波多野邦彦
総目次
第83回 Albatrosses <アホウドリ類>
2012年6月 アホウドリ亜成鳥 成熟度が進むにつれて上面の白い範囲が広がってくる。
大洗−苫小牧航路 Field Noteから
先端がうすい灰色、全体が淡いピンク色をした巨大な嘴が遠距離からでもよく目立ちます。嘴が黒いのは巣立った直後(6ヶ月目くらいまで)のごく僅かな間だけ。ほぼ全年齢を通じてこの美しいピンク色の嘴が重要な識別ポイントになっています。アホウドリは完全な成鳥羽になるまで、10年以上かかります。このイラストは7〜8年目と考えられる個体で、これと比較すると完全な成鳥羽の後頸は暗色部分が無くなって金色になり、翼上面雨覆いの白色斑はより広範囲に大きくなり、体の白色部分と繋がり、背や上面の小さな褐色斑はほとんど消失します。一方、全身チョコレートブラウンで嘴がこのピンク色をした幼鳥もとてもきれいです。
国内で通常観察されるアホウドリ類はこのアホウドリとクロアシアホウドリ、コアホウドリの3種類ですが、アホウドリは実際に目の前で観察すると他の2種よりもひと回り大きな体格とそれにも増して独特な風格・雰囲気が備わっており、格の違いを感じさせます。
日本国内で記録されたアホウドリ類はワタリアホウドリ、アホウドリ、クロアシアホウドリ、コアホウドリの4種類で、このうちワタリアホウドリ以外の3種は国内で繁殖しています。日本で観察されるこれらのアホウドリ類については、主に冬に当たる時期(10月〜6月頃)に繁殖し、夏の間は北太平洋に渡り洋上で暮らしています。国内の繁殖地として、アホウドリおよびクロアシアホウドリが伊豆諸島・鳥島、尖閣諸島の2か所で、コアホウドリは小笠原諸島の一部が知られています。また小笠原諸島・聟島では2005年よりアホウドリ回復計画が開始され鳥島からの移住が進められています。
■クロアシアホウドリ
ハワイ諸島、マーシャル諸島、国内では小笠原諸島の一部、尖閣諸島で繁殖し、夏季はベーリング海、アリューシャン列島周辺の海域に生息します。北太平洋では普通に見られる種類です。全身黒褐色で目の下、嘴基部と上下尾筒に淡色部分が出ます。淡色部の範囲には個体差があり、頭部全体が淡色の個体や下尾筒が広い範囲淡色の個体などがときどき観察されます。全長、翼開長ともに次のコアホウドリとほぼ同大。チョコレートブラウンの体色は広大な海原でもよく目立ちます。2012年6月の大洗-苫小牧航路復路では、50羽以上を観察できました。
■コアホウドリ
北太平洋では最も普通の種類。ライサン島、ミッドウェイ島、ハワイ諸島、国内では小笠原諸島の一部などで繁殖します。太平洋側の外洋航路などで普通に見られます。クロアシアホウドリとほぼ同大。頸が長く、スマートな体型です。嘴は淡肉色で先端は青灰色。足指の先端が尾を越えますが、足指は羽毛の中に入れ全く見えないこともあります。目の周囲に黒斑があり、ちょうどアイシャドウをしているように見えます。頬・耳羽にかけて灰色。背・翼上面、上腰、尾は黒色、腰下部と上尾筒は白色。初列風切上面羽軸が白色で目立ちます。翼下面の特徴的な白黒の色彩(下記イラスト参照)は個体差が大きく、若い個体の方が黒っぽく、年齢を重ねるにつれて白い範囲がより広くなるようです。
2012年6月大洗−苫小牧航路復路では洋上を埋めるハシボソミズナギドリやハイイロミズナギドリの大群の中にバラバラと150羽以上を観察しました。この時期、相当な数が北太平洋上を周回しているのを実感することができます。
2017年6月コアホウドリ左、クロアシアホウドリ右
大洗−苫小牧航路
■参考記録
先日、福岡県福津市玄海灘(日本海側)にてオオミズナギドリ群中にクロアシアホウドリを観察しましたので当日の状況を記述しておきます。
※画像無しのためあくまでも参考記録
観察日・時間 | 2020年5月27日(水) 7:00 am〜7:07 am |
観察地点 | 福津市勝浦530 割烹料亭・華杏(はなあんず)裏より西方沖海上 |
調査員 | 波多野邦彦1名 |
観察種・数 | クロアシアホウドリ1羽 ※相当な遠距離だったため、アホウドリ幼鳥の可能性も僅かながらある。 |
観察状況 | おそらく万羽を超えるオオミズナギドリ飛翔群中を滑翔するクロアシアホウドリを約7分間にわたり観察した。日本海側でのアホウドリ類観察例はほとんど無いと思われる。 |
備考 | 尖閣諸島では、アホウドリ、クロアシアホウドリ2種の繁殖が確認されている。過去の調査結果から尖閣群のアホウドリが日本海側を通過している可能性がある。クロアシアホウドリの渡りルートについては不明。 |
■終わりに
■参考文献
注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。
(2020-06-24掲載)
ご意見・ご質問は本ページのサブタイトルまたはURLを添えてこちらへ
Copyright (C) 日本野鳥の会筑豊支部 All Rights Reserved. (著作権者でない者による無断転載禁止)
本ウェブサイトは無断で自由にリンクまたはディープ・リンクができます(画像、動画、録音への直リンクは禁止)。
本ウェブサイトに記載の会社名、システム名、ブランド名、サービス名、製品名は各社の登録商標または商標です。
本文および図表、画像中では必ずしも®、™を表記しておりません。