国島の観察例は眉斑の後半がバフ色を帯びていたらしい。この個体は眉斑全体がオフホワイト。カラフトムジセッカと同大に感じたが、せわしなく動き回るところはムジセッカに似ている。胸・腹のモヤモヤ感は、アングルと光線の条件が良い場合の時だけうっすらと黄色味を感じる程度だった。下尾筒は薄いレモン色。この個体が出現する直前に付近でムジセッカが確認されており、モウコではないかと騒がれたが結局、ムジセッカの少し変わった個体とうことに落ち着いた。このモウコムジセッカと考えられる個体は、後で別途出現したもので一見カラフトムジセッカのような雰囲気を持っており、前述のものとは明らかに違う個体だった。明るい場所もいとわずに5〜6m程の高さのブッシュ頂上でもしばらくの間囀っていた。モウコムジセッカ Phylloscopus armandii は、繁殖地が極東・中国陝西省、四川省などのごく狭い地域に限られており、国内記録も未だ僅かで明瞭な画像やイラストが少ない種類。似ているかどうかはご自身で判断していただくとして、参考までに見たままを掲載した。

山口県萩市見島Field Noteから

Phylloscopus armandii

Yellow-streaked Warblerは中国北東部から中央部にかけての狭い地域に生息し、冬期はインドシナに渡り越冬します。2亜種が知られており、P. a. armandii
は生息域北部、P. a. perplexusは南部に生息します。
観察した個体は、上面は淡ベージュ褐色、下面は汚白色で胸・腹に僅かにモヤモヤとした縦斑が確認できました。Yellow-streakedは明瞭なものではなく、見る角度や光線が良い場合にうっすらと黄色味を感じる程度。脇腹は薄い灰褐色、下尾筒はレモン色を帯びる。眉斑はオフホワイトで太く長く明瞭。前後の濃淡の差は見られない。眉斑上辺隣接部分は暗色。頭はやや丸みを帯びる。嘴はほぼ直線的で先端は僅かに尖る。観察した個体の下嘴は先端まで黄色(日射強下)。脚は明るい橙黄色で長く、趾は僅かに暗色。初列突出は短い。尾は長く角尾。囀り、地鳴きを繰り返しながらブッシュの中を動き回り、次第に上部に上がっていき、5m程の高さの頂上部で囀ることもありました。
今回のモウコムジセッカ、ムジセッカ、カラフトムジセッカは、春秋シーズンの離島や南西諸島等でなければ、なかなか見られない種類です。

■ムジセッカ

2003年10月 ムジセッカ 第1回冬羽
春秋の渡りの時期には主に離島で見ることができる。九州では越冬個体もそう珍しくない。貯水池、溜池、湿地などのアシ原やブッシュに生息する。細く尖った嘴、なだらかな頭頂の形など。地鳴きは速いテンポで連続していて、行動もせわしなく動き回る。この時は5〜6個体を島内各所で観察した。

日本海側離島 Field Noteから

2003年12月から翌年3月下旬まで福津市久末ダムで越冬した。通常、越冬場所は水辺に近いアシ原やブッシュなどが多い。「タッタッタッ・・」早い舌打ちのような乾いた独特な地鳴き。発見時は声で存在に気づき、ブッシュ上に現れるのを待ち確認した。行動もせわしなく動き回る。池面上を一気に渡る時は飛び立つ前にじっと周囲の様子を伺う。3月に入ると行動がより活発になり行動範囲も拡大した。囀りは「ジュビジュビジュビジュビ・・・」、樹木の高いところまで登ることもあった。カラフトムジセッカも同様だが上面の灰栗褐色は独特な色彩だと思う。ムジセッカの特徴は後半がバフ色をした眉斑(カラフトムジセッカ参照)。バフ色部分が前か後かで異なるが、両種ともこの部分は個体差があるので注意。

■カラフトムジセッカ

2006年10月カラフトムジセッカ 第1回冬羽
地鳴きは「トゥルッ、トゥルッ」「トゥッ、トゥッ」ムジセッカと比べると柔らかい声質でやや遅いテンポで間隔を置く。行動も僅かに緩慢。一方、春の渡りシーズンに観察した時はブッシュの中をせわしなく動き回り、その機敏さに当初はこの種だとは思えなかった。また、至近距離ではうるさいくらいの声量で囀っていた。越冬個体が記録されることもある。チョウセンウグイスと混同されることもあるので注意が必要。

日本海側離島 Field Noteから

雨が非常に少ない年でこの時(晩秋)も約1ヶ月間降雨が無かった。気温も高めで暑い。小鳥はパラパラ。こんな時は体力勝負の消耗戦だ。丁寧にチェックしていく探鳥が必要。我慢に我慢を重ねた最終日の早朝、海岸沿いの松の幼木と灌木の塊が点在する草地で発見する。
ブッシュの中を動き回ることが多いが、時々外側に突き出た枝に姿を現す。ムジセッカに比べると動きもやや緩慢。顔は非常に特徴的。目の前の眉斑がボサボサで黄褐色を帯びる。過眼線は後ろ側に幅広く暗色。耳羽に淡色斑目立つ。眉斑上縁は暗色。嘴は太くやや短く先端に丸味がある。頭頂の形状はやや丸い。体上面はムジセッカによく似た褐色。下面は黄褐色の縦斑が明瞭。下尾筒も黄褐色。脚は淡褐色で長く太くがっしりとしている。囀りはかなりの音量で歯切れがよく「チュルルルルrrr」「チュビジュビジュビジュビ」など。地鳴きは柔らかい音質で「トゥルッ、トゥルッ」「トゥッ、トゥッ」など。テンポはゆっくりで間隔が空く。

■終わりに

  1. 今回はムジセッカの仲間3種類をご紹介しました。かなり珍しい種類なので、ご覧になったことが無い方も多いかもしれません。春秋の渡りの時期に主に日本海側の離島で観察される種類です。船や旅客機で何泊もかけて遠い島に行くのはたいへんとお考えの方も多いのではないでしょうか。ただ、近くにある小さな島でも意外と島特有の小鳥に出会うチャンスはあります。海も山も揃った島の景観はどこも素晴らしく気持ちが良いです。春秋の天気の良い時期に近くの島にお弁当持参、日帰りハイキング気分で行ってみるのもいいかもしれません。
  2. 前述のカラフトムジセッカを観察したのは晩秋で約1か月間、連日晴天続きだったため小鳥の個体数が少なく、他のバードウォッチャーの皆さんは鳥がいないと言って次々と島から引き揚げて行きました。離島で珍鳥が見られないとき、いろいろな理由をつけます。晴天続きで雨が降らないから、風向きが悪いから、観察者の目が少ないから、情報が得られないから、今回は不運だから等々。タイミング的に確かに小鳥の種数・個体数共に少ない時もありますが、ベストシーズンの離島では何が出現するかわかりません。こんなときは辛抱強く丁寧な探鳥で一種一種ピックアップしていくことが大切だと思います。

■参考文献

  • Birds of East Asia: Princeton University Press Princeton Oxford
  • Collins BIRD GUIDE The Most Complete Field Guide To The Birds of Britain and Europe: HarperCollinsPublishers Ltd
  • A Guide to the Birds of Southeast Asia CRAIG ROBSON: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON,New Jersey
  • Warblers of Europe, Asia and North Africa Kevin Baker: Christopher Helm A&C Black, London
  • 決定版日本の野鳥650 真木広造 大西敏一 五百澤日丸 (株)平凡社
  • BIRDER ムシクイ類パーフェクトバイブル 2011年3月号 文一総合出版

注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。

(2018-05-15掲載)

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