波多野邦彦
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第65回 Grebes Ⅰ <ハジロカイツブリ、ミミカイツブリ>
1994年3月 ハジロカイツブリ 夏羽
ルビー色の虹彩はいつ見てもドキリとする鮮やかさだ。上方に反った嘴、急角度の額、目から扇状に広がる金色の飾り羽、体高のある短めの体つきなどがハジロカイツブリの特徴。この個体は胸の部分にわずかに冬羽が残っている。3月のこの時期は、群れの中に冬羽、夏羽、中間羽と様々な羽衣を観察でき面白い。繁殖のために北方地域に帰る直前、穏やかな海域に集まり、大集団となる。名前は翼の次列風切が白いため。ミミカイツブリも同様だが翼前縁基部も小さく白い。
Field Noteから 北九州市小倉南区曽根
曽根干潟沖合のベタ凪に近い穏やかな海面にハジロカイツブリの大群が集結していました。春、渡り直前の時期、既に夏羽になっているものもいればまだ冬羽のままの個体もいます。中間羽のものも多く、この時期は様々な羽衣が見られ、換羽の勉強になります。カイツブリ類というとそれだけで皆さんは「小さい」というイメージを持つと思います。ハジロカイツブリは28〜34cm。よく似たミミカイツブリは少し大きく31〜38cm。前者はコガモの雌と後者は雄(雄の方が大きい)と同程度の大きさがあります。この2種類はおそらく皆さんが頭の中でカイツブリとして考えている以上に実際は大きいのではないかと思います。
国内で観察されるカイツブリ類は全5種類、カイツブリ、カンムリカイツブリ、アカエリカイツブリ、ハジロカイツブリ、ミミカイツブリです。今回は小型の2種類、ハジロカイツブリ、ミミカイツブリについて説明します。まず、両種は通常海上で見ることが多いのですが、時折、溜池やダムなどの淡水域で観察することがあります。両種ともに海上だけではないことを覚えておいてください。また、ミミカイツブリは九州では個体数がかなり少ない傾向にあります。逆にハジロカイツブリは数十羽から多い時には数百羽の群れが観察されます。海上に黒い帯のようになって浮いていることがあります。次々と一斉に潜り始め、しばらくすると一斉に海面に浮いてきます。
■ハジロカイツブリとミミカイツブリの識別ポイント比較(冬羽)
識別ポイント | ハジロカイツブリ | ミミカイツブリ |
・嘴の形と色彩 | 暗灰色で上方に反る | 真っすぐで先端が乳白色 |
・正面から見た頭頂の形 | 丸味を帯びて見える | 頭頂は平らに見える |
・横から見た額の角度 | 額から急角度で立ち上がる | 額はなだらか |
・顔の白色部の形と範囲、 特に目周囲の暗色部分 | 顔の白色部は目の暗色部の後ろ で上方に切れ上がる | 頬は広範囲に白色 目から斜め上方に暗色 |
・正面から見た首前面の明暗 | 黒っぽい | 前面は白色 |
・体長と体型 | 体長は短く、体高がある | 体長は長く、なだらか |
・翼の白斑 | 内側初列風切と次列風切が白色 | 翼前縁基部と次列風切が白色 |
・北部九州の分布状態 | 主に海上に普通 群れを成す | 非常に少ない 単独の場合多い |
■終わりに
参考文献
注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。
(2018-07-15掲載)
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