クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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独断と偏見の識別講座Ⅱ

波多野邦彦

総目次

第82回 Brown Booby <カツオドリ>

2001年11月カツオドリ♂成鳥

新宮町 Field Noteから

2001年11月カツオドリ♂成鳥
ケーソン上に降りたカツオドリとウミウの比較。意外なことにウミウよりもかなり小さく見える。
カツオドリ全長64-74cm、翼開長132-150cm
ウミウ 全長84-92cm、翼開長152cm
翼開長はほぼ同じだが、全長はウミウの方が約10cm以上長い。
上空を細長い翼を使って悠々と飛んでいる姿からはとても大きなイメージを受ける。が、実際に並んだ画像はこちら。ウミウが集まってくると群れの中に埋没してしまう。

2019年12月30日福津市(筆者撮影)

2019〜2020年冬シーズンはカツオドリが大当たりだった。九州北部沿岸でも海岸線を見渡すと何処かに飛翔する姿を見つけることができた。数年に一度このようにたくさんの個体を観察できる。
年末頃、地元では25cm程のサバやアジが無数に海岸付近に押し寄せ沸いていてこれを餌にしていたようだ。個人的には今シーズン熊本−島原航路に何度か乗船したが、常時数百羽が群舞していて大型ブイの上に数羽で集まって休んでいたり、飛んでいる群れが次々とダイブしていくダイナミックな餌獲りを観察したりと休む暇が無かった。翼を後方に細く伸ばし、槍のように頭から水中に突っ込むダイビングはたいへん豪快だ。
カツオドリの仲間は世界中の亜熱帯から熱帯の海域に広く分布する。国内ではカツオドリの仲間は3種類が確認されている。カツオドリの他にアカアシカツオドリ、アオツラカツオドリの2種が知られており、南西諸島や小笠原諸島などで繁殖している。
3種とも基本的に雌雄同色だが、カツオドリの場合、雄個体の目先は青緑色になり、雌はクリーム色をしている。幼鳥は下面の白色部分が褐色味を帯びていて、成鳥のように上面の暗褐色とくっきりとしたコントラストを成さない。

■最後に

  1. 見た目は如何にも南方系の容姿だが、意外と身近にいる海鳥のため親近感が湧いてくる。愛嬌のある顔つきもいい。航行する船について飛ぶ習性があり、舳先に上がる波に驚いて飛び上がった魚などを狙う。海面すれすれに低空を飛び、嘴の先端を振るわせて水面にフェイントをかけ、海中から舞い上がったトビウオを繰り返し捕らえるところも観察したことがある。
  2. 通常は繁殖地周辺に生息しているが、福岡県内でもアカアシカツオドリの迷行例などがあるので、台風通過後などは一応の注意が必要である。

■参考文献

  • BIRDS OF EAST ASIA: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON AND OXFORD
  • Collins BIRD GUIDE: THE MOST COMPLETE FIELD GUIDE TO THE BIRDS OF BRITAIN AND EUROPE: Harper Collins Publishers Ltd.
  • Petrels, Albatrosses, and Storm-Petrels of North America: A Photographic Guide: Princeton University Press Princeton and Oxford
  • 決定版日本の野鳥650 真木広造 大西敏一 五百澤日丸 (株)平凡社
  • フィールドガイド 日本の野鳥 高野伸二著 2015年6月1日 増補改訂初版第1刷発行 公財)日本野鳥の会
  • 海鳥識別ハンドブック 箕輪義隆著 文一総合出版

注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。

(2020-03-15掲載)

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