波多野邦彦
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第64回 Shrikes Ⅰ <アカモズ、カラアカモズ>
2015年8月29日 アカモズ ♂成鳥
渡りの個体について、春は5月中旬以降の遅い時期、秋は8月下旬から9月にかけての早い時期に観察されることが多い。オスはイラストで示したように真っ黒な過眼線、白く太い眉斑、赤味の強い上面、クリーム色の脇腹など。雌は目先が淡色で脇腹に褐色の細かな横斑が入る。嘴は先端が下方に鉤型に曲がり、黒く長大な形状。モズ類の中でもアカモズは短い翼に対し長い尾をもつといった特徴がある。
津屋崎 Field Noteから
最近は亜種や雑種の識別に苦労することが多いせいか、こういった鮮やかな色彩の個体を観察できると爽快な気分になる。近年のアカモズは観察機会が極端に減少している感じを受ける。北部九州では春秋の渡りの通過個体を観察するが、個人的には1年に一度見られるかどうかといったところ。千載一遇のチャンスをものにするためにも、識別ポイントはしっかりと押さえておきたい。
黒く巨大な嘴、広い額から繋がる純白の眉斑、クリーム色の脇腹、尾は赤褐色で角尾、短い翼と長い尾といったからだの特徴的なバランス等。以前、といっても私の若い頃には軽井沢などで営巣している個体をふつうに観察していたと思うが、現在では繁殖地での個体数もかなり減少しているらしい。
アカモズの亜種について日本鳥類目録改訂第7版では、亜種アカモズ Lanius cristatus superciliosus と亜種シマアカモズ L. c. lucionensis の2亜種を認めている。
アカモズは本州中部以北から北海道にかけて、低山から山地の明るい林、低木林に飛来し繁殖する。シマアカモズは春秋の渡りシーズンに主に日本海側の離島や南西諸島などで観察される。一方、近年、日本海側離島や南西諸島などでは渡りの時期に基亜種カラアカモズ L. c. cristatus や亜種ウスアカモズ L. c. confusus と考えられる羽衣のアカモズ類がしばしば観察されるようになり、現在同目録第7版では検討種(亜種)としての取扱いになっている。これら各亜種の羽衣はそれぞれよく似ており、特に幼羽、1年目個体、雌個体など識別が非常に難しい。今回はアカモズ類中、亜種アカモズと基亜種カラアカモズについて。
2016年5月 カラアカモズ Lanius cristatus cristatus
対馬で観察したカラアカモズと思われる2個体。向かって左の個体は現地でカラアカモズ♀第1回夏羽と考えたが、額が広く灰色がかっていること、上面の色彩、尾が長く最外側と最長中央尾羽との長さに差があり楔形であることなどから、亜種ウスアカモズ L. c. confusus の可能性もあるのではないかと考えている。
長崎県対馬Field Noteから
春秋の渡りの時期に日本海側の離島では近年の傾向として亜種アカモズや亜種シマアカモズよりもこの基亜種カラアカモズを見る機会が増えてきた。
カラアカモズはロシアバイカル湖周辺からカムチャツカ、沿海州、中国北東部、朝鮮半島北部、モンゴルなどで繁殖し、冬期はインド、バングラデシュ、ミャンマー、タイ等で越冬する。極東地域に最も広範囲に生息しており、生息地域が他のアカモズ類亜種と複雑に入り組んでいる。一方、セアカモズ L. collurio やモウコアカモズ L. isabellinus といった別種のモズ類の生息地域とも隣接、一部重複している。いずれの場合も幼鳥や雌個体は似通っており識別が非常に難しい。
■終わりに
■参考文献
注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。
(2018-06-15掲載)
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