クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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独断と偏見の識別講座Ⅱ

波多野邦彦

総目次

第81回 Swans T <ナキハクチョウ>

両側に赤いラインが入った真黒で長大な嘴、順光下では顔や頸に細かな銀色光沢があり、非常に美しい!

2009年2月 ナキハクチョウ 成鳥
体格はオオハクチョウよりもさらに大きい。体色は純白、首は太く長く、頭頂はややとがる。顔・首には細かな銀色の光沢がある。細長く根元まで真っ黒で下嘴の両側に赤いラインが入った嘴が特徴。非常に美しいハクチョウである。Trumpeter Swanの名前の通り、声が非常に大きい。ただ、ひとつだけ残念なことにこの個体、お腹は田んぼの泥で茶色に染まっていた。ここは人間と白鳥との距離が非常に近く、ほとんどの観光客が降車して、群れのすぐそばで脅かさないように静かに観察している。

島根県松江市 Field Noteから

ナキハクチョウは国内では冬季の北海道や東北地方等で記録がありますが、関東・中部以南にはほとんど南下しません。以前から、もし西日本に出現したら必ず見に行こうと決めていました。この時島根県松江に出現情報があり、週末金曜日の仕事が終わって、そのまま深夜に出発し一睡もせずに現地を目指しました(真似をしないように!)。国道9号線をひたすら走ること5時間、土曜日早朝まだ暗いうちに現地到着!他にもハクガン、アカツクシガモの情報がありましたがそんなのは後回し、脇目も振らずにナキハクチョウを目指しました。
目標地点に到着直後はコハクチョウの群れだけしかおらず、ヤキモキしましたが、しばらくすると「フヴァーン、フヴァーン」英名<トランペッター・スワン>の名前通り特徴のある大きな声で鳴きながら、たった1羽で飛来しました。オオハクチョウよりもさらに大きいので見応えがあります。純白でたいへん美しい羽衣です。車外に出ても、コハクチョウの群れが周りに一緒にいるため至近距離(15m程)でも落ち着いています。約3時間後飛去し、結局これが現地終認となりました。本当にギリギリのタイミングでした。
土曜日に出発したり、金曜日の夜に出発したのにハクガンやアカツクシガモなどに浮気して寄り道したりした人達は見られずじまいでした。夢にまで見た珍鳥は何はさておき一直線に会いに行くのが鉄則です!!

■終わりに

  1. ナキハクチョウは、アラスカからアメリカ北西部やカナダ北部に分布する、ハクチョウ類最大の種類。長距離の渡りを行なわないため、日本国内の記録も数少ない。今回、夜が明けてしばらくたった頃、冷え込んだ朝の空気の中を大きなダミ声で鳴きながら、たった一羽で飛んで来て眼前に降りたときは、本当に感動してしまった。しかも、吐く息が白く見える至近距離でゆっくりと観察することができた。
  2. 「情報に振り回されてはダメです。自分なりの目標と考えをしっかりと持って、鳥見を楽しんでください!」といつも周囲に放言している私ですが、今回ばかりはお許しください。ご紹介したカテゴリーの野鳥を見るためにはどうしてもタイムリーな情報が頼りになります!

■参考文献

  • BIRDS OF EAST ASIA: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON AND OXFORD
  • Collins BIRD GUIDE The Most Complete Field Guide To The Birds of Britain and Europe: Harper Collins Publishers Ltd
  • A Guide to the Birds of Southeast Asia CRAIG ROBSON: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON,New Jersey
  • 決定版日本の野鳥650 真木広造 大西敏一 五百澤日丸 (株)平凡社

注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。

(2020-02-16掲載)

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