クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2018-12-13

独断と偏見の識別講座Ⅱ

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波多野邦彦

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第67回 Bonin White-eye <メグロ>

2009年9月 メグロ 聟島、媒島、父島に生息していた亜種
メグロ Apalopteron familiare familiare は既に絶滅し、現在は亜種ハハジマメグロ A. f. hahajima が小笠原諸島の母島、向島、妹島のみに生息する。和名はメグロだが、英名は Bonin White-eye 小笠原のメジロ。 または、Bonin Honeyeater オガサワラミツスイ。

Field Noteから 小笠原諸島・母島

メジロ科メグロ属メグロ。一属一種、世界的希少種です。小笠原まで来てこれだけは見落とすわけにいかないため、母島に到着後、最初の1羽を見るまで安心できず、マイクロバスの車窓から目を皿のようにして探していました。
結局、島に一泊し延べ100羽以上を観察できました。拍子抜けするほどごく普通にいます。メジロよりもかえって数は多く感じました。暑い日中は強い陽射しを避け涼しい常緑照葉樹林の中にたくさん集まっています。自然になっているパパイヤの実を好んで食べます。
前後が切れた白いアイリングと周囲の逆三角形の黒色斑が特徴的。頸周囲は灰緑色。翼・尾はやや緑褐色味があります。嘴・足は灰黒色で長め。虹彩は暗赤色。地鳴きは「フィヨ、フィヨ」と柔らかく優しい声質。

小笠原(諸島)は、日本列島南方の北太平洋上に位置し、父島、母島、聟島の3列島からなる小笠原群島、火山(硫黄)列島及び周辺孤立島からなります。父島、母島、聟島の3列島は大小30あまりの島々から構成されます。小笠原諸島は、本州から約1,000km、マリアナ諸島から約550km離れており、成立以来どの島も大陸と陸続きになったことがない海洋島です。
皆さんもご存じの通り Bonin Islandとは小笠原諸島を指す言葉です。元禄年間に来日したオランダ人の医師ケンペルが、当時日本で無人島(「むにんしま」、または「ぶにんしま」)と呼ばれていた小笠原をボニン・アイランド(Bonin Island)として紹介し、世界に広まったそうです。野鳥にも英名に Bonin を冠する種類が他にもいます。Bonin Petrel シロハラミズナギドリや Bonin Wood Pigeon オガサワラ(アカガシラ)カラスバト、絶滅した Bonin Grosbeak オガサワラマシコ、Bonin Island Thrush オガサワラガビチョウなど。
小笠原諸島は東京都に属しているとはいえ、本土から1,000kmも離れており、その成立の特殊さ(海洋島)からも様々な生物について固有種が多く生息しています。小笠原諸島が「東洋のガラパゴス」と言われている所以です。
一方、本土に生息している種類でも小笠原特有の亜種がいます。アカガシラカラスバト、オガサワラノスリ、オガサワラヒヨドリ、ハシナガウグイス、オガサワラカワラヒワなど。アカガシラカラスバトは名前の通り頭が濃いピンク色をしています(識別講座 第28回 Pigeons & DovesⅠ <ハト類Ⅰ>参照)。
オガサワラノスリは小型で体色が非常に淡く、脇腹のバンドや翼角部分の暗色斑なども僅かでとても白っぽく見えます。オガサワラヒヨドリは本土ものと見た目の違い(やや暗色と言われている)があまり判りませんが、ハシナガウグイスは嘴が長くやや下に湾曲、体色は明るい褐色でクリーム色の明瞭な眉斑を持っており美しい色彩をしています。これらの亜種は現在も見ることができます。
また、小笠原諸島の絶滅種としては、オガサワラマシコ、オガサワラガビチョウ、マミジロクイナ、オガサワラカラスバト、ハシブトゴイ、ムコジマメグロの6種類<亜種>が知られています。オガサワラマシコは大型で赤く巨大な嘴を持ったマシコ類。オガサワラガビチョウは褐色で地味な色彩のツグミ類です。どちらも数個体の標本が海外の博物館などに残っているだけです。
本土側ではマシコ類もツグミ類も冬鳥で基本的に国内では繁殖していないのに小笠原のような亜熱帯にある離島で生息していたのはとても不思議に感じます。マミジロクイナやハシブトゴイは近縁種が現在もフィリピン、インドネシア、ニューギニアなど南方の島々に生息しており、在りし日の姿を彷彿とさせます。

■終わりに

  1. メグロは日本固有種の1種ですが、皆さんは日本固有の野鳥は全部で何種類いるかご存知でしょうか?分類方法にもよりますが、通常13種類と言われています。以下日本産鳥類リスト順にヤマドリ、キジ、ヤンバルクイナ、アマミヤマシギ、アオゲラ、ノグチゲラ、ルリカケス、メグロ、オオトラツグミ、アカコッコ、アカヒゲ、カヤクグリ、セグロセキレイ。見るのが比較的易しい身近な種類から小笠原や奄美・沖縄の遠隔地や離島まで行かないと見られない特異な種類まで様々であることがわかると思います。意外な感じですが、ヤマドリ、キジ、アオゲラ、セグロセキレイなどは日本固有の種類です。ちょっとたいへんですが、全種類確認を目標にしてみるのも面白いかもしれません。
  2. 小笠原諸島もあらゆる生物の環境下で外来種の浸食に晒されています。北米産のグリーンアノールは黄緑色のスマートな美しい小型トカゲですが、雑食性のため固有の昆虫類を捕食し、強い繁殖力で固有種のオガサワラトカゲを片隅に追いやっています。ゴキブリ・ホイホイのような紙製トラップが港周りの植込みなどにたくさん設置してありますが、両種とも獲れてしまうのが難点のようです。また、手のひら程もある大型サイズのアフリカマイマイは小笠原固有の陸産貝類の生息環境を冒しています。雨降りの日に運転するとアスファルトの道路上に無数のアフリカマイマイが這いだし避けて通るのが不可能なほどです。
  3. 小笠原群島は2011年6月に世界自然遺産に登録されました。小笠原丸も昨年新造船に変わり、観光客が急増しています。固有種の生息環境は危機的な状況が続いています。これまで以上に小笠原諸島の自然を守る努力が必要になっています。

■参考文献

  • BIRDS OF EAST ASIA: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON AND OXFORD
  • Collins BIRD GUIDE The Most Complete Field Guide To The Birds of Britain and Europe: Harper Collins Publishers Ltd
  • A Guide to the Birds of Southeast Asia CRAIG ROBSON: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON,New Jersey
  • フィールドガイド 日本の野鳥 高野伸二著 2015年6月1日 増補改訂初版第1刷発行 公財)日本野鳥の会
  • 決定版日本の野鳥650 真木広造 大西敏一 五百澤日丸 (株)平凡社
  • 小笠原自然情報センター
  • 千葉研究室
  • 進化の小宇宙: 小笠原諸島のカタマイマイ
  • マミジロクイナ標本画像(公財)山階鳥類研究所

注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。

(2018-09-15掲載)

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