波多野邦彦
総目次
第72回 Pipits & Wagtails Ⅳ <マキバタヒバリ>
1997年2月 マキバタヒバリ 第1回冬羽
当時のフィールドノート。メモ書きでびっしりと埋められ、興奮が伝わってくる。特徴は不明瞭な眉斑、上下基部が黄色を帯びた嘴、オリーブ色味がある灰褐色の上面、中央部がやや細かく点状になった胸の黒色縦斑、黒く湾曲度が低く非常に長い後趾の爪など。舐めるように観察しました。4月まで滞在、夏羽に換羽した後渡去。バンディングされ、足環がつけられました。
福岡市西区今津 Field Noteから 当時のイラストに加筆
マキバタヒバリ Anthus Pratensis 出現情報を初めて聞いた時、耳を疑いました。このタヒバリ類についてはヨーロッパの図鑑等で知っていましたが、生息地域や渡りのコースも日本から遠くかけ離れていたため、国内ではまず記録されないだろうと考えていたからです。しかも、発見場所は通い慣れた福岡市今津干拓です。
土曜の休日が来るのが待ち遠しかったのを今でもはっきりと覚えています。昔ながらの木杭が並ぶ水路脇、堆肥を積んだ畑の一角を主な餌場として活動していました。水辺近くの気に入った非常に狭い場所に執着するのがタヒバリ類の特徴です。時々ふっと居なくなりますが、1時間もすればいつの間にか姿を現わして素知らぬ顔で採餌していました。
マキバタヒバリは、西シベリア北部、北ヨーロッパ、アイスランド、アイルランド、イギリスなどで繁殖し、冬季はアフリカ北部、ヨーロッパ南部、地中海沿岸、中近東地域に渡り越冬します。
ヨーロッパではポピュラーなタヒバリ類で大規模な渡りをすることで知られています。第1回冬羽や冬羽の特徴は前記イラストおよび説明のとおり。3月下旬から4月上旬にかけ夏羽に換羽します。夏羽の特徴は上面の色彩について黄褐色味が強くなり、顔、頭頂、背などに暗褐色の極小斑が密になり、かなり変わった印象を受けます。また、目の周囲をぐるりと囲む白色のアイリングが目立ちます。地鳴きはタヒバリに似た乾いた印象の「シィシィーッ」、腰は黄褐色で無斑。
2016年1月 ムネアカタヒバリ ♀第1回冬羽
顔や上胸には赤味が全く無い。種名と特徴が結びつかない一例。
津屋崎 Field Noteから
■ムネアカタヒバリの特徴
国内でマキバタヒバリに最もよく似ているのはムネアカタヒバリ冬羽。
太く明瞭な淡色の眉斑。頭頂は細い暗色縦線。下嘴基部が黄色。雌第1回冬羽は顔に赤味は無い。上面は黄褐色味があり、緑色味は弱い。背に太い黒色と淡色の縦線がある。胸の黒縦斑は太く密にある。腰は灰緑褐色で細かな暗褐色縦斑がある。後趾の爪は趾と同程度。全長に対して尾の割合が短くやや寸詰り体型。草の根近くや刈田の畝を縫うように歩き回る。声は特徴的な尻下がりの「プシイ―イ↓」慣れると声だけでムネアカタヒバリと特定可能。
■終わりに
■参考文献
注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。
(2019-02-15掲載)
ご意見・ご質問は本ページのサブタイトルまたはURLを添えてこちらへ
Copyright (C) 日本野鳥の会筑豊支部 All Rights Reserved. (著作権者でない者による無断転載禁止)
本ウェブサイトは無断で自由にリンクまたはディープ・リンクができます(画像、動画、録音への直リンクは禁止)。
本ウェブサイトに記載の会社名、システム名、ブランド名、サービス名、製品名は各社の登録商標または商標です。
本文および図表、画像中では必ずしも®、™を表記しておりません。