波多野邦彦
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第71回 Cisticolidae <セッカ>
1997年7月 セッカ
北九州市小倉南区曽根 Field Noteから転記
セッカの特徴的な両足おっぴろげポーズはユーモラスで小さなからだと相まってとても愛らしく感じます。とても器用なとまり方です!?
春から夏にかけては囀り飛翔を頻繁に行い、アシの上の方にもよくとまるので見つけやすいのですが、冬期は地鳴きのみでほとんど鳴かず、刈田の切株や雑草の中に隠れてなかなか姿を見せなくなります。
セッカの上面は薄いベージュ地に黒褐色の太い縦斑ですが、光線の具合によっては地の色彩が赤褐色味を強く感じる場合がありますので、センニュウ類(秋のシマセンニュウ)などとの識別では要注意です。身近なところに居るにも関わらず、生態や生息状況など意外とよく知らないのがセッカです。囀りは独特で「ヒッヒッヒッヒッ」と鳴きながら小刻みに上昇し、今度は「ジャジャッ、ジャジャッ・・」と発しながら下降してきます。
約6か月という長い繁殖期間の間、多い時には1シーズンで20個くらいの巣を作るそうです。雄は外側のみ作り、内装は雌が担当するようです。育雛も雌の仕事で、雄は次々に巣を作り新たなメスを求めて鳴き続けます。セッカの行動については、「セッカの雄の行動と一夫多妻制」母袋卓也 昭和48年(1976年)6月山階鳥研報第7巻第1号(No.39)に詳細な調査報告があります。興味のある方はご覧になってください。
セッカ属の小鳥は日本国内ではセッカ1種のみです。日本に近い地域ではタイワンセッカ Cisticola exills がインドからインドネシア、フィリピン、ニューギニア、オーストラリア、そして台湾までの広い地域に生息しており、12亜種ほどに分類されています。雄の夏羽では頭部がオレンジ色や金色になります。日本国内では未記録種ですが、近いうちに確認される可能性があります。
2014年10月 セッカ
シロツメクサの葉の間から見え隠れする背中は、ネズミやその他の小さな哺乳類を連想させる。その様子からは素早いホッピングで走り回っているように推測できた。
Field Noteから 福津市津屋崎
刈田の脇、一面に繁茂したシロツメクサの間を飛び跳ねながら小さな褐色の生き物が走り回る。あまりにすばしこく、最初は鳥かどうかもわからなかった。海上を猛スピードで泳ぐイルカのように背中が草の上にリズミカルにチラチラとしか見えず、一時も立ち止まらないので正体が掴めない。5分ほど目で追った後、漸くシロツメクサの花の間からセッカが顔を出した。
これまで、イナバヒタキ、ハシグロヒタキ、シマセンニュウ、シロハラホオジロ、ツメナガホオジロ、ベニヒワなどで「鼠走り」を経験したことがあったが、セッカも走るとは予想外だった。この中でツメナガホオジロ、ベニヒワは素早いホッピングで走り回り、セッカもその様子からホッピングではないかと推測できた。それにしても地上を素早く走る種類が、結構たくさんいるものですね!?
■最後に
■参考文献
注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。
(2019-01-15掲載)
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