クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2020-11-29

独断と偏見の識別講座Ⅱ

波多野邦彦

総目次

第84回 Acrocephalus Warblers Ⅰ<オオヨシキリ、コヨシキリ>

コヨシキリは九州では熊本県阿蘇地方の標高の高い草原などで初夏6月から盛夏8月頃にかけて繁殖しています(イラスト左・成鳥)。全長14cm、セッカよりも僅かに大きい程度です。幅広く淡色の眉斑とそれに接する上部が暗色なのが特徴です。同一地域ではコジュリンも繁殖しています。コヨシキリの囀りはオオヨシキリにやや似ていますが、より複雑でテンポが速く高音で乾いた声質です。
一方、秋の渡り途中のコヨシキリ(イラスト右・第1回冬羽)は、低地、海岸付近のクリーク沿いや池の縁にあるアシやブッシュの中を隠れながらチョコチョコと静かに移動します。囀り時のように体を伸ばした立ち姿勢ではなく、どちらかと言うと体を縮め横向きの姿勢で葉陰に隠れながら移動していることがほとんどです。つまり繁殖地とは体勢や体形が全く違って見えます。第1回冬羽は特に全体的にベージュ色が濃く、体下面は黄色味が強く出ます。また光線の具合で上面は濃い茶褐色に見えることもあります。地鳴きは一声ずつ小さな乾いた声で「タッ、タッ、タッ」。至近距離だと「タルルツ、タルルツ」と聞こえるごく短い連続音です。慣れればこの特徴的な地鳴きだけで識別可能です。
春はやや遅めの5月連休明け頃から、秋は9月から10月中旬頃までの時期に通過しています。春の離島であれば、水辺とは限りません。乾燥地のブッシュの中で囀っている場合もあります。秋は海岸に近い水田地帯のクリークなど水辺のアシ原で注意して耳を傾けてみてください。

2020年6月6日オオヨシキリ成鳥  小竹町

ご存知の通りオオヨシキリは最も身近な夏鳥のひとつ。日本、中国、朝鮮半島、ロシアの一部で繁殖し、冬期はタイ、フィリピン、マレーシア、ベトナム、インドネシアなどの地域で越冬します。クリークや溜池、川のアシ原などで営巣し、アシの上部にとまり、「ギョギョシ、ギョギョシ」とけたたましい声で囀ります。地鳴きは「グルルル、グルルル」。全長19cm、モズとほぼ同大です。カッコウの主要な托卵相手であり、広大なアシ原には数多くのオオヨシキリが生息し、それを狙うカッコウもよく観察されます。
体型は頭でっかち、嘴は長大で上嘴は暗色、下嘴基部が褐色、脚はガッシリと太く青灰色をしています。初列風切りの突出は長め。尾は長く角尾。囀るときによく額から頭頂の羽毛を逆立てています。ハシブトオオヨシキリを除き、通常日本国内で観察されるヨシキリ類は前述のコヨシキリとこのオオヨシキリの2種類ですので迷うケースは少ないと思われますが、オオヨシキリも頭や喉の羽根をぴったりと寝せているとかなり雰囲気が違って見え、また幼鳥や第1回冬羽の体下面はかなり黄色味が強く出るので注意が必要です。

■終わりに

  1. 今回ご紹介した2種間では大きさや体形、その他各部位など差が大きく、識別はそれ程難しくないと思われます。ただ、意外にもオオヨシキリはエゾセンニュウやウチヤマセンニュウ等と、コヨシキリはシマセンニュウ等、科の違うセンニュウ類と迷うケースがあるようです。ベージュ色を基調にしたあまり特徴の無い体の色彩や渡り時期であれば特徴的な囀りを聞けないことも影響しているのかもしれません。
  2. オオヨシキリは巣立ち直後以外、脚の色が青灰色です。これは他のヨシキリ類やセンニュウ類には無い大きな特徴です。野外でも確認し易くかなり有効な識別ポイントですので是非覚えておいてください。
  3. 本州中部以北であればこの2種は平地のアシ原のある河原や湿地。河川といった同じ場所で繁殖していますが、九州内に於いては生息環境が異なります。コヨシキリは他地域とは違って、熊本県阿蘇地方にある標高の高い草原で繁殖しています。ちなみに6月福岡県内の地元、オオヨシキリやヨシゴイが繁殖している場所でコヨシキリの情報がありました。この場合、この情報は少し変だなと最初に気づくことが大切です。後に画像でも確認しましたがオオヨシキリとの誤認でした。種類毎の特徴を捉えるだけではなく、生息環境の知識等も識別の有効な手段になることを覚えておきましょう。

■参考文献

  • REED AND BUSH WARBLERS Peter Kennerly and David Pearson Illustrated by Brian Small CHRISTOPHER HELM LONDON
  • BIRDS OF EAST ASIA: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON AND OXFORD
  • Collins BIRD GUIDE The Most Complete Field Guide To The Birds of Britain and Europe: Harper Collins Publishers Ltd
  • フィールドガイド 日本の野鳥 高野伸二著 2015年6月1日 増補改訂初版第1刷発行 公財)日本野鳥の会
  • 決定版日本の野鳥650 真木広造 大西敏一 五百澤日丸 (株)平凡社
  • フィールド図鑑日本の野鳥 水谷高英 叶内拓哉 文一総合出版

注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。

(2020-07-22掲載)

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