波多野邦彦
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第85回 Eastern Marsh Harrier <チュウヒ>
1998年3月 チュウヒ国内型雄幼鳥
車窓すぐ脇の地上に降り、長時間にわたり羽繕いや伸びなどを繰り返しているところをスケッチした。至近距離で観察すると複雑な色彩をしていてたいへん美しい。顔がフクロウ類のように平面的で耳も大きく(羽毛に隠れて見えない)、アシ原低空をゆっくりと飛びながら視覚と聴覚による狩りをするのに適している。羽衣の色彩についてチュウヒは個体変異が多い。この個体は虹彩がまだ暗赤褐色をしており、中央尾羽は灰色地に暗色の横帯、上尾筒は小さな褐色斑のある淡バフ色など、羽衣の色彩パターンからも国内型チュウヒ雄幼鳥と思われた。
大分県中津市・今津干拓 Field Noteから
チュウヒは日本国内では本州中部から北海道にかけて繁殖し、冬鳥として本州以南に飛来。海岸線付近にある干拓地や牧草地、アシ原上空を翼をV字に保ちゆったりとした羽ばたきで飛翔し、ネズミやカエル、鳥類などを捕食する。全長は雄48cm、雌58cmで大きなものはハシブトガラス程度。翼が長く胴は細目で全体的にはややスマートな印象を受ける。顔はフクロウ類に似て扁平でワシタカ類の中でも特異な顔つきをしている。
チュウヒには国内型、大陸型と呼ばれる二つのタイプがある。国内型は日本国内で繁殖し、冬季暖地に移動するもの。大陸型は中国やロシアで繁殖し、日本には冬鳥として渡って来るものだ。羽衣の特徴としては、国内型は全体的に褐色味が強い傾向にあり、大陸型雄は灰色と黒色のたいへん美しい羽衣をしている。
大分県中津市・今津干拓 Field Noteから
チュウヒの羽衣は様々な色彩をしていて、年齢や雌雄の同定が難しい。おおざっぱにいうと基本的に雄成鳥は雌と比較してからだが小さく、翼や尾の上面に灰色の部分がある。腰の部分が淡色の場合が多い。体下面は淡色傾向。雌成鳥はからだが大きく、頭が小さめに見えることが多い。体色は褐色味が強い個体が多い。成鳥の虹彩は基本的に明るい黄色で褐色の場合もある。幼鳥は雌雄共に暗褐色の体色で頭・胸・翼前縁が淡いクリーム色をしている。虹彩の色は暗褐色。
1996年11月3日チュウヒ国内型雄成鳥
北九州市小倉南区曽根 FIELD NOTEから
■チュウヒ国内型雄成鳥
1996年冬に越冬した個体。白っぽい体色に背羽や雨覆いの褐色模様、初列風切り上面先端の黒い部分や黒い小横斑(帯)があり、たいへん美しい雄成鳥だった。翼下面はほぼ白色。腰は白色。他にも大陸型雄個体やヨーロッパチュウヒ幼鳥に似た羽衣の幼鳥などが越冬した年もあり、数多くのチュウヒ類を楽しむことができた。北九州市小倉南区曽根干潟周辺には2000年代初頭まで複数羽のチュウヒやハイイロチュウヒ、オオタカ、チョウゲンボウ、ハヤブサ、コミミズク等が毎年越冬していたが、新空港へのアクセスに伴う道路開発等が進むにつれて塒となる雑草地やアシ原が消失し、個体数が次第に減少していった。
■終わりに
■参考文献
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(2021-08-11掲載)
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