クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2020-11-29

独断と偏見の識別講座Ⅱ

波多野邦彦

総目次

第77回 Plovers Ⅰ <シロチドリ>

2016年7月 シロチドリ雌成鳥夏羽
毎日カラスが頻繁に飛来し、釣り客や犬の散歩など次々と侵入してくるごく狭い砂地で繁殖した。猛暑が続く夏、他に見るものも無いためここに通うのが習慣になった。週末近くになるとあの2羽のヒナは無事だろうか?気が気でなかった。8月中旬2羽とも飛べるようになり元気に巣立ったようだ。イラストは雌親。懸命に2羽のヒナを守り抜いた。7月体羽は擦れてボロボロになり、擦り減った分、細身に見えるようになった。

Field Noteから 福津市津屋崎

シロチドリは世界的に見ると、ユーラシア大陸、アフリカ、南北アメリカの中緯度地域など温帯・亜熱帯・熱帯地域に帯状に広く分布しています。日本国内では本州中部地方以北では夏鳥、その他地域によっては留鳥、漂鳥、または冬鳥に分類されます。全長15〜17.5cmでコチドリとほぼ同大。生息環境は海岸の砂浜、干潟、埋め立て地、河川など。成鳥雄は額・耳羽・側頸が黒褐色で頭部が茶褐色をした個体もいます。雌はほぼ一様に褐色です。コチドリとの差異は、黄色のアイリングが無い、上胸の褐色の帯が前面で切れていること、嘴がやや長いこと、足の色彩(黒〜灰色、淡褐色)、飛翔時翼上面に明瞭な白い帯が確認できることなど。声は「ピル、ピル」(前にアクセント)など。北部九州ではほぼ一年中観察することができる留鳥です。

■シロチドリとメダイチドリの比較

シロチドリ幼鳥(左)、メダイチドリ幼鳥(右)
冒頭でシロチドリとコチドリの差異について説明しましたが、メダイチドリの冬羽や幼鳥を単独で観察する場合にもシロチドリによく似ていて迷うことがあるのではないかと思います。初心者の方に多いのですが、首輪が切れているかどうかだけに注目していると上記イラストのようにメダイチドリでも前面で切れて見える場合があるため、シロチドリと誤認する場合が考えられます。嘴の形状や太さは個体差があり、両種とも脚の色彩は淡黄色、淡灰肉色、灰色、黒色に近いものまで様々です。基本をしっかりと押さえた上で、大きさ、年齢、性別、羽衣、体型・全体のバランス、頭や嘴の形、眉斑の形、襟の色、声など、常に複数の識別ポイントで判断するように心がけましょう。

Field Noteから 2018年8月佐賀県東与賀

■最後に

  1. 今回のシロチドリのイラストを比較するとわかりますが、巻頭の雌成鳥は壮絶な子育てがほぼ終わりからだ全体の羽根がボロボロになり、先端が擦り切れて短くなっています。何度か観察した雛を守るための偽傷行為なども羽毛を痛める原因なのでしょう。そのためかなりスマートに見え、その分脚も長く見えます。これに対しメダイチドリ比較イラストにあるシロチドリ幼鳥は今年生まれたばかりで羽衣がフレッシュでふさふさとした印象です。このように年齢や換羽等によってスタイルが違って見えることがあります。野外識別では色彩や雌雄の差だけでなく、こういった羽衣の変化なども頭に入れておく必要があります。
  2. 日本産シロチドリの分類において、九州以北日本国内で観察される亜種は日本固有の亜種である可能性が高く、一方、特に沖縄や南西諸島で観察される個体は亜種や地域間の移動などまだまだ不明な点が多いようです。東南アジアで観察されている基亜種ハシボソシロチドリやその他の亜種等、今後国内で様々な亜種が観察される機会が増えてきそうです。シギ・チドリの観察では常連で当たり前のように見られるシロチドリですが、亜種が非常に多くその分類や分布については意外にもまだよくわかっていない、謎の多い種類のようです。

■参考文献

  • BIRDS OF EAST ASIA: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON AND OXFORD
  • A Guide to the Birds of Southeast Asia CRAIG ROBSON: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON,New Jersey
  • SHOREBIRDS An identification guide to the waders of the world Peter Hayman, John Marchant and Tony Prater: CROOM HELM London & Sydney
  • Collins BIRD GUIDE The Most Complete Field Guide To The Birds of Britain and Europe: Harper Collins Publishers Ltd
  • フィールドガイド 日本の野鳥 高野伸二著 2015年6月1日 増補改訂初版第1刷発行 公財)日本野鳥の会
  • 決定版日本の野鳥650 真木広造 大西敏一 五百澤日丸 (株)平凡社
  • シギ・チドリ類ハンドブック 氏原巨雄・氏原道昭/著 文一総合出版

注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。

(2019-08-15掲載)

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