波多野邦彦
総目次
第70回 Emberiza Ⅳ
<オオジュリン、シベリアジュリン、コジュリン>
左からオオジュリン、シベリアジュリン、コジュリン 第1回冬羽
Field Noteから転記
オオジュリン、シベリアジュリン、コジュリンの識別は典型的で美しい雄成鳥夏羽個体であれば、わかり易いのですが、実際には3種全て同時に比較するケースなどはありません。通常は秋の渡りの時期や越冬地などで雌成鳥冬羽や第1回冬羽等で迷うケースが多いのではないでしょうか。
定例探鳥会等では、シベリアジュリンやコジュリンにはめったにお目にかかることがありませんが、それぞれの特徴はきちんと押さえておきたいところ。今回は特に判別の難しいケースの識別について勉強していきたいと思います。
九州に住んでいる方であれば、熊本県阿蘇高原の草原に生息するコジュリンを見に行った方は多いと思います。ただし、この地域は繁殖地としてはかなり特殊な場所です。コジュリンは通常平地の河川、湖沼周囲のアシ原や草地で繁殖しています。日本国内の阿蘇以外で知られている繁殖地は千葉県利根川下流域や茨城県霞ケ浦に広がる広大なアシ原、東北の湖沼地域などで局地的に分布しています。一方、越冬地は関東、西日本、四国、九州など国内各地に散らばっているようですがこちらも限定的です。世界的には極東の非常に狭い地域、日本、中国南東部、北朝鮮、ロシア極東部でのみ繁殖が確認されている希少種です。
今回はオオジュリン、シベリアジュリンそしてコジュリンの識別です。まずはオオジュリンとシベリアジュリンについて、この2種を比較する場合の識別ポイントについて確認し、最後にコジュリンの識別ポイントについて理解いただけるといいと思います。
■雌または第1回冬羽比較
特色\和名 | オオジュリン | シベリアジュリン | コジュリン |
全長 | 16cm | 14cm | 14.5cm |
体型・体色 | 丸々と太る。 | 小さくコロンとした体型。全体的に白っぽい。 | 僅かに細身。全体的に赤味強い。 |
嘴形状・色彩 | 嘴峰が膨らむ、肉厚の形状。下嘴薄い灰肉色または灰青色。 | 嘴峰は直線的短い 嘴峰直線的で上嘴暗色、下嘴薄い肉色。 | 嘴峰は直線的、僅かに長め。嘴上下ともに肉色部分多い。 |
顔の特徴 | 頭頂に丸味がある | 淡色のアイリング目立つ。 | 耳羽周囲に黒褐色の縁取り。黒褐色の太い顎線目立つ |
胸の色彩・模様 | 褐色、黒褐色の細い縦斑。 | ほぼ無斑。♂第1回冬羽は腮から胸僅かに褐色斑。 | 褐色でほとんど模様は無い。 |
小雨覆い | 赤褐色 | 雌第1回冬羽淡褐色 | 褐色 |
脇腹の色彩 | 脇腹に褐色斑明瞭 | 褐色斑はわずかか殆ど無い | 褐色斑はわずかか殆ど無い |
腰の色彩 | 淡灰褐色または淡褐色でやや暗色の縦斑あり | 淡灰褐色で無斑または僅かな褐色縦斑あり | 僅かに赤味のある淡褐色、ほぼ無斑 |
跗蹠と趾の色彩 | 跗蹠褐色、趾は黒っぽい。 | 跗蹠淡肉色、趾はやや濃い。 | 跗蹠、趾ともに淡肉色。 |
生息環境(越冬地) | アシ原、刈田 | アシ原よりも背丈の低い枯草が生えた草地を好む | アシ原、枯草が生えた草地。 |
■最後に
■参考文献
注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。
(2018-12-20掲載)
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