波多野邦彦
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第66回 Harlequin Duck <シノリガモ>
2014年12月 シノリガモ雄成鳥
非常に複雑で美しい色彩。雄若鳥は褐色で雌に似ますが、頸筋に縦の白色線が入るところ(下記イラスト参照)が違います。水中への潜り方は、顔を水面につけ翼を開いてそのまま水中に沈み込みます。これに対し、よく一緒にいるクロガモなどは、翼を閉じ一旦上方に勢いをつけて飛び込むように潜ります。遠距離からの観察でも潜り方の違いで、ある程度種類を絞り込むことができますので、丁寧に観察することが大切です。
福津市津屋崎 Field Noteから
北方系の潜水ガモですが、北部九州では冬期、志賀島など定期飛来地の他、山国川、駅館川、遠賀川、釣川河口など大きな川の河口付近で少数が観察されます。
どちらかというと海底が砂礫地で好物のカニなどの甲殻類や貝類が生息する海域を好むようです。岩場に打ち寄せる白波の中でも平気で潜水を行います。
雄成鳥はイラストのように美しく特異な色彩で間違えることはありませんが、雌や若鳥などは暗褐色の地味な体色です。非常に複雑な色彩の雄成鳥個体については、からだのどの部分がどんな色をしているのか?ご自分で是非確認してください。
シノリガモは山地の渓流で営巣しヒナを育てるといった特殊な繁殖形態を持っています。
「栗駒山麓−迫川におけるシノリガモの繁殖とその生態」(佐藤広巳・小湊郁夫、1988、 Strix 7: 159-176)に詳細な調査報告がありますので、興味のある方はご覧になってください。
向かって左からシノリガモ、クロガモ、ビロードキンクロ 全て雄第一回冬羽比較。
全長、頭・嘴の形状、顔のモノクロの色彩、体のシルエットなどについて、基本的に遠距離からの識別を念頭に置いて考えます。シノリガモはコロッとした体型と顔の複雑な模様、クロガモは前後に角張った頭の形、ビロードキンクロは特徴的な額から嘴にかけての形状と白く目立つ次列風切後縁。尾は上方にあげていたり、海面に下ろしていたり様々です。イラストではシノリガモとビロードキンクロが尾を下ろしています。後方に飛び出して見えるのは畳んだ初列風切先端です。
全長は左から右に大きくなり、38〜45cm、44〜54cm、51〜58cm。最大個体が次の種の最小個体とほぼ同大といった具合になります。3種類とも雄の第1回冬羽個体の体色は褐色味が強く各々の種類の雌に似ており、また嘴の黄色や赤色も成鳥に比べると範囲が狭く鈍い色をしています。
どれも同じような環境に居ることがありますが、クロガモやビロードキンクロは海底が砂地の場所を好むようです。これらの海ガモは九州では個体数が少なく観察頻度も低く、さらに遠距離から観察することが多いと思われますが、一方、冬季の東北地方や北海道に行くと個体数も多く、シノリガモ、クロガモ、コオリガモなどの群れを漁港などで近距離からごく普通に観察することができます。
■終わりに
■参考文献
注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。
(2018-08-15掲載)
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